鹿島アントラーズ2022シーズン前半戦選手別レビュー(後編)
前編はこちらから
MF
No.6 三竿健斗
今季は樋口の加入と駒不足もあって、メインはセンターバックに。流石にゴリゴリの相手をぶつけられると厳しいものの、対人でそこまでメッタメタにされることもなく、守備でも攻撃でも水準以上のプレーは見せてくれている。プレー判断に結構怪しさはあるし、かなりボールに食い付きやすいのはマイナスだが、今のセンターバック陣の中では一番大崩れしないというのは大きいところ。ただ、このままセンターバックで使い続けるとなった時には、対人の部分でマズそうだし、そもそも被カウンター時やプレスを剥がされた時の守備組織に問題のある現状だと、なんとかパワー系のセンターバックに台頭してもらって、三竿をボランチで使えるようになるのが、チームとしては健全な気がする。
No.7 ファン・アラーノ
監督が変わっても、アラーノはアラーノということをまざまざと感じさせてくれる前半戦だった。強度の高さは相変わらずで二度追い三度追いも厭わないし、攻守の切り替えの速さもヴァイラー好みのレベル。ただ、あまりにもパスミス、シュートミスが多いのと、構えた時の守備の寄せ方は結構甘いので、そこで剥がされて失点に繋がってしまうことを考えると、現状ではプラスよりマイナスの方が大きくなってしまっている。一回、レギュラーに定着したものの、直近の試合では出場時間が減っているのもそのあたりが原因のはず。良いところも悪いところもハッキリしているが、ヴァイラーとしては強度を保つためには使いたいはずなので、夏場では重宝されそうだけども。
No.8 土居聖真
新キャプテンは苦しいシーズンを送っている。開幕当初はレギュラーでスタートしたが、ヴァイラーが来るとベンチが定位置に。今まではバランスを取ることで、他の癖の強い攻撃陣の個々を引き立たせていたが、強度を求め縦に速い攻撃を好むヴァイラーの中では、その役割がそこまで求められていないのが大きい。言ってしまえば、ヴァイラーの求める強度の水準に達していないのだ。2列目のサイドであまり使われないのも、その辺りが影響している。こうなってしまったら、土居がすべきなのはヴァイラーの求める水準に達すること。持ち前の器用さで順応してほしいところだ。
No.10 荒木遼太郎
土居以上に苦しいシーズンを送っている新10番。元々、鈴木優磨が加入したことで、一番良さの活きる中央のポジションがなくなったことに加え、荒木もまたヴァイラーの求める強度の水準に達していないこともあって、ベンチが定位置に。さらには、そこからヘルニアで離脱と、4月末からは稼働すら出来ていない。帰ってきたところでポジションが用意されているわけではないのがさらに厳しいが、ヴァイラーの基準は強度さえ満たしていれば使ってくれるので、そこにアジャストしていくしかない。荒木の存在が攻撃に変化をつけられるので、復活に期待。
No.11 和泉竜司
ヴァイラー体制になって、一気に評価の高まった1人。強度が高く、それでいて状況判断も良く、どこでプレーしても器用にこなせるし、自分で前線に出ていくことも持ち運ぶことも出来るという、ヴァイラーとしてはこういうプレーをしてほしいんだよ!みたいなプレーをしてくれているのがその理由だろう。キーパー以外では全ポジションをこなしているのは超すごい。これでスコアが伸びてくれば言うことなしだろうが、それは流石に求めすぎか。とにかくケガに気をつけてもらって、あとはなんとか和泉のクローンがあと3人は欲しいところ。
No.14 樋口雄太
加入初年度でここまでリーグ戦全試合スタメン、というのがその存在価値を物語っている。ポジショニングやプレー判断が良く、またあらゆるところに顔を出せる運動量やヴァイラー好みの強度の高さなど、まさに現代的なダイナモのセンターハーフである。プレースキックをはじめとしてキックの精度も高く、多くのチャンスを作り出しているのもプラスポイント。守備で後手に回った時に荒っぽいタックルでカードもらってくる以外は文句なしだろう。問題は今の守備陣で樋口をアンカーに置いていると、失点減らなそうだなということ。樋口をトップ下に置くか、守備を強固にするかで解決したい。
No.17 アルトゥール・カイキ
出遅れたが、あっという間にレギュラーの座を確保。今では欠かせない存在になっている。強度の高さもそうだが、ミスの少なさ、あとはやはり何と言ってもJリーグの2列目では桁違いのフィジカルの強さが大きい。空中戦でも地上戦でも相手のサイドバックに大抵勝ってくれるので、2トップ以外にも雑に蹴っても起点が作りやすいというのは、重宝される大きな理由だろう。技術も地味ながら高く、2トップに次いでのゴールとアシスト数がそれを物語っている。今季はコンディションも良さそうなので、このまま行ってほしいところ。
No.21 ディエゴ・ピトゥカ
今季は副キャプテンに任命され、開幕からコンディションも良さそうで良い感じに進んでいたのだが、例のペットボトル蹴っ飛ばし事件で1ヶ月棒に振ることに。まあ、前からちょいちょいメンタルコントロールに難ありそうと思っていたが、よりにもよって派手にやってくれたなと…。まあその後は折檻されたのか知らんが、大分落ち着いたなと。最近、チームの成績が下降気味なので、若干苛立ってきてるけど。プレー面に関しては、ゲームモデルが定まってきたのと、樋口や鈴木優磨の加入でピトゥカがそこまでどうこうしなくても攻撃が回るようになってきたので、良い意味で目立たなくなってきた。あと、ピトゥカの公務員ミドルはマジで期待しないほうがいい。今季そんなに打ってないけど。
No.24 小川優介
2年目の今季は天皇杯で途中出場、公式戦デビューを飾った。ボランチが本職であるが、2列目で使われたりサイドバックで使われたりとまだまだ試合に絡むには色々と足りないものが多そうな感じがある。クラハで練習観ていても、相手がいないパス回しでテンポが上がるとミスって、岩政大先生に雷落とされていたので、まあその辺なんだろうなと。試合に出たいなら、ボールを大事にするチームにレンタルするのもアリか。
No.27 松村優太
スピードスターは開幕直後はケガで出遅れたものの、ヴァイラー合流から間も無くで復帰すると、そこからコンスタントに出場機会を掴めるように。年々、フィジカル能力がアップして戦えるようになり、強度が増してきたことと、あとは大外レーンでプレーさせたらスピードでぶっちぎれるし、足元も上手いので中でプレーさせてもいける、というのが理由としては大きいだろう。ただ、そのいい感じの時にケガで離脱してしまい、未だに復帰できていないのがもったいないし、チームとしても痛いところ。強度高い2列目はなんぼあってもいい状態なので、早期復帰が待たれる。
No.30 名古新太郎
復帰した今季はリハビリからのスタートだったが、状態が戻らずに再手術。復帰はシーズン中盤から終盤にかけてになる頃となってしまった。ヴァイラーのサッカーには合いそうなだけに、プレーぶりを見てみたいところではある。
No.33 仲間隼斗
新加入した強度の鬼。とにかく走ってくれるし、戦ってくれるしで、その辺は完全にヴァイラー好み。あとは試合の状況に応じて、自身の振る舞いを変えられ、中でも外でも低い位置でも高い位置でも的確なプレーが出来るので、チームとしては大いに助かっている。ケガで離脱している期間が長かったのはチームにとってマイナスだったが、暑くなる夏前に戻ってきたのは朗報。フル稼働を期待したい。
No.34 舩橋佑
リーグ戦では出場機会を得られていないが、カップ戦ではスタメンのチャンスを得るあたり、ヴァイラーから一定の評価は得ているのだろう。パスセンスの良さや、多少の寄せなら自力で剥がしてしまうこともあって、ゲームメイクの能力は十分に水準以上。勘所も良く、寄せのタイミングも悪くない。ただ、強度や連続性という部分やプレー判断の良さはレギュラー組より劣ってしまっているため、出番が増えないのはその辺りかと。樋口、和泉、ピトゥカとライバルの壁は厚いが、精進を続けてほしい。
No.35 中村亮太朗
ヴァイラー合流後から一気に立場が苦しくなってしまった。パスセンスがあって、ボールを落ち着かせることも出来るし、自ら前線に出ていくこともできるが、課題は守備面。スピードがあるわけではないため、どうしても寄せる場面やカバーリングで遅れてしまうことがあり、そこでファウルを取られる場面が少なくないため、そうした部分でヴァイラーが起用に二の足を踏んでいる部分はある。ヴァイラーが戦い方の幅を広げないと、スポット的な起用に留まってしまう感じは否めないが、もうちょっと判断のスピードを上げるなりして踏ん張りたい。
FW
No.9 エヴェラウド
開幕直後はコンディション的にイマイチだなと思っていたら、そこから離脱して一時帰国。やはり戻ってこないかなと思ったら、直近で復帰。まだ本調子ではなさそうだが、ゴールも奪うなど復調を印象づけるプレーを見せている。あまり器用なタイプではないが、走ることを嫌がるわけではないし、何より前を向いた時のパワーとハマった時の破壊力はJでもトップクラス。鈴木優磨と上田綺世の2枚看板が負傷した今となっては、この男の存在が何より大きい。コンディションの更なる上昇とゴールラッシュが上位戦線維持には不可欠だ。
No.18 上田綺世
リーグ戦の半分で早くも2桁ゴールを達成した、現在得点ランキングトップのストライカー。右足、左足、頭とゴールパターンは多彩だし、何よりどうやったらそれ止められるの?みたいな理不尽ゴールを連発している。鈴木優磨に影響されたか、明らかに守備の貢献度も増してきたし、正直Jリーグにいていい存在ではなくなってきているのは事実。負傷は心配であるが、何とか今季最後までだけでも残ってもらえれば…。
No.19 染野唯月
3年目の今季はここまでケガすることもなく、コンスタントにメンバー入りを続けている。強度の面で物足りなさがあるのか、そこまで出場時間が伸びていないが、ヴァイラーも徐々に認めつつあるようで、最近は早い時間で出番が与えられるようになっている。器用なので何でも出来るのはいいことなのだが、今のFWに求められているのはゴールを奪ってくること。なので、自分をフィニッシャーに置くような動き出しやポジショニングにもっとこだわりたい。それが出来れば、もっとゴールは入る。
No.40 鈴木優磨
文句なしで前半戦のチームMVP。40番にふさわしく、チームに1人でよくここまでポジティブな空気をもたらしてくれた。以前はフィニッシャーとポストプレイヤーに特化していたが、復帰した今は攻撃における何でも屋に。決して運動量豊富なタイプではないが、ピッチを幅広く使い、ポストプレーからチャンスメイク、フィニッシュと臨機応変に動いてくれている。またこの男がいるからプレッシングがハマりやすくなっているのも大きい。ただ、逆に言うと存在が大きすぎるが故に、かかっている負担が半端ないので、終盤のガス欠が否めないのも事実。チーム全体の強度を上げるなり、何とか負荷を上手く減らして、効率よくプレーさせたいところだ。
監督
レネ・ヴァイラー
合流が遅れたが、ここまでチームを上位戦線に居続けさせている手腕は評価すべきだろう。最初は様子見だったが、徐々に強度の高い縦に速いサッカーを全面に打ち出し、それをあっという間にチームに浸透させた。チームのスカッドとこれまでの経緯を判断して、それが一番手っ取り早く勝てる方法だと判断したのだろう。だが、基準の強度に満たしていないメンバーが少なくない、強度が落ちた時の戦い方など課題も露わになってきているので、試されるのはここからだろう。今のやり方を突き詰めるのか、柔軟に戦っていくのか、アプローチは様々考えられるがここ数年ロクに勝てていないチームをこのまま上位戦線に留まらせられることが出来れば、一気に先は明るくなる。
岩政大樹
8年ぶりに古巣に戻ってきた今季は、初のプロクラブでのコーチながらいきなり監督代行を任されるなど波乱のスタートに。それでもオーソドックスな戦い方をベースに現有戦力を最大限に活かした戦い方で、チームをまずまずな状態で波に乗せ、連勝中の状態でヴァイラーにバトンタッチという最高の形で自身の仕事を全うした。過去の負債で今の鹿島にはプレー原則が怪しい選手が少なくないので、その辺りの改善にも期待。
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遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください