見出し画像

久しぶりに“強烈に”面白かった動画/【起業チャレンジ! 覆面ビリオネア】

何か動画を観ながら作業したいとき、僕はよく落語や漫才を選んでいます。でも、できればもっと長尺で、知的好奇心も満足できるような動画は無いものか? …そんなふうにして先日ふとみつけたこの動画。初球でホームランでした。すごく面白いです。ビジネスドキュメンタリー系が好きな方は、絶対に観た方がいいと思います。ビジネスの立ち上がる現場を垣間見れることは契約書の勉強にもなるし、おすすめです。

以下、ネタバレなしで感想を書きます。

YouTubeで観られますよ↓↓

90日間で100万ドルのビジネスを立ちあげる?

これは「ディスカバリー」というアメリカのケーブルテレビメディアの、YouTube公式アカウントでみつけた番組です。番組内容は、すでに社会的成功を収めた資産家が、いまいちどゼロからスタートして「わずか90日間で100万ドル規模のビジネスを立ち上げる!?」というチャレンジ企画です。主役のグレン・スターンズ氏は、米国メリーランド州生まれの成功者で、その生い立ちには恵まれない家庭環境や失読症などの困難がありつつも、自身が25歳で起業した Stearns Lending を全米トップクラスのリース会社に育て上げたという実業家だそうです。まさしくアメリカンドリームを体現したようなこのグレン氏ですが、この番組では56歳(撮影時)にして、再び起業にチャレンジします。

ちなみに、以下の厳しい条件付きです。

【ルール】
①原資100ドルから、90日間で100万ドルを稼ぐ
②古いトラックと連絡先の入っていないスマホが支給される
③正体がバレないように偽名を使う 

ディスカバリーチャンネル公式YouTubeチャンネル/概要欄より引用

徹底したリアリティ

渡されるのは元手の100ドルと、中古トラック、スマホ(連絡先無し!)だけ。なおかつ「偽名」を使うルールなので、知名度やバックグラウンドといった武器は使えないことになります。しかも起業の舞台となるのは、グレン氏もまだ行ったことが無かったという地域(ペンシルベニア州のエリーという町)。「場所」さえもゼロからのスタートという、設定の徹底ぶりに驚かされました。番組なので、ある程度はサポートやバックアッププランがあるのだとは思うのですが、僕が観ていた限りではまったく「仕込み」的な要素はうかがえず、リアリティがすごいです。
話は少しそれますが、そもそもこういう番組をつくれる度胸というか、懐の深さがすでにレベルの差を感じさせますよね。チャレンジが失敗した際のプランB的なシナリオはあったのでしょうか? どうやってこういう番組の企画を通すのかが不思議です。

セレブ生活が一転、寝る場所すら無い暮らしに

さて普段はプライベートジェットやヨットを乗り回し、海外に別荘も所有するという、いわゆるセレブ級お金持ちである主人公、グレン氏が、企画の初日からはその華麗なライフスタイルから一転、寒空の下、食事も思い通りにならず、与えられたトラックで寝泊まりを余儀なくされるところから、番組はスタートします。特に最初の数話では泊まるところもないので、やむなく車で寝起きしており、その時点で早速大ピンチに見えたのですが、グレン氏は諦めることなくひたむきに行動し続けます。(この場面、お若い方にはいまいち実感がわかないかもしれませんが、歳をとると車で寝るというだけでも身体的に相当にきついのです。)
数日後、ささやかな日銭を得たグレンがようやく安宿で寝られることになったときは、こちらもホッと胸をなでおろす、・・・という具合に、序盤からすっかり感情移入してしまいました。資金は「常に」ぎりぎりです。そして、そうこうするうちにも「90日間」というタイムリミットは容赦なく近づいてきます。はたしてグレン氏は、ここからどうやって「100万ドルのビジネス」を立ち上げようというのでしょうか・・・?

この番組から僕が学んだこと

あまり書くとどうしてもネタバレになるので、とにかく観てほしいとしか言いようがありませんが、代わりに(?)僕がこの動画で「学びになった」たことを要約します。

・人柄の重要性

グレン氏は、非常に「謙虚」な人物だと感じました。言動を見ていて、ほとんど嫌な印象がない。ただし、いわゆる「お人好し」的な意味でのいい人ではなくて、協力者にどんどんプレッシャーをかけてプロジェクトを手伝わせようとするところなどはむしろ「鬼」なのですが、それでもなぜかみんなが頑張って力を発揮する様子は、まるでマジックを見ているかののようです。なぜなのかはっきりは分かりませんが、グレン氏の「感情を言葉にして伝える習慣」が、じわじわと作用していそうな気がしました。というのも、グレン氏はいつも「本当に感謝しているよ」「すまない、僕が間違っていた」「素晴らしい、よくやってくれた」「君には才能がある」・・・みたいなセリフを、本当に惜しみなく頻繁に言うのです。こうした人柄なのか、にじみ出る謙虚さみたいなキャラクターが、このようにタフな状況下でも人の心をつかむのかもしれません。

・ビジョンの重要性

スタート時は住む場所の家賃を確保するためもあって、「便利屋」的な仕事に専念していたグレン氏ですが、あるタイミングで何名かの優秀な協力者を得て(まるで桃太郎のようです)、そして皆の前で、これから自分が立ち上げようとするビジネスの全体像、ビジョンを雄弁に語るシーンがあります。集まった一同は皆、グレン氏(数週間前によその町からやってきた「一文無し」の男)が語る壮大な、それでいて地に足の着いたビジネスプランに、感心しながら静かに聞き入っていました。
全編を観終わってからこのシーンに引き返してきて再確認したのですが、思えばこの瞬間がターニングポイント、物語が大きく動き出した瞬間だったのです。やはり人を巻き込むには、ビジョンを上手に伝える必要があります。グレン氏のように、皆に大きな絵の全体像をみせてから、そのためにはこの部分に、今あなたのこういう能力が必要なんです、という順序で話すのが、話がより伝わる秘訣かもしれません。グレン氏の卓越したリーダーシップが光り出します。

・人材の重要性

この番組を通して僕が最も強く思ったのが「人材というファクター」の大事さです。グレン氏がプランしたビジネスというのは、未だグレン氏も経験したことのない分野のものでした。そして、グレン氏がとりかかった最初の仕事がいわゆる「チームビルディング」だったのです。自分にはできないことや不得手なことを、自分より優秀な人を見つけて任せる、グレン氏にはそんなビジネス哲学が備わっているようです。
持ち前の行動力であれよあれよという間に人を巻き込んで、大きなビジョンで魅了し、すっかり協力者にさせてしまう様子は、この番組の見どころのひとつです。ただ、もちろんすべてが順調にいったわけではなく、詳しくは書きませんが、明らかな人選ミスに見える出来事も起こります(そういう点も含めて本当にリアルでした!)。
ともあれ、なぜ起業において真っ先にとりかかったのが「チームビルディング」だったのか? なぜ法律のリサーチや必要な資材の準備ではなく「募集」と「面接」を優先したのか? それはグレン氏が、人材こそ最重要なファクターだと体験的に知っていたからではないかと想像します。本来人の協力はありがたいものであると同時に、不確定要素、不安要素でもあるもの。。それでもやはり、人を巻き込まなければ成し遂げられないことがあるものです。偽名を使い続けながらも、協力者の信頼を得ていかなければならない難局ですが、ここでもグレン氏の特性と手腕が、いかんなく発揮されます。

・地域貢献の重要性

学んだことの最後に付け加えたいのが、「地域貢献」です。今回の企画で、ペンシルベニア州に「初めて」やってきたというグレン氏でしたが、何度も「このエリーという町が気に入っている」「エリーに根差したビジネスにしていきたい」というような意味の発言をしていました。そして、チームのメンバーにもくり返しそれを伝えていて、その言葉に彼らも鼓舞され、奮起しているように見えました。
―― 地域に貢献したい、という利他的なメッセージ。これはもちろんグレン氏の本音だったと思うのですが、このことは同時に、協力するメンバーのモチベーションを各段に高めていたと思います。エリーの街の特徴を的確に見抜き、それに沿った成長戦略を展開しようとするグレン氏のビジネスプランは、起業は営利活動の側面だけではなく、地域に雇用や活気を生み出す具体的なアクションでもあることを、強調してくれます。これが携わる人たちにとっては「やりがい」や「働く理由」となって心に積み重なり、やがてビジネスへの大きな追い風になってくれるのかもしれません。

結局は人

ちょっとした作業のBGM代わりのつもりだったのに、結局夢中で全編くまなく観てしまったわけですが、本当に面白かったです。こんなにリアルな番組をつくれる企画側やスタッフの「忍耐」にも驚かされました。単純に「90日間」も密着して撮影するところだけをみても相当大変なことですよね。
さて、起業がテーマの作品は数多あると思いますが、普通は過去の実績や成功事例の分析(嫌な言い方をすれば、後追い)にならざるを得ないでしょうから、今回のように実際に目の前で起業して見せる、しかもトラックに寝泊まりするところからのスタート、というのは、まったくもって稀有なコンテンツではないでしょうか。
どこまでが設定(台本)だったのか、僕には本当にわからなかったけど、そんなのはどうでもよくなるくらい、本質的なことをたくさん示唆してくれたと感じました。グレン氏はいくつもの幸運にめぐまれ、いくつもの偶然性(良い意味でも悪い意味でも)に翻弄され、そしていくつもの深刻なトラブルにみまわれます。それで、最終的にどうなったのか? はぜひ観てほしいのですが、プロセスがすでに十分に面白いし、おそらく番組編集のうまさも相まって、大作ですがテンポよく、飽きずに観ることができます。
つくづく感じたのは、起業はノウハウやセオリーではなく、その人の情熱が成否を決めているんだということ。年齢でもなく、持って生まれたものでさえなく、結局は人が持つ思いの強さ次第なのかも。そんなことを考えさせられました。

以上。少し長い、動画のおすすめでした。


契約書のひな形をまとめています。あなたのビジネスにお役立てください。


もしこの記事が少しでも「役に立ったな」「有益だな」と思っていただけましたら、サポートをご検討いただけますと大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。