『シン・ゴジラ』をどう語るかは難しい。

『シン・ゴジラ』については一度お話していますが、作品のヒットに伴い社会現象になっていることもあって、ネット上では軽々しく扱い辛い空気を感じています。

あまり面白くなかったことを稗と粟に例えたマンガ家さんのtweetに突撃したり、ちゃんと観て語れとか、的を射てない感想や逆張りで薄っぺらい批評なら叩かれても仕方がないとか。

でも映画ってそんなに難しいもんでしたっけ?

先述のマンガ家さんは、すでに「あまり面白くなかったなぁ」と言い辛い空気を察知して「某邦画」と記したのだと推測します。

もちろんマンガにして発表したので、その内容について批評されるのは、それは仕方のないことだとは思います。
常々言っているように、表現をしたらそれにリアクションは伴います。

ただご本人が謝罪し削除された画像が、本人の許諾なく使われているのは、同じ著作権者として行き過ぎだと思います。
それに加担した方は、tweetやコメントで表現した以上、今度はあなた方のとった行動が問われることになります。

これは良いとか悪いとかじゃあなく、物事の帰結です。
この話はとりあえず置いておきますね。


ボクはIMAX上映が戻ってきたらもう一度行こうとは思っているのですが『シン・ゴジラ』って、なぜこんなにも猛烈に愛され、また面白く感じられない人には「これの何処が面白いの?」と言わずにはおれない作品になってしまったのでしょう?

ある人は「観た人自身に対してのリトマス試験紙」「自身を映す鏡」と言いました。

全くそのとおりです。

なぜそうなってしまうのか。「怪獣映画」だからでしょうか?「オタク作った映画」だからでしょうか?

ボクはいろいろ考えた末、これは「キャラクター映画」なのではないかと思い至りました。みなみ先生と二人で取り組んでいるジャンルである「キャラクター文芸」にとても似ている感じがしたのです。

長谷川博己さん演じる矢口蘭童はじめ、みんな大好き市川実日子さん演じる尾頭ヒロミだけじゃありません。巨災対の面々などなどたくさんの俳優さんが演じてますが、その人物を構成する背景等がとてもキャラクタライズされていると感じるのです。

ちっちゃいシン・ゴジラが可愛すぎ!
なんか見てるとすごくそう感じます。

だからボクたちは、その深みや余白を想像することが出来、二次創作を楽しむことが出来るわけです。


逆に言うと、キャラクタライズされていることで、登場人物は設定に忠実で揺れがなく、物語の求める役割を演じているに過ぎないことになってしまい、深みが失われてしまうのです。

これを実写で役者さんが演じると、観る人によっては「薄っぺらい」と感じてられてしまうのも、これまた必然とも考えます。

これは小説で言えば、文芸に比べてキャラクター文芸が批判される時に、必ずついてくる文言だったりもするのです。人間が描けていないとか、そういう類の(笑)

例えて言えば……『HK(変態仮面)』という映画があります。
ボクはとても大好きなのですが、なんといってもバカバカしいですよね(笑)このバカバカしいことを実写で鈴木亮平さんや安田顕さんが大真面目にキャラクターを演じている。だから笑えるし面白いですが……これについてこられない人はいっぱいいますよね?

でもそれって全然おかしいことじゃあないんです。よっぽど上手く作っても、ダメな人にはダメなのです。
二次元が実写になった時に、ボク達だってまず「誰得?」って言ってますよね?
この違和感です。この違和感を『シン・ゴジラ』」にのめり込めなかった人が感じているのではないでしょうか?

ボクにはそう思えるのです。

三時間分の脚本を二時間に収めたことでテンポは良く、そういう違和感を感じる隙は減ってはいますが、馴染めない人に「こんなヤツいねぇよ」と思われてしまうのは、ある程度仕方のないことなのではないでしょうか?

庵野監督が、ゴジラを倒す物語をテンポよく進めるために、役者さんにキャラクターになりきってもらうことを優先した結果、どうしても置いてきぼりを食らってしまう人は出る。それはもうしょうがないことだと思います。

アニメだったら最初から「アニメだからね」で済まされる部分が、実写であることで分かりにくくなってしまうんです。



創作者なら大体わかってもらえると思いますが、SFやホラーなどファンタジー要素のある作品は、実は企画段階からすごく難しいジャンルでもあります。

作品にするのも難しいし、お客さんに手にとってもらうのも難しいし、楽しんでもらうのも難しい。
でもその時に助けてくれるのがキャラクターです。
キャラクターを面白いと思ってもらえれば、沢山の人に手にとってもらいやすくなるのです。

これは『ゴジラ』だって当てはまります。

ゴジラだから観てもらえるし、ゴジラだからこそ厳しい評価も出る。
いろんな観客の期待や感想が投影されるのです。
シリーズ全作を見続けてきたボクにとっても、すごく良く出来た新しいゴジラ映画だけに快哉を叫びたくなる気持ちは分かりますし、叫んでも構わないと思います。



本当に引っかかりのない作品には、リアクションはありません。
ですが、何らか引っかかりがあった作品には、ポジティブにせよネガティブにせよリアクションは出てしまうものです。

もしこの作品は自分の中で揺らがないマイルストーンである!という確信があるのなら、多少のことなら「そういう見方もあるかぁ」と、ド〜ンと構えてみるのもいいのではないでしょうか?

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