見出し画像

4回目の実証はPoC4かPoC死か

最近、ロボットの導入しようとすると実証という文脈で「PoC」という言葉をよく聞きます。また、同時に業界の人たちと話をしていると「PoC死」という言葉もちらほら聞かれるようになってきました。今回はPoCとは何なのか?死を避ける為にはどうするのか?ということを考えてみます。

特に斬新な切り口を書くつもりはなく、かつあまりロボット活用が進んでいないシーンを対象とした導入検討という経験の中で感じる思いですので、その辺りはお許し下さい。なお、もちろん会社としての意見ではありませんし、大学時代からこれまでの経験を踏まえた一個人としての纏めです。

結論から言うと、実証は4回目が勝負というか、4回目の実証『PoC4』が文字通り『PoC死』の分かれ道になるということだと思います。

PoCとは何なのか?

PoCとは、Proof of Conceptの略なので直訳すると概念実証ですかね。ポックとかピーオーシーとか読んだりします。概念実証というと、ちょっと小難しいですが、要は実導入するかを判断するために、使えるかどうかと見極めるために行う現場での実機などを用いた検証作業ということですかね。本来の意味的には、PoCと実証は違うのもしれませんが、ロボット導入検討の現場では同じ意味で使われていることが多いです。

このPoCが大量に発生し、PoCばかりして、なかなか実導入に繋がらない、売上が上がらない、結果としてメーカー側は辛くなる、という現象が『PoC死』と呼ばれる状況です。

PoC死に陥る原因は色々ありますが、特にロボットの場合には、未活用領域でまず使ってみることが目的化しているケースが多いのではないかと思います。そして、ウォータフォールからアジャイルに開発手法の比重が増える中で、メーカー側もドンドンと試行錯誤を繰り返す、というサイクルが回りまくる。

結果として、ユーザーもメーカーも色々と知見が溜まるけど、なかなか導入に至らない。

PoCの3段階

PoCにより知見が溜まるのは良いことですが、それが続くのが理想とは思えません。これを避けるためには、PoCのフェーズを3つに分けること、どのフェーズかを意識してPoCを行うことが大事だと思っています。

第1フェーズ:何に使うかをしっかり考える

まずはロボットが動いている様子を見てもらう。出来るだけ多くのステイクホルダに見てもらう。そして、こんな感じかとイメージを掴んでもらう。

最近のロボットブームで現状のロボットがどれくらいの実力かというのは昔よりは理解されるようになりましたが、それでもその理解はあくまでもロボットに積極的に興味を持っている人だけです。とある施設でロボットを使いたいと思っている人がいても、その施設に関係する人の9割くらいはロボットがどんなもんかというのは知らない状況と考えても良いかと。

そのような大多数の人も含めて、会議室でも何でも良いので、業務の空き時間にでも見てもらう、触ってもらうフェーズです。その上で、

「このロボットはどのような使い方ができるかを考える」

ことがゴールです。この時に大事なのは、ロボットにさせようとしている行為にどれくらいのリソースが掛けられているかを把握することを並行して見積もっておくことです。ヒヤリングでわかることもあれば、実際に観察してみないとわからないこともあるかと思いますが、ヒトやモノがどの程度必要な行為かを見極める必要があります。

第2フェーズ:技術的に対応できるか考える

フェーズ1で決めたやりたいことが、本当に技術的にできるのか現場で検証するフェーズです。あくまでも技術的に出来るかが大事で技術検証です。

事前にシミュレーションなどで検証するのは出来るだけやった方が良いですし、そのために必要なデータ取りはフェーズ2の前にしておいた方が良いです。その上で、実際の想定環境で動くかをしっかり検証する、そして動くというのを確認する、もしくはどのような場合には動かないのかを把握することがゴールです。

やっぱり現場でしかわからない事はあります。対象物の特性のバラツキ具合とか、明るさや人の多さなど特に時間的に変化する環境条件は性能に影響することが多い気がします。

第二フェーズではオペレーションは技術側でするのが良いと思います。もちろん、ユーザ側の協力は必要不可欠です。

結果としては、ロボットで出来ることが何か、できないことはないかを理解した上で、本当にそのタスクをロボットでやらせる必要があるか判断できれば良いです。

第一フェーズでも、本当にロボットでやらせる必要があるかという議論は大事だと思いますが、第一フェーズでは主に代替手段はロボット以外に何があるのか?についてが考えるのに対して、第二フェーズでは、検証したロボットの性能でも本当にロボットにやらせるのか、というのが判断事項になります。

第3フェーズ:オペレーションに組み込んで効果を検証する

ひらたく言えば、運用検証です。想定したオペレーションに完全に組み込んで評価します。少なくとも1ヶ月組み込んだ上で、効果をしっかり測定することが重要です。

オペレーションに組み込むことが大事ですので、全ての行為はユーザに委ねる必要があります。フェーズ2で洗い出したロボットには出来ないことやエラー時の対応なども含めて、どのような運用で全体プロセスを実行していくのか計画することが大事です。

また、フェーズ3を始める前に、何が出来ていたら導入するのかというKPIを使う側と作る側がちゃんと合意しておくことが非常に重要です。ここが曖昧だと、終わった後に「うーん、なんかイマイチ」ということで、微妙に色々変えながら試し続けることになります。現実問題としては、なかなかKPIを握り切るというのが難しいシチュエーションが多々ありますが、少なくとも握ろうとし続けることが大事です。ここでKPIが握れない場合は、何が現場の課題を解決しようという想いではなく、ロボットを使ってみることが目的になっていることが多いと思った方が良いでしょう。

握ったKPIが達成できないなら、それはもう一度考え直すべきということです。ロボットの性能を上げる必要があるか、運用を見直す必要があるか、ロボットには向いてないかのいずれかの対応をしないといけません。

第4フェーズ:PoC死を避ける。笑

第3フェーズでKPIを満たしても、色々な理由で導入に至らない、もしくはもう少し検討したいという要望が出ることがあります。これは無限ループに入り、PoC死に至る可能性が増えます。

ですので、PoCを続けないというのも大切な判断です。多くの場合、リソースが限られているケースがほとんどだと思うので、それは大事な決断です。

一方で、作り手もしくは使い手のいずれかがどうしても粘りたいケースもあります。その時には、もし4回目するなら逆に6ヶ月くらいやる。しかも有料でやるというのが良いです。本番ほどの費用は頂かないにしても、それなりの費用負担をして頂いた上で継続するべきです。1円の費用負担も難しい場合はやめた方が良いです。

6ヶ月というのもポイントだと思います。3ヶ月くらいでも良いですが、本当の意味で業務に組み込まれた上で、3ヶ月や6ヶ月経てば、普通であれば、ロボットのない業務には戻れないはずです。つまり、もし効果があるのであれば、基本はもう無くてはならない存在になっているはずです。

費用を頂いてPoCをするかは、第3フェーズから検討しても良いかもしれません。

3ステップを踏まないケース

もちろん、ロボット導入においても上記の3ステップを踏まないケースも沢山あります。特に、ある程度活用実績が出始めている領域、特にメーカ側にノウハウが溜まり、事例のモデル化もしくはカテゴリー化が出来ている場合には、いきなりステップ4というか導入提案ができます。ロボット関係では、ビル掃除ロボットなんかが割りとその辺りの状況に近いところまで来ているのではないでしょうか?特に、ソフトバンクさんのWhizあたりはかなり近いですし、ZMPさんも「運用費用:月10万円/台~、初期費用:500万円~(マップ作成・ルート設定・現地チューニング・実証実験)」という費用設定しているところからもかなりノウハウが溜まってきているように感じます。

このような流れは、未活用領域から活用領域へ変遷間近ということで、個人的には良い現象と思います。

まとめ

大事なのは、PoCという言葉通り「conceptが何なのか?」、即ちどういうタスクをロボット化するのか、ということ、と「それをどうやって、何を以てProofできたとするか?」という2点を使い手と作り手がしっかりと合意すること。当たり前の結論になり、申し訳ないのですが、これこそがPoC死を避けるポイントなんだと思います。

色々と偉っそうに書いてみましたが、ここに書いた全てのことを自分がうまく出来ているわけではないです。大事だと思っていてもなかなか出来ないのも現実です。ただ重要だという想いは持っていますので、この辺りの考え方を共有しながら、これからの活動を進めて行ければと。

=================================

Twitter(@takecando)では気になったロボットやWell-beingの関連ニュースなどを発信しています。よければ、フォローください。



頂いたサポートは記事作成のために活用させて頂きます。