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舞台『8月の家族たち』

みなみ先生がファンである橋本さとしさんが出演する舞台「8月の家族たち」観劇してまいりました。

演出はバンド「有頂天」でご存知ケラリーノ・サンドロヴィッチさん。

もはや「有頂天」よりも舞台演出のほうがキャリアが長いのかしら?いやバンドも辞めてらっしゃらないようだし総合的な演出家でもありプレイヤーと認知したほうがよいのかもしれないですね。

最近では『怪奇恋愛作戦』の脚本・監督も務めてらっしゃいました。

さて映画版『8月の家族たち』は公式サイトにもあるように、さまざまな受賞、ノミネートを受けた作品であり、原作であるトレイシー・レッツの戯曲「August: Osage County」は、2007年に初演され翌年のピュリッツァー賞戯曲部門賞とトニー賞演劇作品賞を受賞したという、まぁかなり翻訳劇としては敷居が高いというか、これをダメにしたら演出家ちょっと出てこいくらいの作品なんでしょうね。


なんでしょうね、と書いたのは、実はボクが映画も戯曲も未見で観劇に挑んだからです。

なんというか…こう…映画版を観た人の評判が芳しくないんですよ。
英語のブラックジョークの翻訳に問題があって笑えないとかそういうことなのかな?とか事前に悩みたくなかったんで、だったら体当たりで舞台を観ちゃえ!と相成ったわけです。


3幕構成で約3時間20分。かなりの長丁場。

終わってみれば、なるほど切るところはないよなっていうくらい詰まってます。一幕二幕終わりの盛り上げも大事だし。

もともと「ゲラゲラ笑う」ような作品ではないんですよ、きっと。
クスクス笑って時々ゲラゲラ笑う感じ。

詩人でアルコール中毒の父ベバリー(演:村井國夫さん)が、ジョナ(演:羽鳥名美子さん)っていうネイティブアメリカンのお手伝いさんを雇うんだけど、奥さんのヴァイオレット(演:麻実れいさん)の処方薬依存症にほとほと手を焼いてるんですよ。

ここだけでまずアメリカン家庭あるあるなんですが、日本家庭無い無いなんですよ。もちろんそういうものだという知識のある人には問題ないんですが。

ある日ベバリーが失踪します。

そこでヴァイオレットの妹夫婦や、娘たちの長女バーバラ(演:秋山菜津子さん)次女アイビー(演:常盤貴子さん)三女カレン(演:音月桂さん)が、遠路集まってきます。

このオクラホマ州のオーセージ郡の8月はただでさえ暑いのに、この家は窓を目張りし、エアコンすら使わないというある種人間の極限な状況なわけです。
------------------------ネタバレ禁止派は此処から先は読まないほうが-----------










そこにヴァイオレットの悪口雑言の数々、バーバラがそれに対抗しようとする。バーバラの夫ビル(演:生瀬勝久さん)は、この家に打ち解けようとするが、どうも連れてきた一人娘ジーン14歳(演:小野花梨さん)がマリファナを吸ってるんじゃないか?という疑いを持っている。

おまけに三女カレンのフィアンセのスティーブ(演:橋本さとし)は、誰とでも仲良くなるが、政府関係のセキュリティの仕事をしていると言いながら、本拠地はフロリダ。中東とのコネクションもあり、じつにいかがわし男。14歳のジーンに「いいブツがあるんだよ」とマリファナをちらつかせる有様。

他にもリトルチャールズ(演:中村靖日さん)と呼ばれるバイオレットの妹夫婦(夫役:木場勝己さん)(奥さん役:犬山イヌコさん)の息子だったり、バーバラの元恋人の保安官ディオン(演:藤田秀世さん)


男たちは浮気をし、女達に常に「若い女がいいんでしょう」と罵られ、もうたくさんだ!と怒鳴り散らす。

女はいい男を見つけたと言いながら、いやぁこれは別れるだろうという予感しかしない男に恋をする。母親のバイオレットは口腔癌を患っており、しきりにダウナーの薬やペインキラーを服用している。


娘のマリファナ問題しかり、ペインキラー処方問題、この辺が多くの日本人には、他の何かで置き換えづらい問題なのかな?という感じがした。

洋画を観ている人にはお馴染みの家族の秘密がいっぱい詰まっている。そして誰もがそれを隠してはおけない他の誰かに暴露されてゆく。


そんなもんなんだよ、人生ってものは長く、皆が知らない事を知っている人がいたりもする。予想外の人物がね。

ベバリーは死体で見つかります。

しかし、死ぬまでには2日あった。ひょっとしたら救える方法があったのかもしれない。

それは誰のせい!?私?あなた?

立派な人なんて、強い人なんて誰一人いやしない。

ヴァイオレットは自分が何でも知っている一番強いんだ!と叫んだ。

ならばもう私は必要ないよねと、バーバラは出てゆきます。

娘三人に捨てられたヴァイオレットは狼狽し、ネイティブアメリカンのジョナの部屋に逃げ込みます。

そしてジョナは唄うのです。「世界は終わる…世界は終わる」

デテイールは省きましたが、オチは書きました。
ヴァイオレットは誰かを信じることもなく、家族の離反を嘆きますが、「あたしやなんでも知ってるよ」というヴァイオレットに支配される家はまっぴらだろうし、男を連れて帰ってくれば気に入らないなどなど。結局自殺したビバリー唯一の理解者だったはずなのに、失ってしまう。


家族ってなんなんだ。

遠くの家族よりもジョナがいてくれる方が大事なのか…

ボクはそんな風に受け止めました。

ボク自身はこういう人間関係を演出してやろうという気にはなれないけど、セットとかめっちゃ力はいってて、セットのステレオのスピーカーから実際音出てましたしね。豊かな時間でした。

ただ最前列は首が痛い。

浅く椅子に座っていたので、生瀬さんのカートを舞台に通すのにささっと避けましたからね、阿吽の呼吸的なかんじ(笑)


ただ人はいずれ死ぬのだという普遍性だけは、緩やかには流れていた。
それだけは確かでしょうね。

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