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鹿島のセンターバック補強が上手くいってない理由を考えてみた

鹿島のセンターバック補強が上手くいっていない。

ことのきっかけは、チャルシッチの契約解除だった。町田へ移籍した昌子の穴を埋めるべく獲得したクロアチア人センターバックがメディカルチェックで引っかかってしまい、無念の契約解除。クラブはもう一度センターバックを探す必要に迫られた。

だが、その穴埋めが今日までないということは、この部分で上手くいっていないという事実は拭い切れないだろう。もちろん、クラブとして何もしていないわけではない。獲得が噂される選手も複数人いたし、獲得寸前という報道が出たこともある。ただ、実際には誰も来ていない。来週末で移籍ウインドーが一度閉まることを考えれば、それまでに話をまとめられないとなると、それ以降は夏まで無所属選手、もしくは大学生やユース所属選手に選択肢が限られることになる。

ここまでの結果だけを踏まえると、強化部何してんねん!案件になるし、実際その部分もあるのだが、それだけでは話に実りがないので、今回はなぜこういう事態になっているのかを考えていこうと思う。


移籍交渉が上手くいかない理由

予算を使えない

まず、ここまで移籍交渉が上手くいっていないシンプルな理由として挙げられるのが、クラブにお金がないことだ。お金がないだけだと意味が伝わらないので、もっと正確に言うと今年度使える予算がないということである。

鹿島は昨年度の決算で約6億7,000万円の赤字を計上している。ここで問題になるのが、クラブライセンス制度だ。この制度ではJクラブに対して、債務超過になることと、3期連続で赤字決算を出すことを認めていない。鹿島の場合、純資産に比較的余裕があるのですぐに債務超過に陥る可能性は低いが、問題は赤字決算の方だ。すでにコロナ禍の特例期間は終わっており、3期連続で赤字を出すとJ2に強制降格となってしまうし、鹿島は今年度決算で赤字を出すとそれにリーチがかかってしまうことになる。

鹿島としては、この状況だけは何としても避けなければならない。確かに、今年度赤字を出してしまっても、次年度で黒字さえ出せばセーフなのだが、そうなるとコロナ禍などの自分たちではどうにもならない現象で収入が大きく減少してしまうリスクや急な出費に対応することが極めて難しくなってしまう。なにより、黒字マストとなった場合、まず真っ先に削られるのは間違いなく人件費だ。選手の給料や移籍金にも影響が出るし、そこに影響が出るということはチームの強化レベルにも影響が出る。それを避けるためにも、今季の鹿島は確実に黒字決算を出し、赤字リーチの状態に陥らないようにする必要があるのだ。

だからこそ、格安で獲ってきたチャルシッチ以外のパレジやチャヴリッチという助っ人はレンタルで獲得することになったのだろう。鹿島の決算は3月末に行われる。なので、3月末までに移籍が決まるとその移籍金や契約金は今年度決算に含まれる。ウインドーが開くまでに移籍をまとめたいが、そうなると決算に影響が出る。そのジレンマを鹿島は抱えている。

足元を見られている

鹿島のセンターバックが足りていないという状況は、サポーターの我々ですら気づいていることなのだから、当然他クラブも周知の事実である。そうなると、他クラブはこう思うだろう。「鹿島は喉から出るほどセンターバックが欲しいのだから、多少高値でも買ってくれるだろう」と。需要と供給のことを考えれば当然なのだが、この現象は上記で触れたように予算をあまり使えない鹿島にとっては、大変頭の痛い話になっている。

また、春秋制のシーズンを戦うクラブにとっても、秋春制のシーズンを戦うクラブにとっても、この3月末という時期は無理して選手を売る時期ではない、というのもある。春秋制のクラブはまだシーズン始まったばかりで、これから試合数が増えていく状況なので、現在出場機会を掴めていない選手にもチャンスが訪れる可能性があるし、構想外の選手においても定価以上で売れないなら夏のマーケットで売ればいい、という結論に落ち着く。また、秋春制のクラブにとっては今がちょうどシーズン終盤戦に位置しており、この時期に主力は売れるわけがないし、構想外の選手の人員整理もシーズン終了後にやればいい、となるのは自然なことである。

要するに、予算がないので、定価以上で買う気がなく、期限付きなどの条件をつけて値切ろうとしている鹿島に対して、他クラブは今わざわざ自分たちが損をしてまで売る必要性を感じていないのだ。選手側は出場機会を得たいので移籍したいと思うケースがあるかもしれないが、クラブとしてはならば必要な移籍金を払ってね、払えないならノーですよ、ということなのだ。

鹿島が人を選んでいる

3つ目はこの部分だ。鹿島としては、人は確かに足りていない、ただ人数合わせで誰でもいいから来てほしいわけではない、来るなら即戦力が欲しいと思っているということである。

この部分は、ポポヴィッチのマネジメントも影響しているだろう。ポポヴィッチは練習中は選手全員とコミュニケーションを取るように心がけているように見えるものの、主力組とサブ組との線引きはハッキリと引かれており、また選手起用に関しても一定水準に達していない選手は使わない、という方針は試合や練習を通じても見えてくる部分だ。舩橋佑という本職の選手を差し置いても知念慶がボランチ起用されたり、サブに津久井佳祐のような本職センターバックを入れずに、いざなったら佐野海舟のコンバートで解決しようとしてるのは、それを象徴していると言える。認めていない本職よりは、認めている選手をコンバートする方が優先順位が高いのだ。

こうした現象を考えると、誰でもいいと思ってセンターバックを連れてきても、ポポヴィッチは試合では中々使わず、コンバートで凌ごうとするだろう。それでは獲得した意味は?、となってしまう。だからこそ、クラブとしては現状足りていないタイプかつ即戦力のセンターバックを探しているのだろうし、そうした選手たちはどうしても現状だとパイが限られている。上記2つの理由も加えると尚更。だから苦戦している、という部分はあるはずだ。

補強は必要なのか?

ここまで補強で上手くいっていないとなると、いっそのこと補強しなくてもいいのでは?と思う部分も少なからず出てきてしまう。実際、植田直通と関川郁万が健在のうちは問題ないし、津久井も町田戦で一定のメドは立った。佐野のコンバートを含めて考えても、夏まではこのままでも凌そうな気はしなくもない。

だが、個人的にはやはりセンターバックは補強すべきだと思っている。理由としては主力組とそれ以外の選手の差が大きすぎるし、控え組にチャンスを与えるという投資をしようという意志をクラブからあまり感じないからだ。

たしかに、植田と関川がいるうちは比較的高いクオリティは保っていられる。ただ、津久井はポテンシャルを感じるものの、2人に比べるとまだまだ及ばない。事実、関川のいない試合でしかチャンスをもらっていないし、2人が揃っている試合ではベンチ入りもできていないという実情がある。佐野のコンバートにしても、三竿のように元々こなしていたプレイヤーに比べると不慣れさやサイズの物足りなさは否めないし、何より佐野をセンターバックに回すと、柴崎岳をケガで欠く現状ではボランチで計算できる人材にも困ってくる部分がある。全体的な選手層が厚くない今の鹿島にとって、ラージグループを増やす努力は補強においてもすべき部分がある。

また、鹿島としてどこまで津久井に投資していくのか、というのは気になる部分でもある。というのは、鹿島というクラブは前からそうなのだが、時間をかけても投資すべき選手と、そうでない選手との扱いの差は結構明確に存在すると思っている。極端な話、ドラフト1位の選手には長い時間チャンスを与えるが、ドラフト3位以下の選手には比べるとそこまで…、みたいな。

(この話をすると、昨季のセンターバック陣はドラフト1位の昌子、植田、関川を揃えていたので、結局誰か1人が割を食うことになっていたのは分かっていたけど、クラブとしてどうするつもりだったのかとか、地味にドラフト2位レベルの扱いだったけどかなり重要な役割をこなしてくれていた和泉や広瀬、永戸や小泉が出ていったことが響いてる部分もあるんだけどその点はどうしますか?、みたいな問題点が浮かぶのだが、話が脱線するのでここではこれ以上触れない)

そこを考えると、おそらくだが津久井を鹿島はドラフト1位の扱いでは見ていない気がするのだ。つまり、関川や植田、町田浩樹のように、多少チームの勝点を犠牲にしてでも、彼らを使うような環境にして、彼らが成長する機会を作り出すような試みは、津久井に対しては彼らほど機会としてそう多くはないだろうということである。

こういう話になると、それは失礼だろ!津久井にも投資しろ!という意見もあるかもしれないし、それはその通りだと思う。だが、今度は別の問題も浮かんでくる。それは津久井が育ってきた段階で、海外に巣立ってしまうということ。昨夏にもこの件で記事を書いたので多くは触れないが、若手選手を育てても、すぐに海外に行ってしまう。しかも、その時に投資分を移籍金として回収しきれない状態なために、育てるだけ損になってしまう。この現象が起こっている以上、鹿島が超有望な若手以外の育成に及び腰になってしまう部分は否定できないだろう。

ここまで書いてきたが、結論一番良いのはこれを書いた直後に獲得リリースが出ることだ(お願いしますよ、ホント)。まずは、移籍ウインドーが閉まる来週末までが一回リミットとなる。それまで注視していきたい。

遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください