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【相手の嫌がることをやる】明治安田生命J1 第26節 清水エスパルス-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

鹿島アントラーズ

・現在6位

・前節はヴィッセル神戸に0-1で敗戦

・神戸戦から中3日で迎えるアウェイ連戦

清水エスパルス

・現在14位

・前節は鈴木唯人のゴールで追いつき、湘南ベルマーレと1-1のドロー

・湘南戦から中3日で迎える

スタメン

画像1

鹿島は前節から6人変更

・犬飼智也が出場停止のセンターバックに林尚輝、右サイドバックに復帰後リーグ戦初スタメンとなる安西幸輝を起用

・ボランチに三竿健斗、2列目に遠藤康とリーグ戦初スタメンのアルトゥール・カイキ、1トップには上田綺世が入る

清水は前節から1人変更

・ボランチに加入後リーグ戦初スタメンとなるホナウドを起用

・新加入の藤本憲明が初のベンチ入り

守備から生まれた先制点

今節、鹿島はまず守備から自分たちのリズムを作り出すことに成功する。その中でも大きかったのはプレッシング。今節も鹿島はラインを高く保ち、コンパクトな陣形から徐々に相手にプレッシャーを掛けていったが、きっかけとなったのは3分にディエゴ・ピトゥカがヴァウドに対してプレスに行ったシーン。ここでシュートは枠外だったものの、高い位置でのボール奪取に成功してフィニッシュに結びつけた鹿島は、これ以降プレッシングのターゲットをヴァウドに定めていく。最初にピトゥカが行ったところはおそらくピトゥカ個人の判断だろうが、ここでのヴァウドが清水の中でプレー判断がやや遅くなっているという発見をチーム全体で共有した形となった。

この意識が活きたのが18分の先制点。鹿島は高い位置からプレッシャーを掛けながらヴァウドのパスコースを限定させると、町田浩樹がチアゴ・サンタナからインターセプト。これをピトゥカが拾ってパスを上田に預けると、上田が強烈なミドルをネットに突き刺した。

町田のファウルなしで奪う技術、ピトゥカの素早い切り替えとプレー判断、上田のシュート力、と個々の質の高さが目立つゴールではあるが、形としては鹿島の狙っていた通りのものだろう。

清水の守備を壊す荒木遼太郎の振る舞い

守備でリズムを作り出した鹿島だが、今節は攻撃、特に組み立ての部分においても清水の嫌がることが出来ていた。

清水の2トップに対して、鹿島は三竿が最終ラインに降りてセンターバックと合わせて3枚で組み立てを行う。この数的優位を活かして鹿島はボールを前進させていくわけだが、今節良かったのは清水の2トップの裏の中央のスペースを効果的に使えたこと。ここで荒木遼太郎やピトゥカがボールを受けられたことで、清水は中々思うように攻撃を制限させることが出来ずにいた。

清水としてみれば、組み立てでボールを運ばれること自体はOKだとしても、運ばせるならサイドからに限定させたかったはず。しかし、2トップの裏のスペースに登場してボールを受ける荒木がそれをさせてはくれない。荒木を止めるにはボランチが出ていって潰すほかないのだが、そうしてしまうと最も危険な中央のバイタルエリアを空けてしまうことになりかねない。荒木の存在が清水のボランチにリスク覚悟で潰しにいくのか、危険なスペースは埋められるものの荒木に中央で自由にやらせてしまうことを許すのか、という厳しい二択を突き付けることになっていたのだ。

また、清水としてみればプレッシングの圧を強めても、空中戦の強いヴァウドを避けて井林章とのバトルで起点を作ってくる上田にロングボールを蹴られるし、サイドに限定しても安西のドリブルで運ばれてしまう、というどれを選んでも自分たちが優位に立ちづらい状況に常に立たされていたのは、中々に難しいものだったと言える。

44分の追加点は、鹿島が2トップの裏のスペースから上手く相手を攻略したところから生まれたものだ。サンタナの背後で三竿がボールを持つと、荒木に縦パス。荒木は相手ボランチの間でボールを受けてターンし、カイキにパス。カイキのリターンはホナウドにカットされてしまうも、すぐさま守備に切り替えた荒木のプレスがホナウドのボールロストを誘い、最後はそれを拾ったカイキが落ち着いて決めきった。

ゴールを決めたのはカイキだが、得点を生み出したのは荒木の上手さであると言える。相手の嫌がるところでボールを引き出し、そこからロストせずにすぐさま前を向ける技術。さらに、ボールを失っても奪い返しに行く切り替えの速さ。清水はこの試合の前半、全くと言っていいほど荒木を捕まえることが出来ず、荒木に自由にプレーさせすぎてしまっていた。

清水の狙いを封じた町田浩樹

前半を2点ビハインドで折り返すと、後半になって清水がボールを持つ時間が増えていき、鹿島はボール保持にこだわりを見せずにカウンター狙いへとシフトしていく。

清水がこの試合狙っていたのは2トップをシンプルに活かすダイレクトな展開。左サイドで組み立てながら鹿島のプレスを剥がして、フリーで待っている右サイドへと展開。そこから手数を掛けずにクロスを入れて、2トップに勝負させる。右サイドには大外で右サイドバックの原輝騎がフリーで張っており、左サイドハーフの鈴木唯人は2トップの近くに位置取り、ゴール前で勝負できる状況になっている。清水の攻撃は整理されたものであり、53分に藤本がピッチに入るとその狙いはより鮮明になっていった。

だが、そうした清水の狙いはことごとく鹿島のセンターバック陣によってはね返され続けた。特に素晴らしかったのが町田。先制点のシーンでのインターセプトもそうだったが、この試合マッチアップしたサンタナ、途中出場の指宿洋史に対人で負け知らず。鹿島は町田が抜かれない限り、失点することはないというほどの守備の安定感だった。

ミスを逃さずに勝負を決めた鹿島

清水がダイレクト志向の攻撃を展開したこともあり、試合は徐々にオープンな展開になり、鹿島もカウンターやその後の素早い守備への切り替えからパンチを打っていき、押し込まれる状況を避けていく。

そんな中、81分に清水が得たコーナーキック。清水はショートコーナーを選択するが、ここで意図が合わずにボールロスト。これを途中出場の土居聖真が拾うとカウンター発動。土居がボールを運んで右サイドに流れた同じく途中出場のエヴェラウドにスルーパスを送ると、エヴェラウドのクロスを遠藤が折り返し、最後はこれまた途中出場の和泉竜司が決めて、勝負を決定づける3点目。鹿島は相手のミスに付け込んだ形となった。

4点目も言ってしまえば、相手のミスから生まれたゴールだ。88分、沖悠哉のゴールキックにエヴェラウドが競り勝つと、これを拾った。遠藤康が美しいミドルシュートをネットに突き刺し、ダメ押しとなった。

このシーンでの清水のミスは、そもそもエヴェラウドとの空中戦を強いられたのが決して長身とは言えない河井陽介だったこと。また、河井に競らせるにしても、そのセカンドボールを拾う人員がおらず、最終ラインがズルズルと下がってしまったことにある。たしかに、遠藤のゴールはゴラッソだったが、清水としてみれば防ぐ手立てが全くなかったゴールではなく、あの位置で遠藤にフリーでシュートを打たせる前に出来ることがあったゴールである。

結局、試合はこれでタイムアップ。鹿島は4-0のゴールラッシュかつ完封。文字通りの快勝となった。

まとめ

鹿島にとっては、久々に相手のやりたいことを防ぎ、自分たちのやりたいことが体現できた、満足度の高い試合となった。個々が活きたことはもちろん、攻守において狙っていたプレーが体現でき、それが見事にハマったことが大きいだろう。

試行錯誤が続いているとはいえ、攻守において明確な狙いを持って試合を進める清水を相手にこうした試合が出来た意味合いは小さくない。大事なのはこれを継続させること。次節は2位の横浜F・マリノスが相手となる。連戦もあって厳しい試合となりそうだが、今節掴んだいい流れを継続させたい。

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