新型コロナウイルス感染症関連書籍読書、番組視聴、および、ホームページ閲覧記録:日本医学会総会2023東京 博覧会 “コロナ”から考える感染症の話02-03

本記事は以下の記事の続編である。

21.讀賣テレビ放送株式会社 制作著作.循環器病チャリティー 特別医療セミナー.2021年11月01日,56分.

巽英介 国立循環器病研究センター 副オープン イノベーション センター長と西中知博 人工臓器部長らの研究チームは超小型高性能のポータブルECMOシステムをニプロ株式会社と共同で世界に先駆けて開発した。そして、福嶌教偉 移植医療部長が治験責任医師となって、2020 年03 月10 日より医師主導治験を開始している([1])。

特別医療セミナー「withコロナ時代における循環器病対策について」で、COVID-19自体やその典型的な経過が言及された。


22.講談社 編集.シリウス編集部 監修,はたらく細胞製作委員会 監修.びょうきと たたかう! はたらく細胞 ワクチン&おくすり図鑑.第1刷,株式会社 講談社,2022年02月28日,112 p.

初学者向けのワクチンや感染症治療薬などの教科書として非常に役に立つ。


23.旦部幸博 著,北川善紀 著.最小にして人類最大の宿敵 病原体の世界 歴史をも動かすミクロの攻防.第1刷,株式会社 講談社,2022年08月20日,280 p,(ブルーバックス).

本著は、病原体、特に歴史を変えた病原体と今後注意を要する病原体、ならびに、身近な病原体の生存戦略に関する事柄を詳しく解説している。

私たち人類が思っている以上に、病原体は凶悪、狡猾、そして、強かであることを痛感する。例えば、梅毒トレポネーマは宿主(ヒト)の免疫から認識されにくくすることで、生き延びるわけだし。一方、結核菌は肺胞マクロファージに貪食されても、マクロファージの持つ殺菌作用に抵抗し、細胞内で生存あるいは増殖するわけだし。

人類と病原体の闘争は永遠に続くことを痛感する。


24.讀賣テレビ放送株式会社 制作著作.読売テレビ、ytvドキュメント『365日診療中~新型コロナと“型破り”な町医者~』.2021年12月30日,56分.

本番組は、水野宅郎 水野クリニック院長([2])によるCOVID-19診療記録である。

本番組から、地域の医療従事者がCOVID-19診療を含む地域診療を支えていることを改めて痛感した。


25.特殊法人 日本放送協会(NHK).スペインかぜ 恐怖の連鎖.映像の世紀 バタフライエフェクト.2022年04月25日,46分.

本番組は、スペイン風邪(スペイン インフルエンザ、1918 pandemic)の記録である([3])。

スペイン風邪([4])は国内外の国際事情、特に第一次世界大戦後のそれを大きく変えたことを痛感した。その典型例が、ドイツにおける国民社会主義ドイツ労働者党(以下同党)の台頭である。トーマス・ウッドロウ・ウィルソン米国大統領がスペイン風邪に罹らなかったら、同党は一泡沫政党に留まったのかもしれない。

一方、ペンシルベニア大学(米国)はスペイン風邪と奮闘したことで、世界屈指の感染症研究機関となった。そして、ハンガリーから来たカタリン・カリコ博士を迎え入れることで、COVID-19 mRNAワクチンの開発に成功した。


26.中山哲夫 著.歴史から読み解く ワクチンのはなし:新たなパンデミックに備えて.初版第1刷,株式会社 朝倉書店,2023年03月01日,212 p.

本著は、ワクチンの基礎知識、ワクチンの歴史、現在日本で使用されているワクチン、ならびに、現在と将来のワクチンに関する詳細を記載している。

本著を読めば、ワクチンに関するデマにそう簡単に騙されないはずである。


27.株式会社テレビ東京 制作著作.ワクチンの真実3 〜独占取材!“国産開発”の全貌~.ガイアの夜明け.2021年12月17日,70分.

本番組は、日本国内外のCOVID-19ワクチン・治療薬開発状況の最前線を紹介している。

日本では、2022年08月10日、ペプチドリーム株式会社の関連会社であるペプチエイド株式会社は、国内での臨床研究結果の最終レポートで、COVID-19治療薬の開発候補品PA-001に関して、安全性・薬物動態について良好な結果を確認できたことを発表した([5])。

2023年01月31日、Meiji Seikaファルマ株式会社とKMバイオロジクス株式会社は、開発中のCOVID-19不活化ワクチンKD-414について、国内小児第3相臨床試験を開始し、本日1例目の被験者に対し初回接種を行ったことを発表した([6])。

2023年04月10日、VLP Therapeutics Japan株式会社は、開発中のCOVID-19変異株対応レプリコン(次世代mRNA)ワクチン(以下「VLPCOV-02」)の日本国内第1/2相臨床試験(治験)を開始したことを発表した([7])。

一方、2022 年09月07日、アンジェス株式会社はCOVID-19(武漢型)DNA ワクチン開発の中止、ならびに、COVID-19変異株(オミクロン BA.5 等)にも有効な改良型 DNA ワクチンおよびその経鼻投与製剤の研究の開始を発表した([8])。

また、2022 年02月03日、三菱ケミカルグループ株式会社は、傘下の田辺三菱製薬株式会社の海外連結子会社であるメディカゴ社(カナダ ケベック市)の全事業から撤退し、メディカゴの清算を進めると発表した。田辺三菱製薬が2013年09月にメディカゴを買収後、2022年02月にカナダでメディカゴとして初の製品となる植物由来ウイルス様粒子技術を用いた新型コロナワクチン「COVIFENZ」の承認を取得した。しかし、大量に商用生産することができず、発売できていない。その結果、三菱ケミカルグループは今回、COVIFENZの商用化の断念とともに、メディカゴが保有する開発品への更なる投資を継続的に行うことは困難と判断した([9])。

国外では、2021年11月03日、世界保健機関(WHO)は、インドの製薬企業バーラト・バイオテックが開発した新型コロナウイルスワクチン「コバクシン」を緊急使用リストに追加した。「コバクシン」は室温2~8度での保管が可能で、有効期限も9カ月と比較的長いことから、WHOは中・低所得国での使用に適していると結論付けている([10])。

インドの様な地域(大都市部と農村)や医療現場管理レベルなどの要因による医療格差が大きい国([11]のp.76,88)では、「コバクシン」の様なワクチンが必須であることを痛感した。


27.特殊法人 NHK教育テレビジョン.今知りたい!新型コロナ後遺症.チョイス@病気になったとき.2023年04月16日,45分.

本番組は、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)の特徴([12],[13])、その根本原因に関する主な疾患仮説([14],[15])、リスク因子([16],[17])、および、治療法(主に対症療法)([18],[19],[20])を紹介している。


28.公益財団法人 東京都医学総合研究所.“COVID-19の後遺症;慢性炎症との関連性?”.東京都医学総合研究所 ホームページ.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連サイト.新型コロナウイルスに関する最新情報.2022年09月06日.https://www.igakuken.or.jp/r-info/covid-19-info125.html,(参照2023年04月17日).

最近のCOVID-19の興味の1つが、long COVID(後遺症)である。後遺症の機序は漠然としているが、最近では、慢性炎症の役割が注目されている。

肥満の人では、炎症が長期間続く可能性がある。それが原因で後遺症の症状が生じるのかもしれない。脱毛に関しても、こうした炎症に関わる症状の1つであると推定される。


29.塩野義製薬株式会社.“新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸によるウイルス力価の 早期陰性化ならびに罹患後症状(Long COVID)の発現リスクに対する低減効果について ―国際学会CROI 2023において新規データを発表―”.塩野義製薬 ホームページ.ニュース.2023年02月22日.https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2023/2/20230222.html,(参照2023年04月17日).

2023年02月22日、塩野義製薬株式会社は、COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸(日本での製品名:ゾコーバ®錠125mg)について、第2/3相臨床試験のPhase 3 partより新たに得られた良好な結果を第30回 Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections(CROI)2023にて発表した。

結果は以下のとおりである。はっきり言って、素晴らしい。

l   感染性を有するSARS-CoV-2ウイルス(ウイルス力価)が陰性となるまでの時間を有意に短縮。

l   投与4日目(3回投与後)の時点で、96%の患者でウイルス力価を陰性化。

l   追跡調査の結果、投与開始時点の症状スコアが比較的高い患者において、咳や喉の痛み、倦怠感、味覚異常など14症状のいずれかの持続を認める患者の割合を半減(プラセボ比で45%のリスク低減)。

l   集中力・思考力の低下や物忘れ、不眠など、神経系の罹患後症状が認められるリスクを33%低減。


30.株式会社 日経BP.“Gut誌から 腸内細菌叢と食物繊維は新型コロナワクチン接種後の抗体に影響 細菌が産生するBCFAがワクチン反応を減弱させる可能性”.日経メディカル Online ホームページ.医師TOP.特設サイト.海外論文ピックアップ.海外論文ピックアップ:消化器.2023年01月19日.https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/digestive/202301/578124.html,(参照2023年04月17日).

腸内細菌叢と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(以下、COVID-19ワクチン)に対する抗体反応との間に関連があることはこれまでにも示されていたが、これを裏付ける結果が2022年12月22日にGut誌オンライン版で報告された。さらに、COVID-19ワクチンの免疫原性には、腸内細菌の蛋白質発酵に由来する分枝鎖脂肪酸(Branched chain fatty acid:BCFA)値が負の影響を、食物繊維が正の影響を与える可能性が示された。

やはり、食物繊維が多い食品、即ち、植物性食品を多く食べる方が、COVID-19ワクチンが利きやすくなるということかな?健康のために、植物性食品や発酵食品(例.納豆、ヨーグルト)を確りいただく方がよいね。



参考文献

[1] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター.“新型コロナウイルス肺炎に対する高性能新規ECMOシステムの安全性及び有用性に関する多施設共同単一群試験(COVID-19_ECMO)”.国立循環器病研究センター トップページ.広報活動.プレスリリース.2020年09月08日.https://www.ncvc.go.jp/pr/release/20200908_press/,(参照2023年04月15日).

[2] 水野クリニック.“水野クリニック ホームページ”.https://mizunoclinic-osaka.com/,(参照2023年04月15日).

[3] 中外製薬株式会社.“インフルエンザの流行と歴史”.インフルエンザ情報サービス ホームページ.インフルエンザの基礎知識.https://influ-info.jp/basic/history.html,(参照2023年04月15日).

[4] みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社.“―社会動向レポート― 大正のパンデミック―スペイン風邪顛末記(1/5)”.みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 ホームページ.オピニオン.Report.2021年のReport.https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/2021/mhir21_pandemic_01.html,(参照2023年04月15日).

[5] ペプチドリーム株式会社.“当社関連会社ペプチエイド株式会社が新型コロナウイルス感染症治療薬PA-001の臨床研究において良好な安全性プロファイルを確認したことを発表”.ペプチドリーム ホームページ.News.2022年.2022年08月10日.https://contents.xj-storage.jp/xcontents/45870/4390c37d/c468/4030/b1df/e23c7ab1dc08/20220810120355777s.pdf,(参照2023年04月16日).

[6] Meiji Seikaファルマ株式会社.“新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンKD-414の小児第Ⅲ相臨床試験開始のお知らせ”.Meiji Seikaファルマ ホームページ.プレスリリース.2023年.2023年01月31日.https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/pressrelease/2023/detail/pdf/230131_01.pdf,(参照2023年04月15日).

[7] VLP Therapeutics Japan株式会社.“【ニュースリリース】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)変異株対応レプリコン(次世代mRNA)ワクチン追加接種 第1/2相臨床試験の開始について”.VLP Therapeutics Japan ホームページ.お知らせ.2023年04月10日.https://vlptherapeutics.co.jp/press/4314/,(参照2023年04月15日).

[8] アンジェス株式会社.“新型コロナウイルス感染症(武漢型)向け DNA ワクチンの開発中止及び新型コロナウイルス感染症の変異株に対する改良型 DNA ワクチン並びにその経鼻投与製剤の研究開始に関するお知らせ”.アンジェス ホームページ.News.2022年.2022年09月07日.https://www.anges.co.jp/pdf_news/public/4cjqfdo3gHfLGBHdPZqaUSLCKvq3WZQN.pdf,(参照2023年04月15日).

[9] 三菱ケミカルグループ株式会社.“海外連結子会社 メディカゴ社の事業撤退に関するお知らせ”.三菱ケミカルグループ ホームページ.ニュースリリース.2023年.2023年02月03日.https://www.mcgc.com/news_release/pdf/01467/01707.pdf,(参照2023年04月16日).

[10] 独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ).“WHO、インド製の新型コロナワクチン「コバクシン」の緊急使用承認(インド)”.ジェトロ ホームページ.

ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース.2021年11月12日.https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/11/26300bfceabff75f.html,(参照2023年04月16日).

[11] 経済産業省.“医療国際展開カントリーレポート 新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報 インド編”.ヘルスケア国際展開ウェブサイト ホームページ.国別概要情報.インド.https://healthcare-international.meti.go.jp/files/document/countryreport_India_2021.pdf,(参照2023年04月16日).

[12] 厚生労働省.“新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.健康・医療.健康.感染症情報.新型コロナウイルス感染症について.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html,(参照2023年04月17日).

[13] 東京都福祉保健局.“後遺症”.東京都福祉保健局 トップページ.医療・保健.感染症対策.新型コロナ保健医療情報ポータル.関連リンク・その他.https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/link/kouisyou.html,(参照2023年04月17日).

[14] 山形県医師会.“新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報(山形県:2月27日) 「コロナ後遺症」の病態生理学をより深く理解したい理由”.山形県医師会 ホームページ.医療関係者のみなさま.感染症.新型コロナウイルス感染症[医師の皆さま].新型コロナウイルス感染症関連情報.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報(山形県).2023年情報.2023年02月27日.https://www.yamagata.med.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/02/20230227_COVID19_kouisho.pdf,(参照2023年04月17日).

[15] 国立大学法人 岡山大学.“新型コロナ後遺症の原因とされる宿主内持続感染は起きるのか〜全身性感染と不十分な免疫応答は持続感染のリスク要因に〜”.岡山大学 ホームページ.NEWS & RELEASE.2022年度.プレスリリース.2022年07月12日.https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id984.html,(参照2023年04月17日).

[16] 厚生労働省.“参考資料1-3  新型コロナウイルス感染症の後遺症[PDF形式:2.7MB]”.厚生労働省 ホームページ.政策について.審議会・研究会等.薬事・食品衛生審議会(血液事業部会安全技術調査会).薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和3年度第2回安全技術調査会資料.2021年06月23日.https://www.mhlw.go.jp/content/11127000/000801415.pdf,(参照2023年04月17日).

[17] 公益信託 武見記念生存科学研究基金.“新型コロナウイルス感染症後遺症について”.武見基金 COVID-19有識者会議 トップページ.診療の話題.病態・診療.2021年05月28日.https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/6466,(参照2023年04月17日).

[18] 福岡県.“新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第2.0版) [PDFファイル/2.29MB](厚生労働省)”.福岡県 トップページ.健康・福祉・子育て.感染症対策.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新型コロナウイルス感染症 後遺症診療相談について.2022年10月.https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/176256.pdf,(参照2023年04月17日).

[19] 株式会社 日経ナショナル ジオグラフィック.“コロナ禍で注目、失った嗅覚を取り戻す「嗅覚トレーニング」とは 嗅覚障害の数少ない治療法の1つ、その方法と効果のほどは”.日経ナショナル ジオグラフィック トップページ.ニュース.2022年05月14日.https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/051300218/,(参照2023年04月17日).

[20] 西春内科・在宅クリニック.“新型コロナ感染症の後遺症に多い味覚・嗅覚障害の治し方|亜鉛不足が原因?”.西春内科・在宅クリニック トップページ.ブログ.2022年12月09日.https://nishiharu-clinic.com/2022/12/09/korona-mikakushougai/,(参照2023年04月17日).

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?