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【ライプツィヒ観察記】ブンデスリーガ 第30節 RBライプツィヒ-パーダーボルン レビュー

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前節はケルンに4-2と快勝したRBライプツィヒ。ブンデスリーガも残り5試合。最低目標の欧州CL出場権確保には負けられない戦いが続く。

そんなライプツィヒが今節ホームに迎えたのは、最下位に沈むSCパーダーボルン07。中断明けから3分1敗と勝ちがなく、前節はドルトムントに1-6で大敗を喫している。残留に向けては崖っぷちのパーダーボルンにとっても、今節は勝点を稼ぎたい一戦だ。

スタメン

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ライプツィヒは前節から2人変更。ボランチが揃って入れ替わり、カンプルとアダムスのコンビに。前節スタメンのライマーはベンチスタート、ザビッツアーは欠場となっている。

中央を使わせないライプツィヒ

ライプツィヒが4-4-2、パーダーボルンが4-2-3-1とほぼ同じ布陣で相まみえることになった両者。お互いに相手にボール保持はさせない!という方針らしく、立ち上がりから前線で積極的にプレスを掛けていった。

ただ、そのプレスの掛け方とプレスへの対応は両チームで異なっていた。ライプツィヒはプレスのスイッチをパーダーボルンのサイドバックに設定。2人のセンターバックとゴールキーパーも組み立てに参加する最後尾はシックが1人で対応。ここでのシックの役目はパスコースをサイドに限定すること。一方、2トップでコンビを組むヴェルナーはボランチのケアに回り、彼らへのパスコースを塞ぐタスクが与えられていた。

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センターバックの所で数的優位を作ることが出来ているパーダーボルンだったが、自陣深くでボールを失うことは避けたいのか、リスクを背負って中央からボールを前進させることはしない。サイドに配球すると当然ライプツィヒのプレスのスイッチが入るが、そこでパーダーボルンは無理せずサイドの裏へのロングボールを選択していた。

この選択はリスクを避ける他にも、ポジショニングが危ういムキエレとアンヘリーニョを狙い撃ちにしたかったというのもあるのかもしれない。ただ、ライプツィヒにとっては、一番危険な中央からボールを運ばれることを避けられた時点で、狙い通りだったとも言えるだろう。パーダーボルンの前半の攻め筋はこの裏へのボールから、前線のアタッカーが競り勝ってくれること前提という個の勝負に託されていた。

中央を使うライプツィヒ

ライプツィヒの組み立てに対し、パーダーボルンは数的同数を維持した上でのプレスを敢行。ライプツィヒのセンターバックコンビに対しても、前線の2枚でボールを奪いに行った。

ただ、パーダーホルンと違ってロングボールをあっさり選択することのないライプツィヒ。サイドバックがムキエレとアンヘリーニョという個で勝負できる攻撃的な選手ということもあって、彼らを活かすべく大外のスペースを空けて、普段以上に中央に集まった2列目の2人とヴェルナーにいかにしてボールを預けて打開してもらうか。ここにライプツィヒの組み立ては注力していた。

ライプツィヒの解決策はボランチを使うことだ。ボランチが最終ライン付近まで下がった時、プレスを掛けていくはずのパーダーボルンのボランチは付いていかない。ここで深追いしてしまうと、中央にいるエンクンク、ヴェルナー、ダニ・オルモにボールが渡った時、中盤は数的不利で対応しなければならず、それは狭いスペースでも打開できる彼らの力を考えれば極めて危険なことだと認識していたからだ。2列目のサポートを借りようにも、彼らはライプツィヒのサイドバックでピン留めされている。だからこそ、プレスの機能性を捨ててでも、ライプツィヒのボランチを捕まえ続けることが出来なかったのだ。

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ボランチのサポートを得て、パーダーボルンの前線2枚に対して数的優位を作り出したライプツィヒ。数的優位なら恐れることはない!と言わんばかりに、ボールを持ったボランチもセンターバックもどんどんボールを前進させていき、中央からパーダーボルンの守備網を崩しにかかる。この少しでも優位な状況ならリスクを恐れずにボールを自ら持ち運ぶライプツィヒのバックラインの選手たちの姿勢は、ナーゲルスマンの指導の賜物だろう。

ライプツィヒの先制点はこの形から生まれている。ゴールキックからアダムスがサリーでセンターバックの間に降りて数的優位を確保すると、そこからボールを預かったセンターバックのウパメカノがボールを持ち運び、左サイドのアンヘリーニョへ。アンヘリーニョから中央のエンクンクにパスが通ると、ハーフスペースから裏へ抜け出したヴェルナーにスルーパスが渡り、最後は折り返しをシックが沈めてゴール。このゴールキックからの一連の流れで、ライプツィヒは相手に一度もボールに触らせずにシュートまで至っている。まさに狙い通りのゴールだろう。

有利が消し飛んだ退場劇

欲しかった先制点を手に入れ、ここからは盤石な試合運びが期待できたライプツィヒだが、ここで大誤算が発生する。前半終了間際に、ウパメカノがこの試合2枚目のイエローカードで退場。守備の柱を欠き、10人で残り45分以上を戦うことを強いられるようになったのである。

この試合、ウパメカノは1枚目のイエローカードを自らのロングボールの処理ミスを相手に奪われかけたところでファウルしてもらい、2枚目はファウルの後にボールを蹴って遅延行為を取られるという、あまりにももったいないイエローカードの貰い方だった。

ハーフタイムでナーゲルスマンは前線のシックに代えて、センターバックにハルステンベルクを投入。システムも5-3-1に変更した。

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ライプツィヒの専守防衛策

前半はライプツィヒが徐々にボール保持の時間を増やしていったが、後半は完全にパーダーボルンの試合になった。

ライプツィヒの第一目標はとにかく守り抜くこと。前線はヴェルナー1枚で当然プレスは掛けられず、中盤も横幅68mを3人でケアしているので当然埋めきれずに、中盤でもどんどん縦パスを通されてしまう。

ただ、ここまでは想定内。サイドになんとか追い出し、クロスは3人のセンターバックで撥ね返す。これを徹底させたのだった。

企みを阻止するパーダーボルン

それでも、一方的に押し込まれるだけでは1点リードのまま45分耐えることは出来ない。そう考えたライプツィヒは、ゴールキックなどマイボールの機会を得ると前半も使った中盤の選手たちを下ろす策を用いることで、ボール保持を狙った。

しかし、パーダーボルンがそれを許してはくれなかった。パーダーボルンは前線から死なばもろとものプレスで、ライプツィヒのボール保持を封じにかかったのだ。普段なら体力面や最終ラインでそれなりのリスクを背負うことになるが、残り45分なら体力も持たせられるし、相手は10人で前線はヴェルナー1枚しかいない。そして、何より残留争いを考えればここで勝点0で終わる訳にはいかない。こうして様々な状況から後押しを得たパーダーホルンは、ライプツィヒのボール保持を封じ、自らは数的有利から安定してボール保持出来る状況を手に入れ、ライプツィヒ陣内に攻め入った。

実らなかった「戦術ヴェルナー」

こうして、後半はパーダーボルンペースとなったのだが、決定機の数は意外にもライプツィヒの方が多かった

その理由はヴェルナーの存在だ。直近の試合では点取り屋だけでなくパスの引き出し役など攻撃の全般をタスクとして与えられていたエースだったが、数的不利で1人前線に残される展開で、その真の持ち味を見せていく。

ヴェルナーの最大の武器は圧倒的なスピードとトップスピードに到達するまでの加速力だ。ボールを奪って、裏へのロングボール目掛けてよーいドンというシチュエーションは、彼のその武器が最も活きる形だろう。前がかりになったパーダーボルンの最終ラインとの走り合いにことごとく勝って、カウンターのチャンスを作り出していった。

しかし、これで得たカウンターのチャンスをことごとく決められなかったのが響いてしまった。守備的な選手を増やし、1点差でもなんとか逃げ切ろうとしていたライプツィヒだったが、後半アディショナルタイムにコーナーキックの流れからこぼれ球を押し込まれて、痛恨の失点。同点に追いつかれてしまい、再度攻めに出るが迎えたビッグチャンスも途中出場のハイダラがシュートミスして逸すると、そのままタイムアップとなった。

まとめ

終了間際の失点で、1-1とホームで最下位相手に痛恨のドローに終わってしまったライプツィヒ。唯一の収穫は他の上位勢も勝点を伸ばせず、3位をキープできたことだろう。

痛手だったのはやはりウパメカノの退場である。それまでほぼ狙い通りに試合を進めていただけに尚更だ。ウパメカノはその身体能力の高さゆえに、プレーエリアも広く、負担も大きいというエクスキューズもあるが、守備の柱という立場を考えればイエローの貰い方はあまりに軽率だった。

また、数的不利でもトドメを刺すチャンスが何度も訪れていただけに、それを決められなかったヴェルナーにも責任はあるだろう。攻撃はほとんど彼1人に託されていた中でも決定機を作り出してしまう力は流石と言うべきだが、エースならあそこで試合を決めるまでが仕事とも言える。

エースと守備の柱の誤算によって、勝点を取りこぼした形になってしまったライプツィヒ。次節はウパメカノが出場停止。ここ数節、スタメンで本職のセンターバックはウパメカノしかおらず、サイドバックのクロスターマンやハルステンベルクらを起用してやりくりしていたが、次節はこの緊急事態にどう対処するか。ナーゲルスマンの手腕が問われる。

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