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【ライプツィヒ観察記】ブンデスリーガ 第31節 ホッフェンハイム-RBライプツィヒ レビュー

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戦前

前節、アディショナルタイムの失点で最下位SCパーダーボルン07相手にドローに終わったRBライプツィヒ。他の上位勢も勝点を伸ばせなかったため、3位をキープできたのはラッキーだった。今節はフライデーナイトのアウェイゲームだ。

今節ライプツィヒが対戦するのは、7位TSG1899ホッフェンハイム。EL出場権獲得を目指すホッフェンハイムはこの残り4試合の段階で、監督交代を断行。今節はU-19で監督を務めていたマーセル・ラップが暫定監督を指揮を執る。

また、ホッフェンハイムはライプツィヒ監督のユリアン・ナーゲルスマンが昨季まで指揮を執っていたチームであり、ナーゲルスマンにとっては古巣対戦となる。さらに、ホッフェンハイムはライプツィヒが所属するレッドブルグループの礎を築いたラルフ・ラングニックもかつて監督を務めていたクラブでもあるため、チームの方針などもラングニックの考えが色濃く反映されており、ライプツィヒと似通った部分も少なくない

スタメン

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ライプツィヒは前節から3人変更。ウパメカノが出場停止のセンターバックにハルステンベルク、そして中盤にライマーとザビッツアーがスタメン復帰している。

一方のホッフェンハイム。ナーゲルスマンが試合前のコメントでも述べていた通り、監督交代によって相手にとっては未知数な部分が多い状態で試合に臨んでいる。システムも前節の4バックから、今節は3バックを採用している。

流れを変えたVAR

監督交代で何をしてくるか読めないホッフェンハイム。そのホッフェンハイムが仕掛けてきたのは奇襲だった。立ち上がりから前へ前へと攻め込み、プレッシングも超積極的。これにライプツィヒがバタついたのもあって、試合開始から主導権はホッフェンハイムにあった。

そうした中で6分、セットプレーのこぼれ球を拾ったホッフェンハイムはツバーのスルーパスにダブールが抜け出すと、これをGKのグラーチが倒してしまい判定はPKに。勢いのままホッフェンハイムが先制の大チャンスを手にした、かに見えた

しかし、ここでVARの介入が入る。VARによる検証の結果、このスルーパスの際にホッフェンハイムの選手の手に当たってスルーパスが通ったということで、判定が覆りPKは取り消しに。ホッフェンハイムにとってはアンラッキーだし、ライプツィヒにとっては命拾いする結果となった。そして、このVARが試合展開を大きく変えることになる

電光石火の2ゴール

VAR介入で数分のインターバルが発生する形になったピッチ上。このインターバルをライプツィヒは活かした。システムを変えてきたのだった。

6分~

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変えたのは中盤の形だ。フラットな4枚から、3枚のボランチ+トップ下にダニ・オルモという形にチェンジしてきた。

その直後である。ライプツィヒが初めてボールを握っての攻撃のターン。右サイドを上がってきたムキエレにボールが渡ると、そこからハーフスペースに位置取るダニ・オルモへ。ダニ・オルモはDFをかわすと、トーキックでゴールネットを揺らし、ライプツィヒは最初の攻撃で先制に成功したのだった。

先制点を奪って勢いに乗るライプツィヒ。その2分後には左サイドのアンヘリーニョからのロングボールをファーサイドのザビッツアーが頭で折り返すと、またもダニ・オルモがダイレクトで合わせて追加点。劣勢から一転、ライプツィヒが電光石火で2点リードに試合展開を変えてしまった。

ライプツィヒのシステム変更の意図

2点を奪ったライプツィヒ。立ち上がりの劣勢はどこへやら。2点を早いタイミングで奪えたのもそうだが、システム変更でペースを取り戻し確実に試合を進めていった。

システム変更で整備されたのはまず守備だ。ホッフェンハイムは3バックで組み立てを行う。そこにライプツィヒは2トップ+トップ下のダニ・オルモをぶつけることで数的同数を維持したのだった。

しかし、前を3人にした分、中盤をケアする人数は1人減ってしまう。元々4人で横幅68mをケアするのも難しい上に、それが3人とならば尚更だ。そこで中盤の3人に課せられた使命は、意地でも中央突破は許さないこと。徹底的に中央を締めて、相手の攻撃をサイドからに限定する。前線の3人もその意図は共有していて、プレスを掛けてボールを奪いに行くというよりも、中央へのパスコースを塞いで、ボールの配給先をサイドに限定することに注力しているようだった。

また、攻撃でもライプツィヒは策を持っていた。攻撃時、大外のレーンに入るのがサイドバックなのはいつものことだが、そこから一つ中央に移ったハーフスペースのレーンに入るのは、左サイドに2トップの一角のヴェルナー、右サイドには3ボランチの一角のザビッツアー、と左右非対称の形を組んでいたのだった。

中央にはキープ力のあるポストプレイヤーのシックと狭い局面でも打開できるダニ・オルモが受け手として位置取り、左サイドにはスピードがあり、サイドに流れてのプレーを得意とするヴェルナー、右サイドには超人的な運動量を持ち、ゴールやアシストにも絡めるザビッツアーと、個々の持ち味を活かすためにライプツィヒはこの左右非対称の形を選んでいたのだった。また、カンプルとライマーが中央でバランスを取っていることで、カウンター対策にもなっていた。

ビルドアップを助けたグラーチとカンプル

ライプツィヒの攻撃面でもう一つ大きかったのは組み立ての場面だ。ホッフェンハイムは2点ビハインドとなってからも、前線からの積極的なプレスを敢行。ライプツィヒのセンターバック2枚に対し、前線を2枚に変えて数を合わせて、高い位置でボールを奪おうと狙っていた。

センターバックがハメられる、サイドに簡単に渡しては相手の思うつぼ。この状況でサポートに入ったのが、ゴールキーパーのグラーチとアンカーのカンプルだった。

まず、グラーチである。元々、足元でのプレーを苦にせず、組み立てにも積極的に加わるタイプのキーパーだが、この試合ではその持ち味が特に活きていた。簡単にロングボールで蹴っ飛ばすのではなく、フリーの味方に的確に縦パスを入れて、一気に速い攻撃に展開できそうな時はミドルパスをサイドに供給していく。あわやPK献上という場面を作ってしまっていたが、組み立ての部分では致命的なミスはほぼなかった

そして、もう一人の功労者カンプル。本来であればホッフェンハイムの前線2枚にセンターバックをケアされ、中盤のボランチ3枚もホッフェンハイムの3枚にピン留めされかねない状況だったのだが、カンプルは自身のポジションの動かし方が的確だった。中央からハーフスペースに開き、パスコースを作り出し、パスを貰えばすぐさま中央に入れるか、前に走り出すザビッツアーかヴェルナーを活かす、この状況に応じた判断にミスがなくしかもそのスピードも速かった。こうして、ライプツィヒのセンターバックには相手のプレスが掛かっているにも関わらず、常にキーパーとカンプル、そしてサイドと3つのパスコースが用意されていた

サイドしかないなら、サイドから

2点ビハインドで前半を折り返したホッフェンハイム。ハーフタイム2枚代えを行い、システムも3-1-4-2に変更した。

後半開始時

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この交代とシステム変更の意図は2つだ。一つは、攻撃時と守備時の布陣を同じにすることで、攻守の際でポジション変更の動きを減らし、そこで必然的に生まれるギャップを相手に使われないようにするため。もう一つが、左サイドに入ったスコフの存在だ。

前半、ビハインドになってからのホッフェンハイムの攻撃はほとんどサイドからに限定されていた。それはひとえにライプツィヒの守備が上手くいっていたということでもあるのだが。それをホッフェンハイムは逆手に取る形を取ったのだ。サイドから攻められないのなら、サイドから崩してやればいいのだと。

そこでスコフの出番である。突破力があり、正確なクロスが供給できる彼にボールを集めて、そこからのクロス爆撃でホッフェンハイムはチャンスを作り出そうとしたのだ。2トップ2インサイドで前線の枚数=ターゲットも増やして、クロスの受け手の方も整備した。実際、後半この形からホッフェンハイムは何度かチャンスを作り出した。

しかし、ライプツィヒは冷静だった。そのサイドからの攻撃を強化するというのも予想の範疇だった。多少押し込まれても失点は許さず、逆にカウンターでトドメを刺す機会を作り出す。完全な劣勢になることもなく、拮抗した展開で時計を進め、選手交代で守備陣を厚くしていき、結局シャットアウトで試合終了。2-0でライプツィヒの勝利に終わった。

まとめ

冬に加入したダニ・オルモが2ゴールと結果を残し、ウパメカノ不在で本職センターバックの選手がゼロのDFラインで完封した。ライプツィヒにとっては、勝点3以外にも実りのある勝利と言えるだろう。

一つ気になるのは、中断明けからここまで6試合を戦い、アウェイは全勝なものの、ホームでの3試合は全て引き分けに終わっているという点だ。つまるところ、ホームで勝っていないのだ。そして、この後はミッドウィークにデュッセルドルフと、週末には2位ドルトムントとの上位決戦が、そのホームゲームで待ち受けている。ライプツィヒにとっては正念場の連戦となりそうだ。

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