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『王様戦隊キングオージャー』第3話感想

第3話 我がままを捧ぐ


 反逆罪による死刑宣告を受けたギラは、シュゴッダム国内で指名手配され、シュゴッダムの追っ手に取り囲まれる。ラクレスに近づく絶好の機会だと不敵に笑い、自ら捕まることを望む。
 だが、不意に現れたンコソパ国総長のヤンマ・ガストによって連れ去られてしまったギラは、流されるままンコソパへと旅立つ。
 初めて出会った異文化、初めて味わう本音のぶつけ合い、初めて知る民と王とのつながりの在り方。
 そして初めて出会った敵・地帝国バグナラクの王は、その恐るべき強さと謎を残した。
 互いの存在さえ知らなかったギラとヤンマが、共に戦うことで互いの心に一歩近づいた時、優雅なお迎えが参上した……とさ。

 ※前話で付け忘れたのですが、上記のあらすじの文章は全て私の創作です。「とさ」はオマージュパクリですし、本来の語り部の語りとは違うので、ご了承ください。本来の語りを楽しみたい方は、TTFCにご入会をお薦めします(ダイレクトマーケティング)。

ようこそイシャバーナへ

 海、海、海!浜辺と海辺の山と岩に島にサンゴ礁!絶景の風景の向こうに霞んで見える、天上に向けて大きく開く巨大な花。優雅な音楽と共に美しい景色が次々とたっぷり映し出される。放送当時にここから見始めた人は絶対に「チャンネル間違えたかな?」と首を傾げたに違いない。あれぇ……と思い始めるタイミングで、画面の端からカマキリ型シュゴッドがゆったりと姿を現す。
 しかし次には、見渡す限りの花、花、花!美しい花畑の風景!ああ、心が浄化されていくぅぅぅぅ……って、作品違うし、話が終わっちゃうから!
 広場で思い思いに過ごす人たち。人々はみな、イメージで言えば近代ヨーロッパの上級貴族風の衣服を身にまとっている。そしてそこかしこに色とりどりの花があり、人々もどこかかしらに花を身に付けている。
 人々が微笑みながら見上げ、手を振る先にはカマキリ型のシュゴッド。このシュゴッドを操る存在はチキューにおいてただ一人。というわけで、見上げなら「ヒメノ様~」と穏やかに呼びかける者もいる。呼びかけるが、叫ばない。おお、ンコソパとの落差よ……。

 イシャバーナ・フラピュタル城近郊の様子がカマキリ型シュゴッド=ゴッドカマキリの帰還ルートに映り込む形で描かれています。改めてじっくり見ましたが、思ったよりしっかり水上都市です。どうやって湖底?海底?に建てたのかと思うほど太い支柱の上に、街や施設などが築かれています。水連の花のようというべきか。ほんの一瞬だし滅多に出てこないので、実はレアな映像だったりします。

 フラピュタル城の正門前。どうにかカッコよく着地するヤンマ君。一瞬間を置いて、ヤンマ君を突き飛ばしておきながら、さもカッコよく着地したようなキメ顔をして振り返るギラ。ヤンマ君可哀想。
 すると、黄金色の敷物が敷かれた階段を優雅に降りてくる、黄金色の美しい靴、すらりと伸びた脚。ドレープがたっぷりのスカートは後ろ下がりのデザインで、前部はひざ丈になっていて、芸術美と機能美を兼ねた実にイシャバーナらしいドレスである。
 上半身はイシャバーナの紋章入りの大きな花びら型の扇のようなもので左右から隠されていて分からない。のちの引きの絵で、左右1枚ずつ、メイドたちが持っていることが分かるが、これを持ちながら階段を下りてくるのって地味に大変な作業ではなかろうか。

 さてここでのヤンマ君とギラの反応である。ヤンマ君は一昨日の今日であるはずなのに、シュゴッダムで顔を合わせていた時とはまるで違う顔つきになっている。完全に憧れの女子に対する思春期男子である……さては、恥ずかしくって顔を見れないからわざと横向きに座ってたのか!思春期だな!(ヤンマ君の年齢設定は20代前半だった……ハズ)
 一方のギラは、本人同士としてはもちろん初対面なのだが、何だそのしかめっ面は……警戒心丸出しである。
 表情がとろけていたヤンマ君、しかし一瞬でキュッと引き締める……というか、ちょっとカッコつけてるなあwww
 そして何でギラとヤンマ君の場面で紗をかけるんだwwww

 大きな扇を持ったメイドたちが左右に退くと、花も霞むほどの美貌の女性が、満面の笑みをたたえて二人を出迎える。
「ようこそ、絢爛のイシャバーナへ」
 ヒメノ様を先頭に階段に並ぶ執事やメイドたち、最後尾でにらみを利かせるかのようなカマキリ型のシュゴッド。絵面のカッコ良さにこれだけで一本特撮番組撮れそう。さすがイシャバーナ、どんな時でも美に手を抜かない(←違う、そういうことじゃない)。

 完全にヤンマ君の思考回路が、ヒメノ様の美貌にのぼせて焼き切れたらしく、浮ついた声と口調で「ヒメノちゃん♡」と馴れ馴れしく名前を呼ぶ。あまつさえデレデレした笑みを浮かべ、いわゆる「チョリーッス」なあいさつまでしている始末である。シオカラ君たちが見たら、前回と違う意味で泣いてしまいそうである。
 ギラはギラで、まだまだ思考回路が思春期未満のようで、ヒメノ様の美貌にビクともしないというより何も感じていない様子で、「手荒な歓迎だな」と告げる。
 ケガでもした?と心配した顔も一瞬、ケロッと「治せばいいじゃない」と言い切るヒメノ様。「ここは美と医療の国なんだから」
 すると、ヤンマ君がまだ夢見心地の笑顔のまま、フラフラと進み出る。「いってぇ……、ホントだ、足が……」
 ヒメノ様の美貌恐るべし!(ヤンマ君に耐性がないだけ?)
 しかし、痛みを訴えるヤンマ君を無視して、ヒメノ様はギラの前へとつかつかと歩み寄る。メイドも心得たもので、ギラの前に静かに踏み台を置く。ギラが戸惑っている間にヒメノ様が踏み台の上に乗る。ギラが自然とヒメノ様を見上げる形になる。あれ、画面が急に花に囲まれたぞ?あれ、またスクリーントーン何枚分?と思うくらいの紗がかかったぞ?
 ヒメノ様が、上から(!)ギラの目をのぞき込み、さりげなく右手の人差し指をギラのあごへと添えながらささやきかける。
「私はあなたに興味がある」
 うーわー、これ絵面は完全に、華麗に花が咲きこぼれ、点描がムードを生み出す昭和の少女漫画じゃないですかー!!!え?ベルばらでも始まる?

 視聴者(と言うか私が)ウットリしているのもつかの間、実にあっけらかんとした笑顔でヒメノ様が執事を呼ぶ。次の瞬間には、花で飾られたイシャバーナらしい手錠が、ギラの両手首にかけられる。慌てるギラと、いい笑顔のセバスチャン。ご機嫌になって踏み台から降りて、スタスタといなくなるヒメノ様の愛らしさよ。言葉遣いだけは丁寧なセバスチャンに、問答無用で連行されていくギラ。
 鳴り響く鐘の音とともに、大きな黄色の花弁が開き、城が全貌を現す。

 ここで、何と!待ちに待った正規のOPが入ります!
 3話時点でのOPについては番外編をどうぞ(内容を要約したら「カッコイイ」しかありませんがw)。

 提供様用カット。フラピュタル城の王の間。玉座から見て左下側から徐々に上昇して、左上に移動する視点。玉座そして玉座の奥へとスライドし、定位置にいるゴッドカマキリで止まる。玉座よろしく専用のクッションがちゃんとあって、その上でゆったりと斜めに寝そべっている。何とも色っぽいというか艶っぽい。まさしく女王様。

国際指名手配犯・ギラ

 フラピュタル城の城内。窓の外では、さまざまな魚が泳ぎ、海藻が揺れている。大広間は、治療用のベッド、クラゲ型やイカ型のデミシュゴッド(!)に医師・看護師が行き交う。優雅なデザインとハイテクが融合したベッドは、寝ている患者の治療や観察ができる。医師や看護師たちは必要に応じて呼び出したデータを空中に投影・表示することで、適切な治療や看護を行える。周囲には無機質になりがちな医療の場を彩る流麗な装飾、花々や木々、水。どこを見ても豪華絢爛な造作の中でも目を引く、音を立てて流れる水のカーテン。その奥にもヨーロッパにありそうな、水を吐く彫刻。
 その上、まさに大広間全体を見渡せる場所こそ、玉座の間である。

 玉座の間。いつものように優雅に寝そべるゴッドカマキリ。キレイに並ぶメイドや執事たち。常と違うのは、叫び声が響いてくること。
「貴様ー、ただで済むと思うなよ!」
 画角に収まる日が来るのか分からないほど高い天井から、縄一本で吊られているギラこそ、叫び声の主であった。
「ゴッドクワガタを渡せば、すぐにでも解放してあげる」
 優雅にお茶を楽しまれているヒメノ様のお姿と、まぎれもない脅迫の言葉のギャップが凄すぎて、違和感が仕事を放棄している。ヤンマ君はマイドリンクを豪快にあおっている。どこに入ってたんだソレ。
 なぜクワゴンが必要なのかと問うギラに、愛でるために決まってると返すヒメノ様。「じゃあしょうがねぇな。渡せ、タコメンチ」と言うヤンマ君は、まだ回路が焼き切れたままのようだ。
 「意味が分からん!ただのわがまま娘じゃないか!」というギラの怒りはもっともなんだが、矛先はヤンマ君に向いている。
 「ああ⁉ヒメノちゃんに何て口ききやがる!」とキレるヤンマ君よ、そういう君こそどの立場でちゃん付けで呼んでいるのだ?ジャ○おじさん、新しいヤンマ君の頭はまだですか???
 さっきから何なんだとヤンマ君にいら立ったギラがハッと気づく。
「……まさか、惚れてるのか?」
 ギラの言葉に顔ごとヒメノ様の方に向けたヤンマ君。熱い視線を送ると、どう考えても空威張りな高笑いをして、全力で叫ぶ。
「そんなんじゃねーしー!!!!」

 やってきました3話の見どころ!2話とは一転して、ダサくてカッコ悪いヤンマ君の一面が描かれています。不器用が爆発してる割には、あまりにもスラスラッと「ヒメノちゃん」と呼んでいるので、浮かれすぎてて気づいていないか、心の中で恥ずかしさが消えてなくなるほどに連呼していたのか、いずれにしても「思春期だねえ……(笑)」と見守りたくなります。

 精神年齢ローティーンのやり取りなど、飽きるほど見て来たであろうヒメノ様は、全く興味なさそうで、顔どころか体の一部さえも向いていない。
 セバスチャンが何かと交換するのはどうかとヒメノ様に提案する。メイドが持ってきたお茶菓子の盛合せに花を添える手つき、メイドに指示を出す仕草、どれをとってもジェントルでステキ。
 しかしヒメノ様は「イヤ。この国の全部が私のお気に入りだもの」と即座にセバスチャンの提案を却下する。
「言うことを聞かないと、ラクレスに突き出すからね、指名手配犯さん♡」
 にっこり笑うヒメノ様は、ギラの指名手配書を見せる。つまりギラは、国際指名手配犯となってしまったのだ。昨日の今日だぞ、ラクレス様仕事早過ぎる。

 指名手配書を見て、逆に元気づくギラ。早速ラクレスの元へ突き出せとわめく。「我こそは、那由他の罪を犯した邪悪の王!放っておけば、あらゆる悪事を働いてやろう!」
 ヒメノ様が戸惑い、セバスチャンに小声で何を言っているのか分からないと助けを求める。メイドたちも怪訝な顔でギラを見上げている。いぶかしみながら、セバスチャンがヒメノ様に、むしろ捕まりたがっているようだと答える。

 ギラが不意に言い出す。「おい、レインボージュルリラはあるか?」
 何それ?と軽く流すヒメノ様。ティーカップを提げさせ、お菓子の盛合せを目の前に置かせる。ギラ本人にはかけらも興味がないので仕方がない。
 ギラはギラで、ヒメノ様に説明するというより、その時に返ったようにうっとりとした顔と声で語る。「食べれば天にも昇る、究極のごちそう」
 ヒメノ様の表情が変わる。ギラが、レインボージュルリラをよこせば、クワゴンに相談してやってもいい、と高らかに告げる。空中にいるだけに。
 一瞬考えて、ヒメノ様が「ついてらっしゃい」と立ち上がる。ギラは吊り下げられたまま「どうやって⁉」と全身でもがく。ここまでのギラ、ツッコミが全部正解である。ヒメノ様の後に続くセバスチャン。ヒメノ様に帰っていいと言われてしまったヤンマ君は、ギラを見ながら「断る!!」と言ってスキップしながら後を追う。誰もギラの縄を解く気がない。「だから僕は⁉」ギラの叫び声だけがむなしく響く。

 まずはヒメノ様のその、文字通り以上の美しさと愛らしさから。ギラと真向かう場面など、もはや美の暴力(笑)。何で何ともないんだ、ギラ。ちょっと心配になります。効果が抜群すぎるヤンマ君も大概だけど。
 多分いろんな方が言っているでしょうが、私も言いたい。何故、日本の創作において執事の名前に〈セバスチャン〉を使いがちなのか。人とは思えないほど料理から死神の相手までできる黒い万能執事、日本有数の財閥のお嬢様のピンチに出動するために秘かに変身システムを作り上げる執事etc……彼らのルーツは何の誰なんだろうか(←自分で調べる気はない)

地帝国バグナラクの目的

 地帝国・バグナラク。暗闇の中で燃えるかがり火を、力いっぱい横殴りにするデズナラク8世。脇に控えるカメジムと、たくさんのサナギムたち。デズナラク8世が語りかける。
「人類を殺せ。己が死すとも殺せ」
 王の言葉に「ガイ・ガイ・チュー!」と盛り上がるサナギムたち。このサナギムたちはなかなかガラが悪く、壁があるのに発砲している奴がいる。
 カメジムが前に出て続ける。「100人死んでも、101人殺せば問題なし!」キレのある手振りを交えて語り、普段よりも大きめにウフフと笑う。戦いを前にさすがの彼も高揚しているのかと初見時には思ったけど、いろいろ考え合わせたらこれもまた行間が深くて、うわあああってなってます。

「死を恐れるな。チキューの秘宝、三大守護神を手にし、チキューを我らが埋め尽くすまで」
 デズナラク8世の言葉に合わせるように、激しく燃えるかがり火。その火の粉が上がる先には、天井に描かれた壁画がある。その壁画もまた劣化して色味こそほぼ失われているが、シュゴッダムの王の間の天井壁画と同じ絵のように見える。

 デズナラク8世の前に、1体の怪ジームが進み出る。「俺がヤツらを汚しつくしてやる」球状のものを転がしながら現れたということは、フンコロガシか……美の国にフンコロガシ!えげつないな!あと声が渋カッコいい。
 アレを食わせろ、と言って体を起こした怪ジーム=フンジーム……あれ、なんかおかしいぞ、フンコロガシのお尻が上になって……あれえ?

 何のことか察したカメジムが「巨大化ですか?容赦ないですねえ」と言って背を向けて笑う。意外にお下劣だなお前、ホントそういうの良くないぞ!
 振り返ったカメジムが、その場にいた全員に告げる。「進軍先は、美と医療の国・イシャバーナ!」
 地上に壁、天井に群がるサナギムたちが「ガイ・ガイ・チュー!」と叫び、銃をぶっ放す。だから、跳弾するから危ないって!
 一番奥のひときわ高い壇の上で、仁王立ちしているデズナラク8世。

 さて、初出の地帝国・バグナラクの王の間。数々の特撮番組を見てきた大きいお友だちには、「○〇の△△」が脳裏をよぎったことと思います。今回も登場です。イエーイ!そしていつも関係者の皆様ありがとうございます!
 王の間、と言っていいのかどうかと思うほどに、かがり火以外は何もない。玉座となるべき椅子すらありません。
 それはそれとして、デズナラクが言う秘宝とは、3大守護神、つまり3体のシュゴッドです。映像を一時停止してみると、まだ見かけていないバッタとカブトムシ……あともう1体の絵が絶妙に分かりにくい!知らなかったら絶対分かんない!制作サイド、情報コントロール上手すぎる……。
 要は、現状のバグナラク側の主目的と、そのために解決すべき喫緊の課題が示されています。一方の人類側は「ほぼ」誰も知らず、「ほぼ」無策。
 あ、なんかヴアアアアアーーーーって叫びたくなった……。

ヒメノ様のわがまま視察

 イシャバーナ。国内の視察に出かけたヒメノ様は、多くの民に囲ま,れて、プレゼント攻撃を受けていた。それらを一つ一つ丁寧に笑顔と感謝の言葉を添えて受け取るヒメノ様。
 そこへ一人の民が駆け寄ってくるが、うっかり水たまりにはまって泥水を飛ばしてしまい、ヒメノ様のために敷かれたレッドならぬイエローカーペットを汚してしまう。
 呼吸を止めて一秒、額に手を当てて後ろへと倒れるヒメノ様。従者たちが口々にヒメノ様の名を呼ぶ。セバスチャンを含むそばにいた従者たちがもちろんしっかりと支える。そのままの体勢でヒメノ様が嘆く。
「私に、この汚れた道を歩けと……?」
 すると、セバスチャンがすぐにきれいにすると言いながら胸ポケットからチーフを引き出し、ヒメノ様から離れる。突然の展開についてきたヤンマ君が驚きの声を上げる。
 セバスチャンは手をつきひざをついて、チーフで丁寧に汚れを取り始めた。メイド長らしき女性が心配そうに見守っていると、ヒメノ様が不意にパチッと目を開く。「キレイ!」視線の先には、なだらかな丘に広がる花畑。
 急に元気になって歩を進めたヒメノ様は、満面の笑みであそこを花畑にしたのは正解だったと喜ぶ。道をきれいにし終えたセバスチャンが立ち上がり、どこか無念そうな口ぶりで説明をする。昨日に言われて一晩で用意したので、アレが限界だった、と。十分ステキな花畑よ?一晩でできるだけですごいわよ?ていうか昨日ってあれ?アレ?

 イシャバーナの民から一歩離れて見ていたギラとヤンマ君。ギラは気に食わんとしかめっ面を作る。「無理難題を強いる王に民がついていくものか」
 ヤンマ君はいつの間にか、一輪のカーネーションを手にしている。自分も周囲をぶん回す癖があるヤンマ君はギラの言葉を鼻で嗤う。「強さとカリスマ性がありゃ、何したっていいんだよ。ヒメノちゃんには、それがある」
 ヤンマ君、焼き切れてるだけじゃないな、熱で沸いてんな脳全体が!

 絵の構図を取るように、両手で枠を作って辺り一帯を見ていたヒメノ様が、ある場所で動きを止める。キレイな花畑の前に、壊れないのが不思議なほどの古い家がある。
 ヒメノ様が「あの家どけて」と可愛く命じ……お願いする。セバスチャンが「家はどきません」と飄々と応じる。ヒメノ様がさらに「じゃあ壊して」とお願いする。さすがのセバスチャンも、ヒメノ様の顔を見返す。
 我慢できなくなったギラが、民の生活を蹂躙するのかと憤りと共に割り込む。振り返るヒメノ様とセバスチャンだが、ギラだったので無視して前を向く。ヒメノ様は笑顔で人差し指をくるんと動かして家を指す。反対に渋い顔をしてその場を離れるセバスチャン。ここぞとばかりにヤンマ君も前に進み出て、そんなことするわけないだろとギラに言う。ちょっと熱が下がってきたようだ。ギラの表情は厳しいままだ。

 古い家の前まで行ったセバスチャンは、家の入口の階段に腰かけていた住人らしき親子二人に遠くへ行くように指示を出す。急いでその場を離れる母と子。
 セバスチャンが戻ってきて、ヒメノ様に何とか分かってもらったと報告する。ヒメノ様の前には、いつの間にか謎の装置が置かれている。側面の上下をぐるりと回るオレンジと黄色の縞柄の帯。装置の上部にはイシャバーナとは思えぬほどに安っぽいハンドルがついている。昭和のバラエティ番組でしか見たことない起爆装置に見える……え?ちょっと?壊すってそういうことなの?
 実に愛らしく「せーの、ドン!」と掛け声をかけて、ヒメノ様がハンドルを握って思いっきり下に押す。機械音がして、家が爆発する!オイ!
 多すぎじゃない?というほどの炎の中で、古いとはいえ家一軒が消える。結果に「完璧♡」と満足するヒメノ様。セバスチャンは意見が異なるのか、口ひげをいじる。
 さっきまで吹っ飛んでいた理性が、爆風に乗って帰ってきたようで、ヤンマ君は力なく笑うと「やっぱないわ、帰るぞ」とギラに声をかけ、手にしていた花まで渡してしまう。
 しかしギラは、レインボージュルリラを食べてからでも遅くないと言い、ヒメノ様に流し目を送りながら、ヤンマ君から渡された花にフッと息を吹きかける。ヒメノ様の美の暴力が今ごろ効いてきたのかな……?

 ヒメノ様の嬉し楽しい国内視察の一コマ、なかなか強烈でした。まさかイシャバーナに火薬田ド○がいるとは思わなかったわ~。そして多分これが通常運転なのか、見守っていたイシャバーナの民たちは、爆音に驚くけれど、家を吹っ飛ばすこと自体には何の驚きもない様子でした。これだけ見ると、確かに貧しい民だったヤンマ君には、受け入れがたいことかもしれません。

 シュゴッダム、王の間。玉座で上を見つめるラクレス様。その眼が見ているのは、天井の壁画か別のものか。
 重い靴音を耳にし、ラクレス様が玉座に座り直す。「遅いぞ」と鋭い視線を向けた先。チキュー上でも地球上でもただ一人しか着こなせない、ド派手な衣装のあの殿が、ゆったりと歩み寄ってくる。

 ラクレス様が3話で天井見つめてるとか、あ、もう何か涙出そう……。私がおかしいんじゃない、東映公式が全部悪いんだ、公式YouTubeで無料配信中のスピンオフドラマ『ラクレス王の秘密』が素晴らしすぎるから(号泣)

レインボージュルリラとギラ

 イシャバーナ。広い庭で、クワゴンとゴッドカマキリが向かい合っている。クワゴンは関心があって、ちょっとつついてくる。するとカマキリは「気安く触らないでね、ボーヤ」という風にちょっと強めにさばく。シュンとするクワゴン。シュゴッド同士のやり取りも面白い。

 レストランの中。テーブルにはヒメノ様とギラとヤンマ君が着席し、少し離れた場所でセバスチャンが控えている。ギラたちの前に、美しい琥珀色のスープが供される。ヒメノ様がイシャバーナ一番のシェフに作らせたレインボージュルリラであるという。
 いよいよ実食。「いただこう」と言って、ギラはきれいな姿勢を保ち、作法通りにスープ用のスプーンを手にする。ヤンマ君は椅子の座面に足を乗せ、膝の上に肘を乗せているので、どうしても姿勢が悪い。
 スープ皿を左手で持ったヤンマ君は、そのまま直接口を付けて、グイグイと飲み干す。あっという間に空になった皿をテーブルに置く。「ごっそさん」と言って、ナプキンを手に取り、指先と口を拭って乱暴に丸めてテーブルの真ん中へと放り投げる。
 ヤンマ君のふるまいを見ていたヒメノ様がひと言「汚らわしい……」と呟く。セバスチャンが下を向く。ヤンマ君がややケンカ腰になる。気まずい雰囲気の中、ヒメノ様とセバスチャンがギラへと視線を送る。
 ギラは静かにスープをすくい、スプーンを口元に運ぶ。優雅にスプーンを動かし、スープを口に含む。マナーを守るのはもちろん、エレガントな仕草に、さすがのヒメノ様も感心する。セバスチャンも笑顔である。

 美味だ、と味の感想を最初に言う所がギラらしい。その言葉にヒメノ様は微笑み、シェフやレストランのスタッフ一同は笑みを浮かべて一礼する。
 ギラが続ける。「しかし、コレはレインボージュルリラではない」
 場の空気が凍り付く。ヒメノ様がこの上なく厳しい口調で「セバス?」と呼ぶ。セバスチャンが必死に謝り、ギラの話を基に忠実に再現させたつもりだと説明する。
 シェフの腕前、セバスチャンの仕事ぶりは分かっているので、そちらには何も言わず、ヒメノ様はギラを見据え、そもそも実在するのかと詰問する。

 ギラは自信たっぷりに答える。幼いころに食べたきりだが、忘れるはずがない、と。話しながらギラは幼き日の記憶をたどる。自分はレインボージュルリラを小童どもに味わわせるため、世界中を支配するのだと宣言する。
 幼いころのギラの記憶の映像。その食べ物は、やや硬めのゼリー状で、器の中で光を受けて宝石のようにきらめいている。スプーンで一口すくって食べたギラは、近くにいた誰かに嬉しそうに話しかけている。
 それにしても彼が身にまとう衣装は、およそ児童養護園の子どもが着るにはどうにも高級感があるような……?
 私もそうですが、ほとんどの方は幼児のころの記憶は断片的なものだと思います。ギラが事細かに思い出せなくても当たり前です。あと一つ二つきっかけがないと、どこで食べたとか誰と食べたとか思い出せるわけがないのです……行間深いなあ(悶絶)!!!
 それにしても何なんだろうレインボージュルリラって……。

 席を立ったヤンマ君はヒメノ様のそばで立ち止まる。「ガキどもがレインボージュルリラを食える平和な世界を作るために、王様になるってよ」と、ヒメノ様にも通じるようにギラの邪悪モード弁を翻訳する。帰るぞ、と告げて離れるヤンマ君。
 ご立派な指名手配さんね、と笑みを浮かべたヒメノ様は「でも」と言う。
 食事のために解放されていたギラの両手が、再びセバスチャンによって手錠を掛けられる。しかも今度は握りしめて離さない。振りほどこうとするギラと、ビクともしないセバスチャン。ヒメノ様いわく、クワゴンを渡さない限り解放はしない。
 待っていたヤンマ君に、ヒメノ様はあなたは帰っていいとあしらうが、正気に戻ったヤンマ君は自分もギラに用があるんだと反論し、後を追う。自分に色仕掛けは通用しないなどとうそぶくが、ヒメノ様が何もしなくても周囲が勝手に何かの仕掛けにかかってしまうし、ヤンマ君はもうかかった後なので手遅れである。
 ヤンマ君がいなくなると、それまで隠れていた鏡には、リタ様の姿が(何故にホラーっぽい効果音?)映っている。そしてどこかへ去るリタ様。

カーレとエッダ

 レストランの外。ギラと男の子がバイバイを交わしている。ヒメノ様たちご一行も外に出て来て、ヒメノ様が専用の人力車(!)に乗り込もうとした時。「おい女王!」と、どこであってもガラの悪い呼びかけが聞こえる。
 ヒメノ様たちが声のする方を見る。ガラの悪い声の男が訴える。絶対に直るというヒメノ様の手術を受けたのに、自分の娘は歩けないままで、娘の夢も未来もヒメノ様のせいで潰れた、と。男は車椅子を押していて、そこには10代と思しき女の子が座っている。女の子の表情は暗い。
 男はヒメノ様に向かって「お前は無能の道楽娘だ!」と叫びながら突進してくる。素早く前に出たメイド長が、男=カーレを止め……腕を取ってねじ伏せる。メイド長強い。
 ヒメノ様は男に何を言われても、男が何をされてもうろたえずに沈黙を保っていたが、女の子に目を向けるとそっと語りかける。「あなたはそれでいいの?」
 その隣でセバスチャンは、慣れた手つきで小切手帳とペンを取り出す。
 女の子は何度か深呼吸するが、結局何も言えずにうつむく。見守っていたヒメノ様は、人力車に乗り込む。
 
 セバスチャンがメイド長に腕を取られたままのカーレに近寄ると、ヒメノ様からの特別援助金だと言って小切手を渡す。むしり取るように受け取ったカーレは「金で解決できると思うなよ」と、どの口が言うのかなというセリフを吐き捨てる。絶対関係あると観ているチビッ子たちにも分かるように、カーレたちの後ろにはミシンの絵が描かれた立て看板がある。ミシンの絵が描いてあるなら仕立て屋なのだろう。カメラは立て看板がある家に近づく。家の出窓には、斜めに傾いた服をまとったマネキンと、アンティークな1台のミシン。一部始終を黙って見ているギラ。

 小切手を得て、今月も生き延びたと安堵するカーレ。女の子=エッダは下を向き、暗い表情のまま「良かった」とだけ呟く。カーレはエッダの足のおかげだと言い、情けないパパでゴメンなと娘を背中から抱きしめる。謝らないで、と父に告げたエッダは、しかし父を見ようとはしない。
 何というか、生々しさが痛い。

 当たり前だけど、どんな国にも色んな人がいます。医療側にミスも落ち度がなくても、患者によっては納得がいかず、訴訟を起こすというケースもないわけではないでしょう(日本のドラマでの医療訴訟は病院側が何かを隠蔽しているケースばっかりで、逆のパターンはなかなかお目にかからない)。
 エッダが足の治療を受けた理由はケガなのか病気なのか分かりませんが、ヒメノ様が自ら治療を担当するほどの重いものだったのでしょう。それ故に、父と子のそれぞれの心に現実以上の症状が現れ、生活も荒み、親子関係も歪に……って、日曜の朝から何を見せられてるんだ……。

夢も未来も、始まりは

 夜のフラピュタル城。陰影を醸す繊細なライトアップがイシャバーナらしいこだわり。
 城内。大きな木が、どの枝にもたくさんの花を咲かせている。桃か桜か。ライティングの加減か、全ての花が光り輝いている。輝く花から、輝く花弁が一枚、また一枚と舞い落ちていく。
 ギラはただ木の前に立ち、「美しいな」とつぶやき、見惚れている。

 ギラがいる場所から一段下がったテラスらしき場所のテーブルセットには、目いっぱいにくつろいで座るヤンマ君。セバスチャンがティーセットを持ってきたところで、ヤンマ君が彼を労いながら話しかける。
 ヒメノ様付きの執事を何年やってるのかと聞かれたセバスチャンは、紅茶を注ぎながら意外なことを打ち明ける。執事歴は3年で、実はまだ25歳なんだと。
 自分と同じくらいなのだと知り、ヤンマ君は驚いて身を起こす。どう見てもヨボヨボの老人だと疑うヤンマ君に、特殊メイクだとサラッと言うセバスチャン。執事っぽくしろとの命令でセバスチャンに改名させられたと話す彼の口調には、限りないヒメノ様への尊敬と信頼がこめられている。
 ヤンマ君も無茶苦茶だと苦笑いし、何でそんな超絶ワガママ女が王様やれているのか、とこぼす。ヤンマ君、人のこと言えないよ……。

 セバスチャンが説明しようとしたその時、メイド長が現れて、街にバグナラクが現れたと連絡に来る。ヒメノ様は、もうすでに街に向かったという。
 ジャケットを手に取り、立ち上がるヤンマ君。話が聞こえたのか、いつの間にかギラも近くにいて、連れて行け、と言う。
 ギラをじっと見つめ、承知しましたと答えたセバスチャンは、オウジャカリバーをメイドから受け取り、静かに語る。二人はまだ、ヒメノ様の全てをご覧になっていない、と。

 イシャバーナの街。逃げ惑う人々が、悲鳴を上げる。巨大なフンコロガシが所かまわず壊している。サナギムも暴れまわっている気がするが、暗くて良く見えない!
 街へ駆けつけたヒメノ様の姿を見て、動けずにいた人々が安心したように彼女の名前を呼ぶ。そこへギラやヤンマ君、オウジャカリバーを捧げ持ったセバスチャンも到着する。
 ヒメノ様に呼ばれたセバスチャンが、彼女の元へ駆け寄る。ギラとヤンマ君は一足先に変身し、サナギムたちを次から次へとやっつける!

 夜明け前、徐々に明るくなって、周囲が見えやすくなってくる。様々な音や声が飛び交う中で、カーレの「娘が、まだ娘が……!」と言う声が聞こえる。避難を促そうとするメイドたちに抗い、娘を探しに行こうとしていたのだ。別の場所では、エッダが物陰に座り込んでいる。みんな自分のことで手いっぱいで、彼女を助ける余裕はない。

 巨大化したフンジームは立ち上がって、フンコロガシの形のパーツのお腹側から、何だか良く分からない紫の球状のものをそこら中に飛ばしている。
 何を言っているのか良く分からない?私もです。本編を見てください。それしか言えない……(東映の公式番組サイトで、怪ジームのデザイン画が公開されていた気がする……)

 王鎧武装をせずに周囲の状況を冷静に把握していたヒメノ様は、エッダを見つけ出す。彼女の方に向けてフンジームが何とも言えない紫色っぽい丸いものを飛ばそうとしているのを見て、彼女の方へと駆けていく。一瞬早くヒメノ様が間に合いはしたが、連れて逃げる余裕までは無く、ヒメノ様はエッダをかばうように抱きしめる。
 直撃はしなかったものの、近くで弾けたせいか、大量の土と水が飛び散り、ヒメノ様の全身に降り注ぐ。というか、直撃はなんかイヤなので、していたとしてもしていないことにしたい……。

 辺りの様子が落ち着くと、ヒメノ様はエッダの無事を確かめる。近くでは破壊された何かが燃えて、炎を上げている。エッダは自分のことより、ヒメノ様のお召し物が汚れたことを気にかける。
 しかしヒメノ様は言い放つ。
「こんなの新しく作ればいい。でもあなたは、そうはいかないでしょ?」
 美と医療の国の女王は、新しく作れるものと作れないものを知っている。

 暁が近づく中、見つめ合うヒメノ様とエッダ。そこへ、やってくるサナギムたち。ああもう本当にお邪魔虫!
 ヒメノ様がエッダに走って逃げろと命じる。自分が治療したんだから治っている、と。それでも迷う彼女に、もっとワガママになれと言うヒメノ様。ワガママなんて言ったこともしたこともなさそうなエッダは戸惑う。自らの足に触れる手は、自らの心をも覆っているようだ。
「あなたの望みは、誰でもないあなたにしかかなえられない。夢も、未来も、ワガママから始まるの」
 エッダに背を向けて立ち上がったヒメノ様は、わずかに振り返る。
「そして世界を、あなたの思うままにしてやりなさい」
 再び前を見据えた凛々しい後ろ姿に、立ち昇る炎が被って、まるでヒメノ様の心の炎を現しているように見える。こういう演出、大好物です。
 ヒメノ様の後ろ姿を、顔を上げて強く見つめるエッダ。昼の光でも払えなかった心の夜が、明けようとしている。

変身、カマキリオージャー!

 逃げ惑うイシャバーナの人々。瓦礫が転がる街で、暴れるサナギムたち。
「我が名はイシャバーナの女王、ヒメノ・ラン!」
 名乗る声には、王たる威厳と風格がある。サナギムたちを見据えたヒメノ様は、セバスチャンが捧げ持つ自らのオウジャカリバーを手に取る。
「ただ我がままに、我が道を行く!」
 手にした剣の切っ先が、まっすぐにサナギムたちに向けられる。

 夜明け直前の逆光に沈むフラピュタル城。雲間から太陽が現れ、夜明けを告げる鐘が鳴る。城が曙光に染まる。

 イシャバーナの街。昇る太陽の光が、街に広がり、ヒメノ様の構えたオウジャカリバーの切っ先から刀身、そしてヒメノ様を照らし出す。
「散ることを知らぬ花、その気高きを知るがよい!」
 ヒメノ様がフェンシングのように、オウジャカリバーを構える。ヒメノ様の少し後ろに控えるセバスチャン。ヒメノ様の気高さを現すかのように、背後が輝きに満ちている。目が、目がぁぁぁ……!(←まさか2話連続とは)

 いよいよ、ヒメノ様=カマキリオージャーの王鎧武装フルバージョン!
 カマキリの鎌の形のパーツを引き、オウジャカリバーを上に掲げつつ優雅に1回転。そこから次々とテンポよく他のパーツを操作し、両手を体の前で交差させる。「王鎧武装!」と言うと、クワガタの角のレバーを引く。
 しっかりじっくり見たい方は、本編の他に東映公式のユーチューブで「変身講座」なるものを無料配信しているので、そちらをご覧あれ。
 
 カマキリオージャーに向かい、駆け寄るサナギムたち。攻撃で荒らされて落ちた花や植木鉢など、気にかけることなく踏んづけたりぶつかったり。
 迎え撃つカマキリオージャー、宙に高く飛ぶと、サナギムたちの中に降り立って鋭く剣を振るい、瞬く間に次々と斬り付ける!サナギムたちが取り囲むが、しなやかに身を反らせてかわすと、身を起こす反動を利用して、剣を一閃させ、囲んでいたサナギムたちを一掃!何て華麗、何て容赦がない!

 離れた場所にいたサナギムたちが銃撃してくると、カマキリオージャーはまたしても空中へと高く舞い上がり、体を寝かせるようにくるくると回転させて弾幕を避ける。イシャバーナの全てを愛する彼女は、着地する時だって花を踏むことはない。それが地面に落ちてしまった花であっても。
 オウジャカリバーとキングスウェポンを二刀流のように使い、斬撃を放つ。武器から放たれたエネルギーが、サナギムたちを倒す。

 朝の光の中、ヒメノ様が戦う姿を見ていたエッダが、意を決して立ち上がり、笑顔で告げる。「私、ヒメノ様みたいになりたいです!」
 彼女の言葉に振り向いたヒメノ様が言う。「なんって我がまま!私には敵わないけど」
 声を出して笑うエッダ。昨日とは別人のような明るい顔をしている。 離れた場所で戦っていたクワガタオージャーが、二人の様子を目にして「面白い」と何故か邪悪の王モードでつぶやく。それまでサナギムを倒していたトンボオージャーも二人の方を向く。

女王様と機関銃

 巨大フンジームが相も変わらず良く分からないものをそこら中にバラまいて破壊活動をしている。見上げる3人。カマキリオージャーがクワガタオージャーに向けて「ゴッドクワガタをちょうだい」と迫る。
「この国の全部が私のお気に入りなの。誰も死なせない」そう言って剣を構える姿は、紛れもなく民を思う王そのものである。

 邪悪()に高笑いするクワガタオージャーは「貴様のわがままにつきあってやろう!」とオウジャカリバーを天に向ける。
 クワガタオージャーが一声吠え、合体する。2話と同様、すでに王様たちはシュゴッドに乗った状態だが、2話とはアングルだったり見せるポイントが変わっていたりする。凝ってる。カッコいい。

 降り立つキングオージャー。クワガタオージャーが真っ先に言う。「見ろ、でかいフンだぞ!」……ピュアとかそういう問題じゃないな、コレ。
 「んなことどうでもいいだろ、マカロニボーズ!」と何故かイタリアン寄りに罵倒するトンボオージャー。でも何か分かる。ギラはマカロニ。

 クワガタオージャーが言わずにはいられないのも分かるほど、大きなフンを転がしながら突進してくるフンジーム。あの勢いであの大きさのものが当たったら確かにダメージがスゴイし、それ以上に心理的なものが……。
 前を見ろ、と呼びかけるカマキリオージャーの指示で、キングオージャーがジャンプし、フンを避けて着地すると、そのままフンジームに攻撃!何度か斬り付けるが、フンジームのフンコロガシパーツの甲羅が……要は背中が頑丈で、ほとんどダメージがない。逆にフンジームにはねのけられて、せっかく避けた巨大なフンに叩きつけられる始末。あああ……。

 思いのほか手ごわいせいか、フンに叩きつけられたせいか「もう嫌、美しくない!」とおカンムリなカマキリオージャーは、ふとあるものを目にする。それは、街の中をのんびりと進むカタツムリ型シュゴッド。愛らしい形と愛嬌のあるたたずまいに一瞬で虜になった彼女は、カタツムリ型シュゴッドを呼び寄せる。

 カマキリオージャーの呼びかけに、うなずくように目玉を振ったカタツムリ(以下省略)は、キュピンと目を光らせると、それまでとは一転、超高速で動き出し、自らキングオージャーの手にくっつく。着いたと同時に大量の銃弾が発射され、その勢いにキングオージャーがよろめく!殻のパーツに銃口っぽいものがついていたから何となく予想はついていたけど、それにしても危ないな!

 銃口をフンジームに向けるキングオージャー。カマキリオージャーに謎のスイッチが入り、彼女は高笑いしながら右に左にマシンガンを揺らす。クワガタオージャーとトンボオージャーはコクピットの中で同じように右に左に揺らされている。
 この戦闘シーンでヒメノ様のイメージソングが流れているが、可愛らしい曲調と歌声が、何故かマッチしている。何故なんだ?
 やっぱり美女といったら機関銃だよなあ……。セーラー服か青き衣かetc(←そういうことだったのかと今気づいた)、好みにお任せします。

 もはやフンジームなんかそっちのけでマシンガンを放ちつつ華麗に舞うキングオージャー。ヒメノ様=カマキリオージャーの高笑いも止まらない。
 そんなキングオージャーもといヒメノ様を熱く応援するセバスチャンや従者たち、イシャバーナの民たち。
 しかし銃弾の中の一発が湖に向かってしまい、大きく水しぶきが上がる。タイミングよくセバスチャンが傘をさす。傘から遠くて濡れた人もいる。

 フンジーム、というよりフンに撃ち込まれ続ける弾丸。やがてフンの破片が辺りに砕け跳び、陰にいたフンジームも脇へと逃げる。後に残ったのは、なんと巨大な花の彫刻!美の国の女王とはいえ、どんな技術なの⁉
 「スッキリした♡」と仕上がり(というより、機銃をぶっ放した行為そのものによる快感では?)に満足したカマキリオージャー、カタツムリにお礼を言うとキングオージャーから分離する。ゆっくりと傾き、返事とも悲鳴ともつかぬ鳴き声を上げながら落ちていくカタツムリ。幸運を祈る。

 イシャバーナの空高く、フンジームが飛び上がる。カマキリオージャーがトンボオージャーに飛べと指示を出す。文句を言いつつ、空を飛ぶように操作するトンボオージャー。
 カマキリオージャーが、凛々しく「執刀する!」と宣言する。空を飛んだキングオージャーの右足のパーツとなっているゴッドカマキリが、前足の鎌を振る。飛んできた勢いも利用して、キングオージャーがフンジームに右足でハイキック!そのまま回転をして遠心力も加えてもう一蹴り!その強い衝撃は、フンジームの体を通り抜けていく!
 強烈な攻撃でよろめくフンジームのはるか頭上までキングオージャーが飛び上がる。コクピットの中で、高く右足を振り上げるカマキリオージャー。気合と共にカマキリオージャーが足を一直線に振り下ろすと、連動してキングオージャーもフンジームに必殺のかかと落としを炸裂させる!即座に爆発するフンジーム!近くの街へと着地するキングオージャー。衝撃で大きく舞い上がる土煙!
 コクピットの中、美しい立ち姿のカマキリオージャー。

 対フンジーム戦について。美女と機関銃はセットだとか、機関銃は長尺使ってナンボだとか、今回もなかなかにマニアックです。初見視聴時に一緒に見ていた我が子に「何でかかと落としなの?」と聞かれ、その時は「美女のキメ技はかかと落としなんだよ」と真顔で答えてしまいました。よくよく考えてみると、某海賊マンガの某海賊団の某コックが、料理人が手をケガするわけにはいかないという理由で足を使った技で敵を倒すように、医者であるヒメノ様が手をケガするわけにはいかないので、剣やキングスウェポンを使用できない状況では、足技を使うのでしょう。手よりも足の方がリーチが長く、筋肉量も多いので、与えられるダメージも大きいですし。
 機関銃でフンから花の彫刻を生み出した場面では「どんなものからでも美は生み出せる」「美は美を見出す他者がいてこそ美となる」というようなことを考えました。制作サイドがそこまで意図していたかは分かりませんが、良い作品、面白い作品には気づきのきっかけがたくさんありますね。

襲撃、ゴッドカブト

 シュゴッダム・王の間。玉座に座るラクレス様。他の王たち専用の席がある円状の壇の真ん中に立って相対するは、奇抜な色と柄、背中にはトウフ国の紋章が白く染め抜かれた上掛けをまとった大柄の男。そう、王殿カグラギである。
 イシャバーナでギラが目撃された、とのラクレス様の言葉に、大仰に驚いて見せたカグラギ殿は、それならなおのこと自分に任せてほしい、と頭を下げて胡散臭いほどに下手に出る。
 淡々とラクレス様が「できるんだな?」と問うと、食い気味に「ハイ!」と応じるカグラギ殿。ギラのシュゴッドを操る能力は厄介だが、秘策があると言う。
 彼の言葉にかすかに表情を変えたようなラクレス様は、控えていたドゥーガさんに目配せをし、許可を出すようにうなずく。
 主の指示を受けたドゥーガさんが、服のポケットから楕円形の小箱を取り出しつつ、重々しくカグラギ殿に歩み寄る。
 カグラキ殿の前に立ったドゥーガさんは、「失敗は許されませんよ」と彼の目を見据える。手のひらに載せた小箱のフタを開ける。中には、紫色の宝石のようなものが収められている。
 与えられたものを目にしたカグラギ殿が、怪しく笑みを浮かべる。

 イシャバーナ。町の一角では変身を解いたヒメノ様が、お召替えのために専用の着替えボックスに入る。メイドたちがそばで目を光らせる。よく見ると、メイドたちもケガをしていたり服が汚れていたりしている。特に触れられていないのだが、ヒメノ様付きの従者たちは、親衛隊と言うか近衛兵でもあるので、だからメイド長はめっちゃ強い。
 「仕立て直して」のお言葉とともに、着替えボックスの中からぬっと腕だけが出てくる。その手には先ほどまでお召しになっていたドレス。ドレスを受け取り「かしこまりました」と一礼したセバスチャンは、ためらいなく歩き出す。

 仕立て屋の前。破壊されて転がる大小の瓦礫。医療班が出動していて、人々の治療をしている。そこには、カーレとエッダの親子もいる。
 地面に膝をついたカーレは、立っているエッダの姿を見て「お前、歩けたのか……?」と驚きを隠せない。
「パパ、私、自分の足で歩きたいの」
 父の目を見ながら、エッダがしっかりとした声で告げる。自分の人生を自分で生きていきたい、という強い思いがにじんでいる。カーレは彼女に謝り、これからは自分で金を稼ぐと決意を語る。
 そこへヒメノ様のドレスを持ったセバスチャンが現れ、ドレスの仕立て直しをカーレに依頼する。カーレはセバスチャンの前に歩み寄り、精一杯働くと言ってドレスを受け取る。エッダも歩み寄り、親子は顔を見合わせて穏やかに微笑む。
 カーレとセバスチャンのやり取りが聞こえたのかどうか、着替えボックスの中でヒメノ様も優しく微笑む。

 着替えボックスの近くに姿を現したギラとヤンマ君に、セバスチャンが声をかける。「ヒメノ様のこと、分かっていただけましたか?」
 ギラとヤンマ君が辺りに目を向ける。ギラが(何故か若干邪悪の王モードで)語る。イシャバーナは、美しさで人の心を豊かにする、と。
 彼が思い浮かべたのは、フラピュタル城で見た大きな花の木と、家を吹き飛ばされた男の子の嬉しそうに「きれいな新しいお家に住める」と話す姿。
 そして、シュゴッダムがバグナラクに襲撃された時、すでに民を思う姿を見せられていたことに気付いたのだ、と。
「あの女はわがままだが、それに救われる者もいるのだな」腑に落ちた様子のギラの言葉に、メイドたちが大きくうなずく。
 ヤンマ君も同意するように、いつものヤンマ君らしい笑顔を見せる。お帰り、総長!

 二人の様子に満足の笑みを浮かべるセバスチャン。しかし、ギラである。
 ギラは唐突に着替えボックスに向けて突進すると、メイドたちに止められながらも「やはり貴様、オレ様の仲間になれー!」と叫ぶ。唖然とするヤンマ君。ギラの後ろで戸惑うセバスチャン。
 着替えボックスのカーテンが開く。「黙って」とギラに向けて言いながら出てきたヒメノ様は、普段と違う装いになっている。おろしていた金髪をあげ、王の威厳を備えつつも動きやすさを重視したシンプルなデザインの上衣とショートパンツをまとい、低いヒールの靴を履き、両手にはメカニカルなグローブをはめ、顔にはゴーグルを装着している。
 自分が治療するから、けが人は全て城に連れて行くようにと命じるヒメノ様、その後ろについて行く医療班の面々と、クラゲ型の治療機械。絶対的な安心感がスゴイ絵面である。助かる気しかしない。

 クワゴンが不穏な鳴き声を上げる。クワゴンの様子に、ギラがそちらを見やる。別の方角を見ていたヤンマ君が「何でゴッドカブトが?」目を見張る。その視線の先には、空に浮くカブトムシ型のシュゴッド。
 ゴッドカブトは、角の先の銃口にエネルギーを収束させる。身構えるギラたち。その場を飛び立つクワゴン。狙いはクワゴンだったようだが一瞬遅く、ゴッドカブトの砲撃はイシャバーナの街の一角に当たり、そこから煙が上がる。物騒!
 空へ舞い上がったクワゴンが、ゴッドカブトに一発体当たりをくらわす。空中をよろめくゴッドカブト。
 なんと、ここで、次回に続く!

 第3話、ヒメノ様の女王様としての日常が描かれた回でした。表面上は想像の斜め上を行く美貌の超絶ワガママ女王様ですが、彼女の言葉も行動も表に見えていること以上に深い思慮と信念から来ています。「イシャバーナの全てがお気に入りだ」という言葉には、民はもちろん、国中の一木一草ことごとく大切にしたいという思いが込められています。全てが大切なのですから、病やケガに苦しむ人がいれば治療し、自助努力を越えて助けが必要な場合は支援をし、一歩踏み出す勇気が欲しいのなら、何よりも確かな支えとなる言葉を伝えます。
 医者であるヒメノ様は、多分ギラやヤンマ君とは違う絶望や苦悩を何度も味わったはずです。それを一切外に見せずに、常に美しく愛らしく振舞うのは、なかなかの精神力が必要です。誰かを救うため、誰かを守るために必要なことを身に付け続けているヒメノ様は、やはり気高い女王なのです。
 さて、今回は〈イシャバーナの女王〉をギラやヤンマ君、視聴者が知っただけです。まだ「ヒメノ・ラン」という女性を知ったわけではありません。ギラの仲間になれという誘いも全力で無視されました。ヒメノ様が仲間になってもいいと思う日が来るのかどうか。

 サブタイトルについて。「我がまま」と言う言葉を、これほどポジティブに表現した作品を初めて見ました。自己中心的とイコールで扱われがちな言葉ですし、キレイに飾られがちな「自分の人生は自分のもの」とくっつけ、さらにスケール大きく「世界を思うままにしてやりなさい」と展開されたのを聞いた時は、鳥肌が立ちました。本当に言葉の使い方、意味の持たせ方が天才的です。
 ※私の方で、どの場面において「我がまま」か「わがまま」か「ワガママ」か、どの表記が適しているのか分からなくなって混在しています。

 そしていよいよ本格的にラクレス様の陰謀が動き出します。
 表向きはンコソパで捕まえ損ねたギラを国際指名手配犯とすることで、王様自身の意志とは関係なく情報を格段に集めやすくなります。そして、他の王たちとはまたひと味違う、いかにも曲者なカグラギ殿と結ぶことで、ラクレス様の目的がさらに見えにくくなります。しかしカグラギ殿が大人しくラクレス様の陰謀に協力すると思いますか?いいえ思えませんねえ!
 次回、目くるめく陰謀の渦の中で、ギラは生き残ることはできるか?(絶対にそんな話じゃない)

 

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