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『人工知能で10億ゲット』作者が人工知能で新刊『AI法廷のハッカー弁護士』の装画を作ったらなんか降臨した

◆ごあいさつ

お世話になっております。竹田人造です。

人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』という小説を一年半ぐらい前に出させていただきました。

先日『AI法廷のハッカー弁護士』というとても面白いリーガルSF新刊を出版したわけなのですが、なんとその装画があの『裏世界ピクニック』のshirakabaさんでして。まぁちょっと見てみてくださいこれ。

◆shirakabaさん画、野条友史さんデザインの表紙

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どうです? いいでしょう。私の人生の数少ない自慢の一つです。

元々「リンカーン弁護士のポスターのイメージで」ってお伝えしたんですが、そこから「サーバーに座らせてみたらどうだろう」とか色々話が進んでいって、最終的にこんな形に。

六法全書が小さめのゼーレみたいに並んでるのもいかしてますよね。実は足元に転がっている小物にも結構意味があるんですよ。本編読んだら帯を外してもう一度見返してみていただけると。

こんないい画を頂いといて負け戦をしたら作家寿命が潰れそうですし、せっかくだから宣伝のためにAIの力を借りて装画を作ってみようと思います。

最初に宣言しておきますが、AIを当て馬にしてshirakabaさんに媚びる方向でオチをつける予定です。
すれそうなゴマはすっていく。それが竹田人造です。
そこのところ、どうぞよろしくお願いします。

◆使ったアルゴリズムの話

今回はThe Big Sleepという画像生成モデルを使います。

話題のDALL-E 2やimagenを使えたらかっこいいのはわかるのですが、学習済モデルが上がってないので今回はなしで。

The Big Sleepはgoogle colabで公開されてまして、初期値が犬でよければコード一行も書かなくても無料で試せます。最高過ぎる……。

機械学習どころかpython知らなくても作れるので、遊んでみてはいかがでしょうか。

◆追加のアルゴリズムの話

 このThe Big Sleep、論文は見当たらないのですが、コードを見る限りBigGANという画像生成モデルの潜在変数探索にCLIPという汎用画像認識モデルを利用しているみたいです。いわゆるGLIDEってやつですね。

 「ユーザーが与えた文章」と「BIGGANで生成した画像」をそれぞれCLIPに入力してベクトルに置き換え、文章から得たベクトルと生成画像から得たベクトルの差が小さくなるように、BIGGANの潜在変数を探索して再生成する感じっぽいです。

百聞は一見にしかず。とりあえず試してみましょう。


◆装画生成実験1

早速イラストを生成してみます。
人間の装画さんは本編読んで描いてくださるわけですが、The Big Sleepは入力出来る文章の系列長に限りがあるので、タイトルだけ入力します。
いやー、やっぱりすごいですね人類は。人間最高!

なお、サンプルコードの初期値画像は犬です。

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↑犬

BigGANには生成画像のクラスを指定する機能があるのですが、別にこれは何も指定せずに犬になっています。

BigGANはImageNetという有名データセットで学習しているのですが、
このデータセット、やたらと犬種にこだわりがあり、犬のクラスが細分化されています。1000クラス中118クラスが犬です。そのせいかBigGANも油断すると犬を混ぜてきます。ちなみに人間は1000クラス中0クラスです。

今はもう下火ですが、数年前までは世界中のAI研究者達が日夜ノーフォークテリアとノーリッチテリアの分類精度に一喜一憂していたわけですね。

ではやってみます。

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犬が……

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なんか歪んで……。

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金ローの映写機おじさんを挟んで

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できました。
できましたが、なんですかねこれ。なんだろう。青空法廷?
人を裁くのに屋根なんかいらないってことでしょうか。
この骨盤に悪そうな椅子は有罪だと座るやつなんでしょうか。

◆挿画生成実験2

まぁ、人間の学習データがなくても謎の人影を作れていたのは頑張ったと思うので、seed変えてもうちょっと粘ってみましょう。

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犬が……

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修復失敗したステンドグラスを経由して……。

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出来ました。
……うーーーーん。とりあえず……。

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なんらかのボスが降臨してますね……。

ステンドグラス状態からわざわざここだけ残ってるんだから、AIが自己申告してきたAIの姿なんてしょうか。だとするとAIのセルフイメージちょっと図々しいですね。

あと、画像の右上を見てみると。

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陪審員制です。アメリカの法廷画像で学習してるからこうなるんですかね。伏線かな?

しかしまぁ、正直こっちはわりとアリかも知れませんね……。機械的な不気味さと「言いたいことはわかる」感がいい塩梅でマッチしてるというか。デザインの方の頑張り次第では商品になるかもしれない。

◆キャライラストも作ってみよう


興が乗ってきたので、キャラデザもやらせてみます。

ImageNetには人間クラスないのですが、人間が写ってるクラスならあるので、それを拘束条件にいれてみます。
ということで、なるべく人間が映ってそうなクラスを見繕ってみました。

411 snorkel(シュノーケル)
439 sunglasses, dark glasses, shades(サングラス)
537 cricket(クリケット)
702 suit, suit of clothes(スーツ)

うん。クリケットは知ってるけど人間は知らないAIが現在の画像認識の土壌を作ったと思うと感慨深いですね。

もしImageNetで学習したAIが人類に反旗を翻したら、スーツの人とサングラスの人とシュノーケルの人とクリケット選手から死にます。気をつけて下さい。
MSCOCOデータセットで学習してたらもう無理なので諦めて下さい。


◆機島雄弁を作ろう

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●機島雄弁(きしま・ゆうべん)自称魔法使いのハッカー弁護士。他人の泣き言が主食。

主人公、機島雄弁はハッカー弁護士その人です。とにかく皮肉屋で煽り癖があるけれど結果は出すという、みんな大好きステーキ弁当みたいな奴ですね。

shirakabaさんにはマシュー・マコノヒーっぽいイメージをお伝えして、いくつかデザイン頂いて選んでいきました。スーツやネクタイの柄も絶妙に「こいてる感」があっていいですよね。職場でこんな人居たら一歩距離をおきます。

ちなみにこちらのイラスト、三話のとある描写と一箇所だけ違っているのですが、shirakabaさんと話し合った上で「絵にすると馬鹿過ぎる」という理由で反映しませんでした。だからこれ一話か二話の機島です。

では、作ってみます。スーツクラスで拘束して、キャラ紹介文を入れて……。

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溶けたチャイルドシートみたいなのが……。

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一回天高く伸びて……。

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エクスペクト・パトローナム。

レアルカリア魔術学院の強モブが出来ました。

自称魔法使いというプロフィールだからか、仕上がりは魔術師が強いですね。でも素材はローブよりスーツっぽい。右側のハンドバッグがワンポイント。

なんか途中で一回縦に伸びましたが、本編の伏線です。嘘です。


◆軒下智紀を作ろう

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●軒下智紀(のきした・ともき)依頼人。一見特徴の薄い小柄な青年。得意科目は道徳。

本人は常識があるつもりのツッコミ役です。

新卒の就活スーツをずっと気付けるタイプの奴ではあるのですが、「肉まんを手渡しして許される顔はこれ」という高い説得力をもって美形度が増しました。このポーズも後々見るとニヤッと出来ます。

では、こちらも紹介文をいれてやってみます。

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なんかへんな虫から……

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裏世界ピクニック?

どうみても何らかの怪異です。特徴のない青年って書きはしましたが、こんなSCPの解釈で来るとは。

多分記憶干渉系の能力持ってますね。一度離れると存在を忘却してしまうから対策出来ないやつ。線路に出現するし、多分猿夢とコンボを決めてきます。

AIにもshirakabaさんへの対抗心が芽生えてきたのでしょうか。

◆錦野翠

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●錦野翠(にしきの・みどり)通称・錦野博士。情報通のエンジニア。機島をサポートしつつ嫌がらせもする。

一番shirakabaさんにお任せ度高かったキャラです。

twitterで結構擦ったネタなんですが、一文字も描写してないメガネがいつの間にか追加されていて、思わず「メガネ」で本文を検索かけました。

似合ってますしね。ストンと腑に落ちる感じ。ふやけたキャラにちょうどいいんですよね、この光り物が。あとこの髪留めは袋止めクリップです。

ちなみに、shirakabaさんに「身長伸ばしちゃっていいですか?」みたいなメッセージを頂いたので、「お好きなだけ伸ばしてください。恐れることはありません」とお答えしました。身長高いけど姿勢が悪いキャラ好きなので……。

今回は(メガネがないから)サングラスのクラス情報を与えて、キャラ紹介文に細長いを加えてみます。

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空間ごと着るタイプのファッションモデルから……。

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古着横取り人を経由して……。

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細長くなりました。

振り切ってきましたね。そりゃあ細長いと言ったのは私ですが、腰までしか見えてない状態で出してくるとは。フレーム問題アピールかな。

とにかく機械をたくさん置いてITエンジニア感を出そうとする雑さに何とも言えない親近感がわきます。AIがその認識でいいんだ。

◆まとめ


 AIで新刊「AI法廷のハッカー弁護士」の装画やキャラデザを作ってみたわけですが、いかがでしたでしょうか。

二番目の装画は結構良かったんじゃないですか? キャラデザの方はまぁ、優しい目で見てほしいですが。

ただまぁ、ちょっと判官びいきな事言いますと、このサイズの画像を「ニュアンスだけは伝わる」状態まで持っていけたのは偉いんですよ。少なくとも10年前では考えられなかったことです。

 この分野、一時期GANで盛り上がったかなと思うと大域的な構造の弱さをどうも克服出来ずにいたんですが、diffusion modelの登場で最近の進歩がすごいんです。
DALLE-2がとんでもないと思ってたら、今度はimagenって更に上のモデルが出てきましたからね。

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↑imagen生成画像。右下のgoogleの脳がすごい。水の表現どうなってるの?

このペースだと、私が生きているうちにAIが人間のイラストレーターさんを超えてもおかしくないって思いますよ。

小説だってそうです。最近はついにAIを使ったSF小説が星賞で入賞しましたしね。
いつか一緒にいい本を作るために、時々こうしてお互いの実力を確認してみるのも楽しいんじゃないでしょうか。

まぁでも私はAIよりshirakabaさんに描いてもらった装画の方がいいですが……。


AI法廷のハッカー弁護士、好評発売中!!


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