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【ライプツィヒ観察記】ブンデスリーガ 第27節 マインツ-RBライプツィヒ レビュー

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戦前

前節、フライブルク相手に引き分けに終わり、優勝争いから後退する結果となってしまったRBライプツィヒ。わずかな望みを繋ぐためにも、また上位のレバークーゼンが今節勝っているため欧州CL出場圏内死守のためにも、今節は勝点3が求められる試合だ。

そんなライプツィヒがアウェイの地で対戦するのは15位1.FSVマインツ05。残留圏内に位置するものの、降格圏と勝点差があまり離れていないため、一つでも多く勝点を積み上げて安全圏まで浮上したいところ。前節はケルンを相手に2点ビハインドから追いついてドローに持ち込んでいる。

スタメン

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マインツは3-4-2-1のシステム。ライプツィヒは前節3バックだったものの、今節は4バックに変更。センターバックのウパメカノが出場停止から復帰。また、右サイドハーフに今冬加入したダニ・オルモが入っている。

ハーフスペースを駆け上がるライプツィヒのボランチ

マインツが守備時5-4-1の形で撤退守備を敷くため、試合は序盤からライプツィヒがボールを握る展開で進むことになる。マインツの最前線は1枚のみのため、ライプツィヒのセンターバック2人にとっては必然的に数的優位となる。そのため、特に陣形を動かすことも、前の選手のサポートを受けることもなく、ボールを前進させることが出来ていた。

ライプツィヒの崩しで興味深いのはボランチの攻撃参加だ。前線でポウルセンが張ることで相手DFラインを下げさせ、ヴェルナーが下がることで繋ぎをサポートするという関係は前節と変わらないが、この日のライプツィヒは大外をサイドバックが使うエリア、ハーフスペースをボランチが使うエリア、中央を2列目がエリアとある程度定義づけがされており、実際極端に2列目の選手が中央に絞って、その外側をボランチの選手が駆け上がっていくというシーンが多々見られた。

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この目的は2列目が絞ることで、一度相手の守備陣を中央に集め、そこからハーフスペースのボランチや大外のサイドバックを使うことで、徐々に相手の守備陣を横方向に間延びさせ、そこで生まれたスペースを使って崩すというものだろう。

これはザビッツアーとカンプルの2人だからこそ成せる作戦とも言えるだろう。驚異的な運動量で幅広いエリアをカバーでき、なおかつゴール前で違いを生み出せるボランチが駆け上がるから相手にとっては脅威になるし、仮にボールを失っても運動量とボール奪取力を活かして即時奪回に移れるからこそ、カウンターでピンチを作られる可能性を削ることが出来る訳だ。ここの収支計算が成り立っていないと、もしボールを奪われた時にライプツィヒは中央にいるセンターバックだけで相手のカウンターに対処しなければならないという厳しい状況になる。実際そうした場面もこの試合でも何度か作られており、そうした場面ではセンターバックの対人の強さとプロフェッショナルファウルで潰すという暴力的な方法で解決していた。

殴りに殴るライプツィヒ

ということで、サイドからの攻撃に打開策を見出していくライプツィヒ。ゴールシーンもそのサイド攻撃からだった。

11分、右サイドのライマーにボールが渡ると、ライマーが右サイドを突破。グラウンダーのクロスにニアでコースを変えて流し込んだのは、後ろから走り込んできたヴェルナーだった。マインツとしてはライマーに突破された左サイドの守備がお粗末だったし、人数が揃っていたにも関わらず後ろから走り込んでくるヴェルナーを誰も捕まえることが出来なかった。

早い時間帯の先制点で楽になったライプツィヒは攻撃の手を緩めず、ほぼワンサイドゲームで試合を進めていく。マインツはボールを持ってもライプツィヒのハイプレスの餌食となり、あっさりボールを手放してしまっていた。右シャドーのボエチウスが下がってビルドアップの出口となるプレーはそれなりに効果的だったのだが、その後のサポートや展開に乏しく、可能性の低いロングボールに移ってしまうのが非常にもったいなかったけれども。

23分にはセットプレーの流れから試合が動く。右サイドのハーフスペースからザビッツアーがクロスを入れると、マークを外したポウルセンがフリーで合わせて追加点。1点目と同じくサイドからのクロスで奪ったゴールだった。

さらに、ライプツィヒの勢いは止まらない。中盤でザビッツアーがボールを奪ったところからショートカウンターが発動。その流れから最後はポウルセンのパスを受けたザビッツアーが決めて3点目。ライプツィヒは前半で試合をほぼ決めてしまうのだった。

殴るのをやめないライプツィヒ

後半開始時

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ハーフタイム、3点ビハインドのマインツはセンターバックのブルマを下げて、長身FWのマテタを投入。システムも4-4-2に変えて、ライプツィヒにミラーゲームを仕掛ける格好となった。

この狙いとしては2トップをライプツィヒのセンターバックと勝負させることで、チャンスを作り出したいというものだろう。マインツがボールを奪った時、ライプツィヒの即時奪回さえかわすことが出来れば、残っているのはセンターバックの2人だけ。そこに数的同数の勝負を仕掛けることで、カウンターの可能性を広げたいという思惑があったはずだ。センターバックの一角のウパメカノが前半でイエローカードを貰っていたこともそれを後押しする要因になっただろう。

ただそれでも、ライプツィヒ優位は変わらなかった。後半立ち上がりの48分、カウンターから一度攻撃は詰まったかに見えたものの、カンプルがバイタルエリアでキープし続けて、最終的には相手を剥がしてワンツーからペナルティエリア内に侵入。このカンプルのプレゼントパスをヴェルナーが流し込んで、ライプツィヒが4点目をゲット。この試合、ここまでの4点中3点はボランチの質的優位がもたらしたものという事実が、今日の彼らのパフォーマンスの素晴らしさを物語っている。

その後はボールを保持しながら、隙あらばゴールを狙おうとするライプツィヒに対して、ボールを奪えないマインツは中々自分たちのターンが巡って来ない。マインツが2トップとなったため、ライプツィヒのセンターバックと数的同数になったが、そうなるとライプツィヒはすかさずボランチの一角がセンターバックの位置まで下がって組み立てに参加することで数的優位を維持。こうして、ライプツィヒは永遠と殴り続ける姿勢を揺るがないものとしたのだった。

75分にはクイックリスタートでポウルセンのロングボールに抜け出したヴェルナーがGKとの1対1を制して、5点目。これでヴェルナーはハットトリック達成。そして、そのままスコアは動かずにタイムアップ。5-0でライプツィヒが完勝。3位に浮上して、上位陣との差も広げず、欧州CL出場圏内もガッチリキープした。

まとめ

スコアこそ5-0に終わったが、ライプツィヒが迎えた決定機はそれ以上にあったため、もっと点差がついてもおかしくない試合、ライプツィヒはそれほどまでにパーフェクトな試合内容だった。

レッドブルスタイルにボール保持という独自の色を加えるユリアン・ナーゲルスマンにとってはこの試合は一つのモデルケースとも言える試合だったはずだ。そして、これは似たスタイルを今季志向する鹿島アントラーズにおいても同じことが言えるはず。スタイル完成の見本として非常に参考になる試合だった。

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遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください