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第2章 毒の博物館 2-2 植物の毒のいろいろ コラム01 鷹の爪とカプサイシン:「特別展「毒」」見聞録 その05

2023年04月27日、私は大阪市立自然史博物館を訪れ、一般客として、「特別展「毒」」(以下同展)に参加した([1],[2])。

同展「第2章 毒の博物館 2-2 植物の毒のいろいろ コラム01 鷹の爪とカプサイシン」([3])で、トウガラシの一種である鷹の爪が展示された(図05.01)。

(a)解説。 
(b)標本。
図05.01.鷹の爪。

カプサイシンは、バニリルアミンと脂肪酸がアミド結合したカプサイシノイドと呼ばれるアルカロイドの一種である。カプサイシノイドはナス科トウガラシ属の果実内部の胎座や隔壁に多く含まれる。

カプサイシノイドには、カプサイシンと同程度の辛みをもたらすジヒドロカプサイシンや半分程度の辛みをもたらすノルジヒドロカプサイシンなど、脂肪酸部分の構造が異なる10種以上の同族体が存在する。

カプサイシンのバニリル基が、全身に分布する感覚神経終末で細胞膜のバニロイド受容体TRPV1(カプサイシン、酸、熱などの侵害刺激を受容するイオンチャネル型受容体)に結合して、神経細胞が脱分極し活動電位を発生することで、灼熱感(焼けつく痛み)を引き起こす。

カプサイシンを経口摂取することによって引き起こされる舌上の灼熱感を私たちは辛みとして認識するが、その刺激は口腔内だけに生じるわけではなく、気管支や消化管全体に及ぶ。気管支が強く刺激されると気管支収縮により息切れや咳が生じる。また、肛門側の直腸にはTRPV1が多いため、カプサイシンにより刺激されると強い灼熱感を感じる。

カプサイシンを摂取すると、感覚神経を介して胃酸の分泌が抑制される。

動物試験では、少量のカプサイシンの摂取によって、胃粘膜を保護する作用が働いて胃潰瘍が発生しにくくなることが知られている。一方、大量のカプサイシンの摂取によって、感覚神経のTRPV1が機能不全を起こすと、胃粘膜の保護作用がなくなるとの報告がある。

ヒトがトウガラシやその加工品のカプサイシンを過剰に摂取することによる症状は、流涙症や鼻液漏、排尿障害、胃食道逆流症などである。なお、子どもや感受性の強い人では、粘膜炎症や吐き気、嘔吐、高血圧などの症状が報告されている([4])。

私はこのことから、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という言葉を思い出した。やはり、唐辛子の辛味は「ピリ辛」程度でちょうどいい。



参考文献

[1] 独立行政法人 国立科学博物館,株式会社 読売新聞社,株式会社 フジテレビジョン.“特別展「毒」 ホームページ”.https://www.dokuten.jp/,(参照2023年05月14日).

[2] 関西テレビ放送株式会社.“特別展「毒」”.関西テレビ ホームページ.EVENT イベント情報.https://www.ktv.jp/event/dokuten/,(参照2023年05月14日).

[3] 独立行政法人 国立科学博物館,株式会社 読売新聞社,株式会社 フジテレビジョン.“第2章 毒の博物館”.特別展「毒」 ホームページ.展示構成.https://www.dokuten.jp/exhibition02.html,(参照2023年05月14日).

[4] 農林水産省.“カプサイシンに関する詳細情報”.農林水産省 ホームページ.消費・安全.リスク管理(問題や事故を防ぐ取組).個別危害要因への対応(健康に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質).カプサイシンに関する情報.2022年05月12日.https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/capsaicin/syousai/,(参照2023年05月24日).

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