細胞を知る:令和元年度 医薬基盤・健康・栄養研究所 一般公開から学んだこと その04

2019年11月09日、私は医薬基盤・健康・栄養研究所(以下同研究所)を訪れ、一般客として令和元年度 医薬基盤・健康・栄養研究所 一般公開(以下同一般公開)に参加した(1,2)。

同研究所培養資源研究室(以下同研究室)は以下の研究を行っている(3)。
1. JCRB(Japanese Collection of Research Bioresources)細胞バンクとして疾患研究や創薬研究を支える重要細胞資源を収集し、一般細菌検査、マイコプラズマ感染検査、ウイルス検査、ヒト細胞認証試験、および、染色体検査などの厳しい品質管理を行って、こうした細胞資源を保存し、提供している。これらの品質検査の結果は細胞付加情報としてデータベース化して公開し、研究者を支援している。
2. 保有登録済細胞の品質管理のための、ウイルス検査法やマイコプラズマ検査法などの様々な品質管理法を開発している。また、細胞の特性解析技術を応用し、細胞付加情報の充実を図り研究者の研究支援している。
3. 細胞バンク事業で培った経験を生かして、マイコプラズマ汚染検査やヒト細胞認証試験に関する受託検査を実施しているだけでなく、細胞保護預かりなどの研究者の研究支援サービスも実施している。
4. ヒト組織バンクとして、国内の医療機関から提供されたヒト組織を保管し、研究者に分譲して創薬研究の推進を図っている。新鮮組織、凍結組織、固定組織、組織から調製された初代滑膜細胞・皮膚由来細胞等の研究用凍結細胞を取り揃えている。また、調製細胞に関して、性状検査の効率化を検討するとともに、研究利用に役立つ特徴的な性状を明らかにして、付加価値の充実を図っている。
5. 日本人の遺伝子多型解析等の研究に有用な約2,000人の「日本人由来のB細胞を不死化した細胞株」と「同細胞株から抽出されたDNA」を分譲している。特に約1,400人の健常人(一般集団)に由来するB細胞株のDNAは、疾病を持つ集団との比較のために貴重な対照試料として利用されている。

同一般公開の「20.いろいろなものを顕微鏡で見てみよう」で、同研究室は染色体の特徴(図01)を紹介するだけでなく、ヒト染色体(図02)とマウス染色体(図03)の標本も展示していた。

01.染色体って

図01.染色体ってどんなもの?。

03.ヒト染色体 1,000倍

図02.ヒト染色体 1,000倍。

ヒト染色体の形はX型である。体細胞における常染色体は44本で、性染色体は2本である。

04.マウス染色体 1,000倍

図03.マウス染色体 1,000倍。

マウス染色体の形はΛ型である。体細胞における常染色体は38本で、性染色体は2本である。

また、同一般公開の「19.ヴァーチャルリアリティー(VR、仮想現実)で人体の中を覗いてみよう」で、同研究室はVR技術を使って、人体の中に入り込み、その中の様子をのぞくVR体験を紹介した。なお、私はVR体験を受けずに、そのパネル類を見た。

最初に、同研究室は通常のパネルで、細胞の特徴(図04,05)を紹介した。

01.細胞って

図04.細胞ってどんなもの?。

02.動物の細胞

図05.動物の細胞と細胞の構造。

次に、VR体験パネルで、細胞のVR画像を紹介した(図06~09)。

画像6

図06.細胞膜と核(上)、ならびに、赤血球など(下)。

画像7

図07.腸の内側の絨毛・微絨毛(上)、ならびに、腸内細菌(下)。

画像8

図08.神経細胞(上)、ならびに、シナプス(下)。

08.染色体

図09.染色体(上)、ならびに、DNA(下)。

「20.いろいろなものを顕微鏡で見てみよう」と「19.ヴァーチャルリアリティー(VR、仮想現実)で人体の中を覗いてみよう」から、私は細胞や染色体に関することを改めて学んだ。これもまた非常に有意義であった。

なお、細胞を知るために必須な文献を以下に示す。

株式会社 講談社.“はたらく細胞 著者:清水茜”.月刊少年シリウス トップページ.http://shonen-sirius.com/series/sirius/saibou/,(参照2020年03月08日).
本著は初学者向けの、人体、特に細胞を知るための良作漫画である。なお、本著を読破後は、なるべくブルーバックスの生物学関連の書籍、特に以下のものを読むことをお勧めする。
本著は主に、免疫系、感染症、腸内細菌、および、がんに言及している。

デイヴィッド・サダヴァ他 著,石崎 泰樹・丸山敬 監訳・翻訳.カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書:第1巻 細胞生物学.第7刷,株式会社 講談社,2010年08月19日,318 p.(ブルーバックス).
本著は、細胞と言う存在を学ぶ際に極めて役立つ良書である。

デイヴィッド・サダヴァ他 著,石崎 泰樹・丸山敬 監訳・翻訳.カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書:第2巻 分子遺伝学.第3刷,株式会社 講談社,2010年06月23日,424 p.(ブルーバックス).
本著は、遺伝学を学ぶ際に極めて役立つ良書である。

デイヴィッド・サダヴァ他 著,石崎 泰樹・丸山敬 監訳・翻訳.カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書:第3巻 分子生物学.第1刷,株式会社 講談社,2010年08月20日,416 p.(ブルーバックス).
本著は、分子生物学全般を学ぶ際に極めて役立つ良書である。

田中(貴邑)冨久子 著.カラー図解 はじめての生理学:上 動物機能編.第1刷,株式会社 講談社,2016年08月20日,272 p.(ブルーバックス).
田中(貴邑)冨久子 著.カラー図解 はじめての生理学:下 植物機能編.第1刷,株式会社 講談社,2016年09月20日,320 p.(ブルーバックス).
いずれも、生理学を学ぶための初学者用教科書として有用である。

山科正平 著.カラー図解 新しい人体の教科書 上.第1刷,株式会社 講談社,2017年10月20日,360 p.(ブルーバックス).
山科正平 著.カラー図解 新しい人体の教科書 下.第1刷,株式会社 講談社,2017年10月20日,480 p.(ブルーバックス).
いずれも、人体を学ぶための初学者用教科書として有用である。

山科正平 著.カラー図解 人体誕生:からだはこうして造られる.第1刷,株式会社 講談社,2019年10月20日,360 p.(ブルーバックス).
本著は発生学、特にヒトのそれを示す極めて優れた良著である。本著から、ヒトを含む全生物の発生は正に「神のみがなせる所業」であることを痛感する。遺伝子工学など所詮は、「神のみがなせる所業」に手を加えた程度のものでしかないことも痛感する。

参考文献
1 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.“令和元年度 医薬基盤・健康・栄養研究所一般公開の開催について【11月9日(土)】”.医薬基盤・健康・栄養研究所 ホームページ.医薬基盤研究所(NIBIO)のお知らせ.2019年07月01日.https://www.nibiohn.go.jp/information/nibio/2019/07/005997.html,(参照2020年02月25日).
2 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.“(当日の企画を掲載しました)令和元年度 医薬基盤・健康・栄養研究所一般公開の開催について【11月9日(土)】”.医薬基盤・健康・栄養研究所 ホームページ.医薬基盤研究所(NIBIO)のお知らせ.2019年11月05日.https://www.nibiohn.go.jp/information/nibio/2019/11/006087.html,(参照2019年02月25日).
3 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.“培養資源研究室”.医薬基盤・健康・栄養研究所 ホームページ.研究と活動.https://www.nibiohn.go.jp/activities/culture-resources.html,(参照2020年02月26日).


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