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【実りある連勝】明治安田生命J1 第22節 サガン鳥栖-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

前節は開始15分で2点を追う苦しい展開となったが、最後はアディショナルタイムのゴールで横浜FCに逆転勝ちを果たし、連敗を止めた鹿島アントラーズ。再び連勝街道を歩むべく、中3日でアウェイ3連戦の初戦に臨む。

今節対戦するのは15位サガン鳥栖。活動休止もあって9月の初めから15連戦をこなす厳しい日程となっている。今節はその12試合目。直近の3試合は連敗を喫しており、前節は終了間際の失点で浦和レッズに敗れている。そこから中3日での、ホームゲーム連戦だ。

なお、両者は第9節で対戦。その時は後半に鹿島が和泉竜司の移籍後初ゴールで先制、さらにエヴェラウドが加点して2-0で今季初の完封勝利を挙げ、沖悠哉のプロデビュー戦に花を添える結果となった。

前回対戦時のレビューはこちら

スタメン

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鹿島は前節から4人変更。センターバックに町田浩樹、ボランチに永木亮太、2列目に荒木遼太郎が起用され、前線でエヴェラウドと組むのは14試合ぶりのスタメンとなる白崎凌兵だ。また、ベンチには染野唯月が復帰。特別指定選手の常本佳吾も初のベンチ入りを果たした。

鳥栖は前節から5人変更。センターバックにパク・ジョンスを起用し、前節センターバックを務めていた松岡大起がボランチに入り、原川力とコンビを組む。。内田裕斗は前節ボランチでプレーしていたが、今節は本職の左サイドバックへ。2列目は本田風智と古巣対戦となる金森健志のコンビ。前線で石井快征と組むのは17試合ぶりの先発となるチアゴ・アウベスだ。

ゴリゴリ2トップが生んだ先制点

前線のメンバーを入れ替えた鹿島だったが、前節の劇的勝利の勢いそのままに序盤から強度の高いプレーを披露。積極的に前に出ていく。鳥栖の前線がそれほど積極的にプレスを仕掛けてこなかったのも手伝って、立ち上がりは鹿島がボール保持で押し込む→奪われたら即時奪回でさらに押し込む、という良い時の鹿島が見せるプレーが連続して見られていた。

先制点はその良い流れから生まれたものだった。12分、相手陣内でスローインを得ると、素早く展開して左サイドから永木がクロス。これにエヴェラウドが潰れ、そのこぼれ球を押し込んだのは白崎。久々のスタメンのチャンスに白崎が見事結果で応えて、鹿島は幸先よく先制に成功した。

前節の途中出場でのプレー同様、この試合でも白崎は攻守両面でプレーが途切れず、チームの潤滑油となっていた。また、この試合ではエヴェラウドと白崎が前線のペアとなっていたが、このペアのメリットはフィジカルで押し込めること。エヴェラウドはもちろん、白崎も土居聖真や遠藤康らに比べて高さがあり、キープ力も持っている。なので、シンプルに彼らに預けてもボールを収めてくれるし、クロスの期待値も上がる。そうした彼らの強みを活かして、今節の鹿島は繋ぎにこだわるというよりは、シンプルにロングボールを使って彼らを走らせて押し込んでいくというプレーが多くなっていた。

鳥栖の組み立てと鹿島の素早い対応

一方、先制を許した鳥栖。劣勢の時間を耐えながら、徐々にペースを取り戻そうと振る舞い始める。今季の鳥栖がこだわりを見せるのはボール保持。ということでボール保持の局面では最終ラインから丁寧に組み立てて、打開を狙っていく。

鳥栖の組み立ての形は少々変則的で、センターバックに加え左サイドバックの内田が降りることによって3枚で鹿島の2トップに対して数的優位を形成する。カギとなるのはその降りてくる内田だ。彼をボールの供給点に置くことで、正確なキック精度を活かしてチャンスを作り出すことが鳥栖の思惑だった。中央のスペースは鹿島が埋めているために、狙いは大外のスペース。特に逆サイドには攻撃参加が得意でサイドバックながら今季3ゴールを奪っている森下龍矢と個で仕掛けられる金森がいる。鹿島を内田のいる左サイドにおびき寄せておいて、内田から一気に逆サイドに展開して1対1の状況を作り出す。立ち上がりから鳥栖はそうしたプレーを見せていた。

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だが、鹿島の修正も速かった。内田に自由にボールを持たせてはいけない、となれば即座に2列目の荒木がポジションを上げ、内田に対するプレッシャーを強めていく。これで数的優位を得られなくなり、内田も自由を得られなくなったことで、鳥栖は徐々に逆サイドへの展開を減らしていった。鹿島の素早い判断により、鳥栖の攻め手を一つ潰したことで、試合展開はより鹿島に傾いていくことになる。

変化を続ける鳥栖

完全に主導権を握る鹿島だったが、中々点差を広げることが出来ないまま時間が経過していく。そんな状況を尻目に鳥栖は再び反撃の糸口を探っていくのだった。

鹿島から主導権を奪うには、ボールを握って、かつ鹿島のプレッシングを剥がして前進させていくことが一番の近道!と考えた鳥栖。そのために鳥栖が考えた策は立ち位置を変えて、あの手この手の方法で組み立てを行っていくというものだった。立ち上がりは内田を降ろした形を取っていたが、次第にキーパーの高丘陽平を組み込む形、ボランチの原川や松岡が降りる形、と目まぐるしく形を変えていくことで、鳥栖は鹿島の対応が間に合う前にボールを前進させてしまおうとしたのだ。

こうして鳥栖は徐々にボールを前進させて、シュートチャンスに繋がるシーンが増えていく。惜しむらくは攻め方が前線の選手の特長に合っていたとは言い難いことだろう。石井のスピードを活かした裏抜けはほとんどなく、クロスも多かったが中で待つチアゴ・アウベスは受け手よりも出し手の方が活きる選手。そのチアゴ・アウベスにシュートチャンスも何度かあったが、シュートを放ったのはほとんどが利き足でない右足。得意のパンチ力ある左足を繰り出すシーンはごくわずかに限定されてしまっていた。

鹿島としては、鳥栖が形を変えてくることでボールを前進させられてしまうのは仕方がないにしても、鳥栖が形をどんどん変えることで必然的に守備時のリスクを背負っているのだから、そこを突いてカウンターを仕掛けて仕留めたかったところだが、中々追加点を奪えなかったことが試合を難しくしてしまった大きな要因だろう。

耐えて、トドメ

1点リードで折り返した鹿島だったが、後半に入ると前線のプレス強度が落ちてきたことで、一層鳥栖に押し込まれるようになっていく。なんとか追加点を奪うことで試合の流れをもう一度引き寄せたかったところだが、今節はエヴェラウドが不発。迎えたシュートチャンスをことごとく決めることが出来ず、点差をどうしても広げることが出来ずにいた。

それでも守備陣は冷静だった。集中を切らすことなく鳥栖の攻撃を確実にはね返していく。ピンチを迎えても、今節は沖が的確な判断でストップ。前節はクロスをキャッチしようとしてこぼしてしまうなど、このところやや判断ミスもみられた沖だったが、今節のパフォーマンスは素晴らしく安定したものだった。

74分~

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強度の落ちてきた選手たちを見て、ベンチが本格的に動いたのは74分だった。3枚の交代枠を切り、レオ・シルバ、松村優太、上田綺世を投入。三竿健斗を最終ラインに下げる5バックを採用し、三竿は鳥栖のチーム得点王林大地をマンマーク。相手ストライカーに仕事をさせず、前線の強度を増すことで、逃げ切りを図りつつもカウンターでトドメを刺しに行くという狙いが見えた交代だった。

しかし、迎えた決定機を上田は決めることが出来ず。結局、1点差のまま逃げ切らなければならないかという雰囲気が立ち込めてきた86分のことだった。鹿島はコーナーキックを得ると、そのこぼれ球を拾った松村が左サイドからクロス。これを攻め残っていた犬飼智也がヘッドで合わせて、待望の追加点をゲット。脈絡なく追加点を得た鹿島が試合を決定づけたのだった。

結局、試合はこのまま2-0で終了。今季3度目の完封勝利を果たした鹿島は連勝達成。順位も暫定ながら6位にまで上げた。

まとめ

もっと楽に勝てた試合、と言われればその通りだろう。押し込んだ時間帯、何度もカウンターから迎えたチャンス、このどこかで点差を広げることが出来ていれば、最小点差のまま守り続けるというヒヤヒヤした思いは味わう必要はなかった。

ただ、守備(もっと言えば撤退守備)に不安を抱えていたチームがなんだかんだゼロで守り切れたというのは今後を考えれば大きなプラスになるポイントだろう。相手のクオリティに助けられた部分も否めないが、こうした成功体験を積み重ねていけば、今後緊迫した展開で割り切って守り抜くという手段を自信をもって選べるようにもなるはず。チームとしての戦い方の選択肢を増やしていくことは、勝ち方のレパートリーを増やしていくことにも繋がっていくはずだ。

メンバーを入れ替えながらも、プレスや組み立てといった今季チームが軸にしている部分で機能性がそれほど落ちなかったのもプラス材料のはず。ここからアウェイ3連戦、中2日の連続と厳しい日程が続くが、まずは今節で幸先の良いスタートを切ったと言える試合だった。

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