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【Simple is Best】明治安田生命J1 第27節 横浜F・マリノス-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

鹿島アントラーズ

・現在5位

・前節は清水エスパルスに4-0で快勝

・前節から中2日で迎える

横浜F・マリノス

・現在2位

・前節はサガン鳥栖に4-0で快勝

・リーグ戦4連勝中、13試合負けなし

・前節から中2日で迎える

スタメン

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鹿島は前節から4人変更

・センターバックに出場停止明けの犬飼智也、右サイドバックに常本佳吾が入る

・2列目の両サイドは土居聖真と和泉竜司を起用

横浜FMは前節から4人変更

・両サイドバックは小池龍太と和田拓也を起用

・ボランチに天野純、右ウイングに仲川輝人が入る

攻め筋を貫くマリノスと二段構えで守る鹿島

横浜FMの破壊力ある攻撃に対して、鹿島はどう守るのか。ここが試合前の注目ポイントの一つだった。前からボールを奪いにいくのか、後ろでブロックを作って構えるのか。鹿島が選んだのは前者だった。

立ち上がりから鹿島は相手のボール保持に対して積極的にプレッシャーを掛けていく。相手がボランチを降ろして上田綺世と荒木遼太郎に対して3枚で数的優位を作ってくるなら、2列目から和泉や土居が押し上がって数的不利を解消。あくまで横浜FMに対して、自由にボール保持はさせないという意思を見せていく。

だが、横浜FMが鹿島のそうしたプレッシャーに対して慌てる様子は全くなかった。キーパーやボランチ、左サイドバックの和田をセンターバックと絡ませながら確実に数的優位を確保したり、配置で優位性を持って鹿島のプレッシングを剥がしてボールを前進させていく。横浜FMが狙っていたのは両ウイングにスペースと時間を確保した状態でボールを届けること。右の仲川、左の前田大然とスピードと突破力、さらには得点力も高い彼らが最も得意なスピードを持ったまま仕掛けられる状況に持っていくことが、彼らの良さを活かしてゴールに迫ることが出来ることに繋がってくるからだ。

横浜FMがにくいのは個々の特性に合わせて攻め筋を変化させているところだ。右サイドではサイドバックの小池が高い位置を取って、仲川と連係しながら切り込んでいくが、左サイドでは和田はそれほど高い位置を取らず、むしろ前田大然のスピードを活かした単騎特攻に任せつつあった。また、ボランチも喜田拓也は低い位置で組み立てに関わることが多いが、相方の天野は高い位置で崩しに関わることが多く、左サイドに流れることも少なくない。普段はフリーマンのごとく動き回るトップ下のマルコス・ジュニオールは、今節は天野が高い位置を取ること、両ウイングが単独でも突破できる力を持っていることもあったのか、比較的中央に留まっていることが多かった。

プレスを仕掛けても横浜FMに剥がされて、ボールを運ばれてしまう鹿島。だが、このことは鹿島にとって織り込み済みのように見えた。中央から運ばれるならともかく、サイドから運ばれる分には許容していたのだろう。ウイングにはサイドバックがしっかりと付き、1対1でやらせない。クロスは中央でセンターバックがはね返す。マンツーマンに近い形で守っていた鹿島は、各々が目の前の相手にやられないという言ってしまえば当たり前のことではあるのだが、それを徹底することで守り切ろうとしていた。

単純な話だが、今節はこのマンツーマンの守備でやられることがなかったのが全てである。前田を完封した常本のように、守備陣がそれぞれマッチアップした相手に後手に回ることなく、シャットアウトし続けたことが守備の安定に繋がっていたし、逆にここで少しでも後れを取ればあっさりと失点していたことも十分に考えられた。

上田綺世が作り出した攻め筋を活かす鹿島

一方、鹿島の攻撃面である。横浜FMはボールを失えば即時奪回に動いてくるし、鹿島の組み立てにはプレスを仕掛けてボールを奪おうと狙ってくる。これに対して、今節の鹿島は前節のように荒木やディエゴ・ピトゥカを中心としたボール保持にこだわりを見せることはなく、詰まる前に積極的にロングボールを蹴っ飛ばしていた。

ロングボールの蹴った先にいるのは上田。上田はエアバトルをどんどん受け入れて起点を作ろうとしていく。今節の鹿島にとって大きかったのはここのエアバトルで上田が先手を取り続けたこと。適当に蹴っても上田が何とかしてくれる。この上田へのロングボールによる押し込みと、カウンターの二つが今節の鹿島にとっての攻め筋だった。

15分の先制点はこの上田へのロングボールが相手のエラーを誘う格好となった。沖悠哉のロングボールに上田と横浜FMで競りにいったのは畠中槙之輔と和田だったが、どちらも触れずにボールは裏へと抜けて土居の元へ。この土居のクロスに中央に飛び込んでヘッドで合わせたのは荒木。横浜FMは競り合いのエラーで結果的にセンターバック2枚が引っ張り出され、荒木は完全にフリーになっていた。

30分の追加点はもう一つの攻め筋であったカウンターで決めたものだ。鹿島は横浜FMのサイド攻撃をカットすると、ボールを受けたピトゥカのドリブルからロングカウンターが発動。そのままピトゥカがドリブルで運び、最後はピトゥカのスルーパスに抜け出した上田がキーパーとの1対1を冷静に沈めた。

このシーンはピトゥカの個の力がゴールの要因の8割方を占めていると言っていいだろう。自陣深くから50メートルは運んだドリブルは味方にとっても予想外だったのだろう、上田は最初右サイドに流れている動き出しをしたが、これはおそらくゴールを狙うというよりも起点を作って他の味方が押し上げる時間を作り出そうとしたもの。ただ、ピトゥカが予想以上に運んでそのままフィニッシュまで完結できそうだったので、動き直して裏抜けを狙いスルーパスを引き出している。

結局、今節の鹿島はシュート4本に終わっており、そのうち2本をゴールに結びつけた。攻め筋を見出し、少ないながらも作り出したチャンスを決めきった結果が、高いシュート決定率に繋がっている。

攻め続けるマリノス、耐える鹿島

2点リードで前半を折り返した鹿島。後半になっても守勢の時間が長いのは変わらず。むしろプレスの強度が落ちたことで、後半はある程度押し込まれることを承知で、ブロックを作って構えて守る時間が多くなっていった。

対して、引いた鹿島をどう崩していくかという局面になった横浜FM。引き続き、サイドからの崩しで打開を試みるが、中々鹿島ゴールをこじ開けることは出来ない。今節の横浜FMは中央からの崩しをそこまで使ってこなかったが、これは下手にボールロストして鹿島のカウンターを食らうことを警戒していたからかもしれない。

58分には3トップを水沼宏太、杉本健勇、エウベルに入れ替え、ゴールを狙う。右サイドは水沼のクロスを主に、左サイドはエウベルと和田の連係で崩しを狙うといったように、ここでも横浜FMは選手の特性に合わせて攻め筋を変化させていく。そんな中で交代直後の59分にエウベルのパスから水沼のシュートまで至ったシーンはビッグチャンスだったが、沖のファインセーブでゴールならず。アディショナルタイムのエウベルのヘディングもそうだったが、今節の鹿島はサイドの奥深くに切り込まれるより、ペナルティエリア手前から大外へのアーリー気味のクロスの方が対応できていなかっただけに、横浜FMはこの形をもう少し作ることが出来れば、という部分もあったかもしれない。

そんな横浜FMの攻勢に対し、スタミナの消耗が目立つ鹿島は徐々に対応が追いつかないシーンが増えていき、瀬戸際での対応を強いられていく。それでも今節は守備陣が粘りを見せて、最後の最後でやらせず踏ん張る。その一方で、交代策を使いながら前線の選手を入れ替え、常に攻め手を繰り出すように仕向け、一方的な展開を防いでいき時計の針を進めていった。

そして、試合は2-0のままタイムアップ。2位横浜FMにシーズンダブルを達成した鹿島は、これでリーグ戦連勝となった。

まとめ

押し込まれる時間が長かったとはいえ、見事にゲームプランを完遂し、勝点3を掴み取った。素晴らしい試合と言えるだろう。

今節大きかったのはどこをやられるのはOKで、どこは絶対に止めなければいけない、どこを使って攻めていくのか。このあたりが明確だったことと、それを最後までやり切れたことだろう。中2日で準備期間が短く、連戦という厳しい状況の中で、用意してきたことをしっかりと活かしきった。レベルの高い相手に対してやらなければいけないことを怠らなかった結果である。

この密度の試合を毎節続けるのは労力としてあまりに大変だし、今節の戦い方がスタンダードとしてリーグ戦の日常に活かされるかというと、また違う部分になってくる。それでも大事な試合で勝ち切れたことは、チームに大きな活力を生むはずだ。ここから連戦は続き、ルヴァンカップの準々決勝となる。タイトルを懸けたノックアウトステージでも、こうしたゲームプランをやり切って、勝利を手繰り寄せたい。

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