新型コロナウイルス感染症関連書籍読書、番組視聴、および、ホームページ閲覧記録:日本医学会総会2023東京 博覧会 “コロナ”から考える感染症の話02-01

重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS)コロナウイルス(coronavirus)2(SARS-CoV-2、以下新型コロナウイルス)は、新型コロナウイルス感染症(2019年)(coronavirus disease 2019:COVID-19)を引き起こす([1])。


「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」で、厚生労働省は感染者動向と都道府県の医療提供体制等の状況を発表している([2])。


札幌医科大学は、人口100万人あたりの新型コロナウイルス感染者数([3])、および、人口100万人あたりの新型コロナウイルス死者数([4])を示している。


日本で接種されているCOVID-19ワクチンは、COVID-19の発症を予防する高い効果があり、また、感染や重症化を予防する効果も確認されている。時間の経過とともに感染予防効果や発症予防効果が徐々に低下する可能性はあるものの、重症化予防効果は比較的高く保たれていると報告されている([5],[6])。


前置きはこのくらいにして、ここでCOVID-19に関連する、既読書籍、既視聴番組、および、既閲覧ホームページを順次紹介する。


01.出村政彬 著.ちゃんと知りたい!新型コロナの科学:人類は「未知のウイルス」にどこまで迫っているか.第1版第1刷,株式会社 日経サイエンス,2020年12月28日,256 p.

本著は、新型コロナウイルスの発見の経緯、ウイルスの一般的性質、新型コロナウイルスなどのコロナウイルスの特性(特に感染・増殖特性)、ウイルスに対する免疫応答(例.サイトカイン・ストーム)、COVID-19の症状(特に後遺症)、治療薬、従来型・次世代型ワクチン、検査方法、感染抑制、COVID-19パンデミックの経緯、および、主な出来事の年表が、詳細かつ簡潔に記載されている。

情報は少し古いが、入門書として有用である。

また、抗体医薬品の製造に関しても、詳細かつ簡潔に記載されている。


02.特殊法人 日本放送協会(NHK)教育テレビジョン.世界を変える“大発見”はこうして生まれた カリコ×山中伸弥.ETV特集.2021年07月10日,61分.

本作は、山中伸弥(以下敬称略)による、次世代型ワクチンの1つであるCOVID-19 mRNAワクチン開発の立て役者であるカタリン・カリコへのインタビューである。

COVID-19 mRNAワクチン自体は1年で開発・販売されたとはいえ、これは、40年にわたるカリコによるmRNA研究の賜物であり、かつ、mRNA研究は「波乱万丈」であったことを思い知らされた。

カリコは、医療従事者や清掃作業にあたる人々などの感染の恐れがある最前線で働く人々に敬意を表している。

カリコと山中は対談で、「常識にとらわれない」研究姿勢の重要性を説いた。これは両者の研究者としての学問への厳しさと真摯さを示している。

カリコによるmRNAの研究が、山中らによる人工多能性幹細胞の研究に影響を与えていることも思い知らされた([7],[8])。

「最終的に全ての科学は人類や環境を助け、あらゆるものの改善につながると信じるのです」というカリコの発言、および、「新型コロナのワクチンは1年もたたない短期間で開発されました。でも、それまでの長い研究の蓄積があったことを忘れてはなりません。それが科学なのです」という山中の発言は、非常に重い。

なお、新規mRNAワクチン技術を用いた三日熱マラリア伝搬阻止ワクチンが完了した([9])。


03.コロナ制圧タスクフォース.“コロナ制圧タスクフォース ホームページ”.https://www.covid19-taskforce.jp/,(参照2023年04月15日).

コロナ制圧タスクフォースは諸外国に比べて圧倒的に死亡率の低い日本人集団のゲノム解析を通して、「新型コロナ感染症の重症化のメカニズムを世界に向けて発信する」。具体的には、COVID-19患者由来血液検体(約14ml)を使用して、その遺伝子などを網羅的に解析し、日本人におけるCOVID-19患者の重症化因子を探索し、研究成果として発表する。

この中の、ページ「研究成果」と「一般公開」は必読である。


ここで少し趣向を変えて、人体やウイルスに関連する書籍4~6を紹介する。


04.講談社 編集.シリウス編集部 監修,はたらく細胞製作委員会 監修.からだのしくみを学べる! はたらく細胞 人体のふしぎ図鑑.第12刷,株式会社 講談社,2021年01月19日,112 p.

血液内科、特に免疫学に偏っているとはいえ、初学者向けの免疫学の教科書として非常に役に立つ。


05.講談社 編集.シリウス編集部 監修,はたらく細胞製作委員会 監修.感染症を正しく学べる! はたらく細胞 ウイルス&細菌図鑑.第1刷,株式会社 講談社,2021年01月21日,112 p.

病原体、免疫系、新型ウイルス・多剤耐性菌、ポリメラーゼ連鎖反応検査、ならびに、予防ワクチン・治療薬に関する初学者向けの教科書として非常に役に立つ。


06.朝倉幹晴 著.ウイルスと遺伝学.初版,同人集合 暗黒通信団,2020年09月09日,95 p.

新型コロナウイルスに関する事柄に関しては古くなっている。むしろ、本著は生物化学、分子生物学、細菌学、および、ウイルス学の入門書として役に立つ。

しかし、同人誌ゆえ、図が白黒で表記されていることが悔やまれる。言い換えれば、図はカラー印刷にしてほしかったということである。


以下で、COVID-19禍が精神科医療に与えた影響を紹介する。

07.特殊法人 日本放送協会(NHK)教育テレビジョン.ETV特集.ドキュメント 精神科病院×新型コロナ.2021年07月31日,61分.

COVID-19禍は日本の精神科医療の問題点なども焙り出した([10],[11])。

多くの地域の精神科病院で、身体疾患に罹った精神疾患患者が受ける治療は、身体疾患に罹った精神疾患を有しない患者のそれよりも劣っている。

重度の精神疾患を有するCOVID-19患者を受け入れてくれる医療機関は、東京都立松沢病院(以下松沢病院)を含む少数の医療機関くらいである。

COVID-19に罹患している精神疾患患者、特に統合失調症患者や認知症患者はマスクを付けない。それ故、医療従事者はこうした患者に対して密接なケアをせざるを得ないので、新型コロナウイルス感染リスクが高くなってしまう。

精神科病院の中でも、松沢病院などの精神医療を主導している少数の病院は精神疾患患者の人権を尊重し、かつ、彼等に対して適切なケアを行っている。一方、X・Y病院などの多くの病院は彼等に対して適切なケアを行っていない。しかも、この種の病院は「社会秩序維持における必要悪」としての役割も背負っている。

精神科病院の入院患者の中には、親族から厄介者と見做された結果、30年以上入院している人々もいる。


再度、COVID-19に関して言及する。


08.一般社団法人 保健医療リテラシー推進社中.“こびナビ ホームページ”.https://covnavi.jp/,(参照2023年04月15日).

「こびナビ」はCOVID-19やCOVID-19ワクチンに関する正確な情報を提供するプロジェクトである。

この中の、ページ「ワクチンについて」と「Q&A」は必読である。


9.国立研究開発法人 理化学研究所.“新型コロナウイルスに関する研究開発(2022年10月06日更新)”.理化学研究所 ホームページ.https://www.riken.jp/covid-19-rd/,(参照2023年04月15日).

理化学研究所は、国内外の研究機関、大学、および、企業と提携して、新型コロナウイルスの克服に貢献している。

理化学研究所が主導する研究開発などが紹介されている。

特に、「検出法の開発」、「治療薬・ワクチン開発のための研究」、および、「生活や社会を持続させるための研究」には目を通す価値がある。


10.特殊法人 NHK教育テレビジョン.「新型コロナ収束のカギ!mRNAワクチンに迫る」.サイエンスZERO.2021年08月22日,30分.

COVID-19 mRNAワクチンはカタリン・カリコとドリュー・ワイズマンらによる地道な研究の賜物である。

こうしたワクチンは、保護的脂質シェルに入った新型コロナウイルスのスパイクタンパク質をコードするmRNAである。このmRNAは細胞にスパイクタンパク質を作らせる。このスパイクタンパク質に、B細胞が認識し、抗体を産生する。そして、樹状細胞、キラーT細胞、および、ヘルパーT細胞を活性化させる。言い換えれば、mRNAワクチンは擬似的なウイルス感染を体内で生じさせ、細胞性免疫と液性免疫の両方を活性化させる([12],[13])。

ファイザー社や武田/モデルナ社のmRNAワクチンは非常に有効なワクチンで、従来株のウイルスに対しては、発病予防効果94~95%に加え、イスラエル(ファイザー社ワクチンを使用)においては感染そのものを防ぐ効果が91.5%もあると報告されていた。しかし、その後イスラエルではデルタ株にほぼ置き換わってしまい、その結果、発病/感染予防効果が64%まで下がってしまったとはいえ、入院予防効果は93%と高い水準を維持している([14])。

ワクチン接種における副反応の本質は、免疫反応である。なお、長期にわたる副反応は心配の必要はない。

日本国内では数多くの企業や研究機関がワクチンの開発や生産体制の整備に取り組んでいる([15])。




参考文献

[1] MSD株式会社.“コロナウイルスと急性呼吸器症候群(MERSとSARS)”.MSDマニュアル家庭版 ホームページ.16.感染症.呼吸器系ウイルス.2021年 09月.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/16-%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%99%A8%E7%B3%BB%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%A8%E6%80%A5%E6%80%A7%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%99%A8%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4-covid-19-mers-sars,(参照2023年04月14日).

[2] 厚生労働省.“データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.健康・医療.健康.感染症情報.新型コロナウイルス感染症について.2023年04月14日.https://covid19.mhlw.go.jp/,(参照2023年04月14日).

[3] 北海道公立大学法人 札幌医科大学.“人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移【世界・国別】”.札幌医科大学医学部附属 フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門 ホームページ.お知らせ.https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/index.html,(参照2023年04月14日).

[4] 北海道公立大学法人 札幌医科大学.“人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【世界・国別】”.札幌医科大学医学部附属 フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門 ホームページ.お知らせ.https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html,(参照2023年04月14日).

[5] 厚生労働省.“新型コロナワクチンの有効性・安全性について”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧 .健康・医療.健康.感染症情報.新型コロナウイルス感染症について.新型コロナワクチンについて.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_yuukousei_anzensei.html,(参照2023年04月15日).

[6] 厚生労働省.“日本で接種が進められている新型コロナワクチンにはどのような効果(発症予防、持続期間等)がありますか。”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.健康・医療.健康.感染症情報.新型コロナウイルス感染症について.新型コロナワクチンについて.新型コロナワクチンQ&A.一覧.ワクチンの効果.https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0011.html,(参照2023年04月15日).

[7] 特殊法人 日本放送協会(NHK).““革新的”研究成果がコロナワクチン開発に 女性科学者の思い”.特設サイト 新型コロナウイルス トップページ.新型コロナ 世界からの報告.2021年05月27日.https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-situation/detail/hungary.html,(参照2023年04月15日).

[8] 特殊法人 NHK.“新生ワクチンは世界を救うのか!? 開発の立て役者・カリコ博士×山中伸弥”.NHK クローズアップ現代 ホームページ.これまでの放送.2021年.05月.2021年05月27日.https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4550/,(参照2023年04月15日).

[9] 公益社団法人 グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund).“新規mRNAワクチン技術を用いた三日熱マラリア伝搬阻止ワクチンの開発”.GHIT Fund ホームページ.Investments 投資実績.https://www.ghitfund.org/investment/portfoliodetail/detail/153/jp,(参照2023年04月15日).

[10] 特殊法人 NHK.“新型コロナと闘う精神科病院 最前線からの報告”.NHK福祉情報サイト ハートネット ホームページ.記事.2020年08月13日.https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/396/,(参照2023年04月15日).

[11] 特殊法人 NHK.“新型コロナ 精神医療と当事者への影響”.NHK福祉情報サイト ハートネット ホームページ.記事.2020年06月02日.https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/362/,(参照2023年04月15日).

[12] SNOHOMISH HEALTH DISTRICT.“COVID-19 mRNAワクチンが働くしくみ”.SNOHOMISH HEALTH DISTRICT ホームページ.Healthy People.Diseases & Risks.Coronavirus Information.COVID-19 Language Resources.日本語 – Japanese.https://www.snohd.org/ImageRepository/Document?documentId=6074,(参照2023年04月15日).

[13] 日本RNA学会.“mRNAワクチン:新型コロナウイルス感染を抑える切り札となるか?”.日本RNA学会 ホームページ.会報.RNAエッセイ.https://www.rnaj.org/newsletters/item/855-iizasa-2,(参照2023年04月15日).

[14] 厚生労働省.“「ワクチン接種後のブレークスルー感染」 なぜワクチンと感染予防対策の両方が必要なのか”.新型コロナワクチンQ&A ホームページ.Q&A.コラム一覧.2021年08月27日.https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0006.html,(参照2023年04月15日).

[15] 厚生労働省.“開発状況について”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.健康・医療.健康.感染症情報.新型コロナウイルス感染症について.新型コロナワクチンについて.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00223.html,(参照2023年04月15日).

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