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【完勝】明治安田生命J1 第13節 鹿島アントラーズ-FC東京 レビュー

戦前

前節は横浜FCに3-0で完勝した鹿島アントラーズ。これでリーグ戦は5試合負けなしと上り調子。水曜日のルヴァンカップを挟み、中3日で今節のホームゲームを迎える。

鹿島が迎え撃つのはFC東京。このところは4連敗中と調子を落としており、連敗中の4試合で10失点と守備に課題を抱えている。ただ、水曜日のルヴァンカップでは守備を整備してヴィッセル神戸相手に無失点。鹿島と同じく中3日で今節に臨む。

スタメン

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鹿島は前節から1人変更。松村優太が今季リーグ戦2度目の先発起用となった。また、ベンチには上田綺世が復帰している。

FC東京は前節から4人変更。センターバックは森重真人とジョアン・オマリ、ボランチは青木拓矢とアルトゥール・シルバのコンビがそれぞれ起用され、右サイドバックには大卒ルーキーの蓮川壮大、右サイドハーフには三田啓貴が入った。

守備でリズムを作る

連敗中で戦い方を再整備する必要に迫られていたFC東京。彼らが選んだのは2トップの質的優位をシンプルかつ最大限に活かすこと。永井謙佑とディエゴ・オリヴェイラにロングボールを供給して、彼らのパワーやスピードで相手を押し込もうとする意図が今節のFC東京からは強く感じられた。

ロングボールが多くなったため、必然的に鹿島のセンターバック陣は肉弾戦を求められることになったが、今節はこのバトルで犬飼智也と町田浩樹が終始主導権を取り続けることが出来たことが、結果に大きく影響した。2年前の味スタでの対戦ではこの2トップに蹂躙された犬飼と町田だったが、今節はその影もなく相手攻撃陣の前に立ちはだかり続けた。

さらに追加するなら、ここにレオ・シルバと三竿健斗のボランチコンビも効いていた。センターバックが競りにいった後のセカンドボールの争いで、彼らがことごとく競り勝ってボールを拾い続けていたからだ。こうして、守備で相手の狙いを阻むことに成功した鹿島は試合のリズムを掴んでいった。

ボール保持と即時奪回で押し込む

試合の主導権を引き寄せつつある鹿島はボール保持から相手を押し込んでいく。FC東京は攻撃にパワーを注いでもらうためか、2トップにそこまで守備のタスクを課していなかった。そのため、組み立てであまり苦労する様子は見られず、鹿島は数的優位を作りながらボールを前進させていった。

鹿島のボール保持は非常に再現性を持って行われていた。まず数的優位を作ってボールを前進させ、サイドに付ける。4-4-2でブロックを形成して守るFC東京がサイドに対応に出ていくところで、鹿島は中央のボランチに戻す。プレッシャーのない状態でボールを受けたボランチは、陣形の広がったFC東京の守備ブロックの合間に飛び出してくる鹿島のアタッカーたちに縦パスを付ける。FC東京守備陣が鹿島のアタッカーたちにプレッシャーを掛けられずズルズルと下がるしかない状況を作り出したところで、再びサイドに展開して速いクロスからシュートチャンスを作り出していく。13分頃からの鹿島はこうしたシーンを何度も作り出すことが出来ていた。

また、今節の鹿島は守備の連動性もかなり良かった。相手がボールを持てば積極的にプレスを掛け、ボールを奪われれば即時奪回に動く。この意識がチームとして徹底されていたのだ。おそらく、相手の2トップに簡単にボールを供給させたくないという狙いが今節の連動性を生んでいたのだと思うのだが、ここまで個々の判断が尊重されていたのか寄せの強度などにバラツキのあった鹿島の守備がここまで統一性を持って行えたことは、今節はもちろん今後に向けても大きな収穫である。

再現性を持ってボールを運び、奪われればすぐに取り返すを徹底することで、相手を押し込んでいく鹿島。ペースを握ってからは一方的な展開となった。プレッシャーが掛かっていない状態でレオ・シルバや三竿健斗は伸び伸びと縦パスを入れることが出来るし、守備ブロックの合間に顔を出す白崎凌兵、土居聖真、荒木遼太郎の動き出しを相手は捕まえることができないし、サイドにはスピードを持ってボールを運べる松村や常本佳吾がいる。ほぼほぼハーフコートゲームとなった展開の中で、ゴールが生まれるのは時間の問題となっていた。

22分、3本連続で続いたコーナーキックから鹿島は試合を動かす。左サイドから荒木の蹴ったボールにドンピシャで合わせたのは町田。荒木のキック精度の高さはもちろん、味方のスクリーンを上手く利用してマーカーを完全に剥がした町田のゴール前への入り方も見事な得点だった。

45分には追加点。左サイドで土居と白崎が粘ってボールを繋ぐと、永戸勝也から逆サイドの松村に展開。松村は相手の寄せが甘いのを見逃さずミドルをネットに突き刺した。松村はこれがリーグ戦初ゴール。右サイドは大外を常本がカバー出来ているために、松村があのハーフスペースでボールを受けることが出来たのが、ゴールに繋がった。

システムを変えても変わらなかったこと

2点ビハインドで折り返したFC東京はハーフタイムに3枚代え。中村拓海、安部柊斗、リーグ戦初出場となるブルーノ・ウヴィニを投入して、システムを3バックに変更してきた。

後半開始時

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システム変更によってFC東京の攻撃はサイドが起点となった。ウイングバックが高い位置を保つことで鹿島のサイドハーフをピン留めしながら、3バックが荒木と土居に対して数的優位を作ることでボールを運んでいく。右サイドの中村拓はスピード、左サイドの小川諒也は高さがあり、それぞれ質的優位も持っている。彼らの力で相手を押し込み、インサイドのアルトゥール・シルバと安部の推進力も活かして、相手ゴールに迫ろうというのがFC東京の狙いだった。

この狙い自体はまずまず機能していたが、連続性を欠いたために主導権を掴むまでには至らなかった。連続性を欠いた原因に挙げられるのが鹿島のボール保持を制限できなかったこと。鹿島がボールを奪った後のFC東京はボールホルダーへの寄せに甘さがあり、また中盤を5枚にしたことで中央でのプレッシャーを強めていくはずが、逆サイドのハーフスペースに展開された時に鹿島の選手がフリーでボールを受けられたため、そこから攻撃を展開されてしまっていた。

後半も前半ほどの勢いはなくなったものの、相手に主導権を渡すことはなかった鹿島。余裕をもって試合を運んでいくと、87分にダメ押し。途中出場の小泉慶がポストプレーで起点となって押し込んだ流れから、右サイドで同じく途中出場の遠藤康のクロスにこれまた途中出場の上田綺世が合わせて、勝負を決定づける3点目を手にした。上田は交代直後のファーストタッチでゴールを奪い、遠藤は寄せの甘さを見逃さず正確な左足のクロスでアシストを記録した。

結局、試合はこのまま終了。3-0で完勝した鹿島は今季初のリーグ戦連勝を達成した。

まとめ

相手の狙いを封じ、自分たちのペースで試合を進めることが出来た。完勝と言っていい試合だろう。ボール保持では相手の対応のマズさもあったが、自分たちが狙っている形からチャンスを作り出すことが出来ていたし、何より守備で統一性を持って相手を追い込めたのが大きい。今節のような守備が出来れば、チームとしての安定感はより増していくはずだ。

ただ、正念場なのはここからである。次節は中2日で2位名古屋グランパス、さらにそこから中2日で11試合負けなしの横浜F・マリノス、と強豪との連戦が待っている。こうしたチームに対しても高パフォーマンスを発揮して、勝点を掴み取ることが出来るか。掴みつつある勢いを落とさない戦いぶりが求められる。

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