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鹿島アントラーズにとって2020からの数シーズンにクラブの命運が懸かっている件

開幕しますね、Jリーグ。我らが鹿島アントラーズにとっては、新監督で開幕に臨むシーズンは実に7年ぶりとのこと。開幕前が不安と楽しみでいっぱいなのはいつものことですが、新監督となると余計にそれが増してきますね。

そんな新シーズンを迎えるにあたり、プレビュー的なもの、あるいは私個人の心持ち的なものを書いていきます。途中で合わないなと思ったら閉じていただいて結構です。でも、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

今までのやり方では厳しい

今までの鹿島の武器は選手個々の能力の高さを活かした柔軟性でした。様々な局面に対応できる力を持った選手を揃え、その時その時に応じて即座にチームとして適切な判断を下していく。そのうえ対人では負けずに、いざとなったら個と個の殴り合いに持ち込んで、そこで勝ってしまう。乱暴なまとめ方ですが、今まで強い時の鹿島の勝ち方は大体こんな感じでした。3連覇した時なんかは特に。

でも、そのやり方は今の鹿島では通用しません。理由はいくつかあります。まず、ケガ人がここ数年あまりにも多かったこと。高い個のレベルを持った選手がいることが大前提の武器なのに、その肝心の選手が揃わなくては意味がありません。次に、移籍の活発化があります。今までなら、高卒で入った選手が数年かけて主力になり、そこから何年も活躍してくれました。ただ今は、数年で海外へ挑戦してしまうことが当たり前になってしまいました。また、他チームの方がより必要とされていると感じればそのチームに移籍するといった、国内移籍へのハードルも大分下がってきたように感じます。頻繁に選手の入れ替えが起きれば、質を担保し続けるのは難しいことです。そして、明確なスタイルを持つチームが増えてきたことも理由の一つです。明確なスタイルを持つことへのメリットとして、再現性を持ってプレー出来るということがあります。相手の弱点を突くようなプレーなら、それをずっと続けることが出来るのです。ケガ人が増え、移籍の活発化で質が担保しづらくなり、柔軟性が落ちたチームでは、その再現性への対応が落ちた分だけ遅れることになりますし、その遅れた分だけやられ続けることになってしまうのです。

だからこそ、今季鹿島は変化することを決断したのであり、ザーゴ新監督をそのためにブラジルから呼んできたのです。他チームと同じように自分たちも明確なスタイルを持ち、選手の質に左右されにくい、安定して力を発揮できるようなチームを目指す。今季は結果もそうですが、このスタイル作りを進めることもチームの目標の一つになります。結果が出ていてもこのスタイルが出来ていないと、その先も勝ち続けることが難しいからという判断です。

そのスタイルについては以下のリンク先で述べているので、併せてごらんいただければと思います

鹿島に吹く逆風

ここまではまえがきです。ここから表題の話に移っていこうと思います。

ここ数年のJリーグは実力が拮抗し、どこが上位になっても、またどこが低迷してもおかしくないリーグになっており、そこがリーグを盛り上げている一要因でもあります。ただ、Jリーグとしてはこの流れの中で、豊富な資金を持ち、安定して優勝争いに絡むビッグクラブの台頭を望んでいます。そうしたクラブがリーグを引っ張り、ACLでも覇権を握り、CWCでは世界と互角に戦う。この一連の流れが日本サッカー全体のレベルアップに繋がると考えているからです。

昨今のJリーグの施策ではこの流れを後押しするような下地作りが進んでいます。まず外国人枠を拡大して、レベルの高い助っ人を多く起用できるようにしました。また、J1参入プレーオフがJ1側にとって有利なルールになっているのも、資金力のあるJ1クラブがJ2に落ちてしまい、ビッグクラブ化が遠ざかるのをなるべく避けたい思惑があるのでしょう。そして何と言っても、DAZNマネーによる優勝賞金の増額、理念強化配分金の創設です。理念強化配分金では、優勝チームには3年総額15億5000万円が渡されるとあり、勝ったチームはより多くの資金を得られる機会が増えることになりました。

ただ、正直に思うことを言います。このビッグクラブを生み出そうとする構想の中に、我らが鹿島は入っていないと思うのです。たしかにこれまでの実績で言えば、鹿島は国内トップのタイトル獲得数を誇ります。しかし、ホームタウンは東京から約100km離れた、茨城県の地方都市。ホームタウン5市の人口合わせても30万人にも満たないのです。ホームタウンの人口が合わせて400万人を超える横浜F・マリノス、また1300万人が住む東京都をホームタウンに持つFC東京に比べれば、差は大きなものです。クラブが通常ターゲットにするとされる半径30km圏内も含めて考えると、この差はより顕著なものになります。都市規模は収入面などでクラブの潜在的な力に比例すると言われることを考えれば、鹿島が他クラブに比べて大きなハンデを抱えていることがお分かりいただけるでしょう。Jリーグのビッグクラブ構想が是が非かはともかく、もしそうした構想があるとするならば、鹿島をそのビッグクラブの中に入れようとする人はかなり少ないのではないでしょうか。

さらに、これからの日本に待っているのは少子高齢化による人口減少です。地方創生など今の政府も色々と手は打っていますが(政策の是非についてはここで論じる気はないです)、根本的な流れに歯止めはかかっていません。この少子高齢化の影響をいの一番に受けるのは、間違いなく鹿島がホームタウンにするような地方都市です。人がいなければ、経済を回すことは難しいです。ただでさえ格差が今の時点であるのに、その差は余計に広がる可能性が高くなっているのです。

もちろん、鹿島はクラブとしてただ手をこまねいている訳ではありません。いち早くスタジアムの指定管理者に名乗りを上げ、試合日以外のスタジアムビジネスに乗り出しました。また、ホームタウンと手を組み観光資源を活かした新たな取り組み(アントラーズホームタウンDMO)や、親会社がメルカリに移ったメリットを活かして、テクノロジーの力で都市の課題を解決することを目指す取り組みも始め、アントラーズだけでなくその周辺の街も経済的な要素含めて盛り上げようとする動きを見せています。

ただ、これらのいわゆるオフザピッチの取り組みは、クラブが安定して稼ぐ柱の一つにはなり得ても、これだけで大都市クラブと肩を並べる存在になり得る要素とはならないでしょう。もちろん、差を埋めることは出来るかもしれませんが、サッカークラブである以上サッカーで稼ぐことが出来なければ、鹿島が今の地位を保つことすら難しいでしょう。

時代に抗え

では、おとなしく引き下がるしかないのでしょうか。鹿島にはそんなつもりは毛頭ありません。鹿島は今の年間売り上げ70億円からさらに増やして、将来的に100億円を超えるクラブを目指しています。そのためにどうすればいいのか。一番確実かつ手っ取り早い方法は勝つことです。勝って、DAZNマネーを手に入れて、チームとしてのブランドを上げて集客力を保ち続ける。Jリーグはビッグクラブ構想を描いていても、それに値するクラブしか勝ってはいけないなんてルールはどこにもありません。サッカーは常に11人対11人で、0-0からスタートします。そのルールの中で勝ち残り、自分たちの地位を高めてゆけば良いのです。

そのために呼ばれたのがザーゴなのです。今まで述べた通り、鹿島は勝ち続けることで今までの地位を保ち、よりその力を伸ばそうとしています。ただ、その勝ち続けるためには今までのやり方ではなく、新たに明確なスタイル作りが必要だと定義づけられたことも先程述べました。もう一度繰り返すことになりますが、そのスタイル作りに呼ばれたのがザーゴなのです。

ただ、スタイルを作ると言葉で述べるのは簡単ですが、実際はとても難しいものです。選手個々にスタイルを理解してもらい、それを実行してもらう。足りなければそのスタイルに必要な選手を揃える。そして、そのスタイルを維持し続ける。必要なことを大まかに述べるだけでも、これだけあります。これらを成し遂げるのに、どのクラブもそれなりの時間がかかっています。アンジェ・ポステコグルー監督を迎えた横浜F・マリノスや、プレミアではペップ・グアルディオラ監督が就任したマンチェスター・シティでリーグ優勝を成し遂げたのは、就任2年目のことですし、現在世界最高のクラブとも言われているリバプールはユルゲン・クロップ監督就任5年目にして今の地位に立っています。もちろん、鹿島に今季はあきらめろというつもりは更々ありません。ただ、それなりの痛みが伴うことは覚悟して欲しいということなのです。

ラストチャンス

なぜ、そこまでの痛みを伴っても取り組まなければならないのか。それは、これが鹿島に残されたラストチャンスの可能性があるからです。世界を見てもサッカーの発展の速度は著しいものがあり、新たな考え方や戦術が生み出されては、それに対抗する戦術が生み出される。この流れはどんどん速くなっており、Jリーグのクラブもその流れに次々に乗ろうとしています。昨季15年ぶりにリーグ優勝を果たした横浜F・マリノスはその流れに乗ったクラブの一つと言えるでしょう。この流れはより速まることはあっても、おそらく変わることは考えにくいでしょう。そんな中で、今までこの流れに乗っていなかったと言える鹿島は、このタイミングで流れに乗りついていくことを決断しました。今はまだ十分間に合うタイミングですが、流れの最後尾であることに変わりはありません。これ以上遅れてしまえば、置いていかれる可能性もあるのです。

また、ビッグクラブ構想について考えても、DAZNマネーが導入されて今季で4年目。まだ明らかな格差は生まれていませんが、そろそろ生まれ始めてくるころになってきました。DAZNマネーが導入されたこの3年間、鹿島はリーグタイトルを逃し続けています。今季はともかく、この流れはまだまだ続くようだと、鹿島が他クラブに水をあけられる可能性はどんどん高くなっていくでしょう。

もし、この嫌な流れが続くようだと、鹿島が今のクラブ規模を保っていくことさえ、今後難しくなるのではと思います。正直、鹿島のホームタウンの規模を考えると、今抱えているメンバーは不釣り合いなくらいに豪華です。もちろん、それは各々のこれまでの努力の結果であることに間違いはないのですが、これを保っていくのは中々大変なことです。仮に、鹿島が時代についていけないようなことがあれば、鹿島はビッグクラブに引っこ抜かれる側になり、メンバー構成が維持できなくなれば当然成績を維持することも出来なくなるでしょう。強豪という地位から、プロビンチャ(地方クラブ)の一つに成り下がってしまう可能性もある訳です。

こうした流れに抗い、勝ち続けるためにクラブは大きな体制変更を決断しました。今季はそのスタートのシーズンです。ここからの数シーズンの結果が、今後十数年のクラブの命運を握っているとも言えるでしょう。ザーゴに求められるのは痛みをなるべく短くしながら、より多くの実りをもたらすことです。それがどこまで達成できるのか、まずは今季1年間見守っていきたいと私は思います。

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