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3-1.線状降水帯に迫る!!(データ同化研究チーム):理化学研究所 神戸地区 一般公開2023 R-CCS わくわく「富岳」 その02

2023年11月03日、私は理化学研究所 神戸地区(以下神戸地区) 計算科学研究センター(RIKEN Center for Computational Science:R-CCS)を訪れ、一般客として理化学研究所 神戸地区 一般公開2023 わくわく「富岳」(以下「わくわく富岳」,[1][2])に参加した。なお、神戸地区 一般公開は、神戸医療産業都市 一般公開2023の一環でもある([3])。


データ同化は、シミュレーションと実測データとを融合し相乗効果を生み出す学際的科学で、力学系理論や統計数理に基づくデータ サイエンスである。計算機が高度化しシミュレーションが精緻になるほど、実際に観測されたデータとシミュレーションとを突き合わせ、これらを融合することの意義・効用が増す。

R-CCSデータ同化研究チーム(以下同チーム,[4][5][6])は、シミュレーションと実測データを最も効果的に融合することを目指し、高度なデータ同化手法やデータ同化の幅広い応用に関する先端研究に取り組んでいる。特に、高性能なスーパーコンピュータによる「ビッグ シミュレーション」と新型センサから得られる「ビッグ データ」を生かすための効率的かつ高精度なデータ同化に向けたチャレンジに取り組んでいる。具体的には、(1)効率的かつ高精度なデータ同化に向けた基礎理論やアルゴリズム研究、(2)高性能スーパーコンピュータおよび新型センサによる「ビッグ データ」を生かしたデータ同化の理論・応用研究、および、(3)幅広いシミュレーション領域への新たなデータ同化応用を探る探索研究に取り組んでいる。これらの先進的なデータ同化研究により、シミュレーションの可能性を広げ、高性能スーパーコンピュータの有効活用に繋げていく。

同チームは以下の研究に関わっている([7])。

1.ゲリラ豪雨予測。

2.台風や集中豪雨の予測。

3.全球大気の予測可能性。

4.観測インパクト評価。

5.毎日更新する新型コロナウイルス感染症の感染予測。

6.水力発電の高効率化。

7.持続可能性のモデリング。


線状降水帯は、次々と発生する積乱雲が数10km~数百kmにわたって線状に組織化した降水帯で、数時間にわたりほぼ同じ場所に継続的に大雨を降らせるため、記録的な豪雨がしばしば発生する。

「3-1.線状降水帯に迫る!!(データ同化研究チーム)」で、2022年03月07日、同チームの三好建正チームリーダー(開拓研究本部三好予測科学研究室主任研究員、数理創造プログラム副プログラムディレクター)、および、前島康光特別研究員らの共同研究チームは、スーパーコンピュータ「富岳」を使って、2020年07月に豪雨をもたらした線状降水帯周辺の大気状態を数値化し、九州全土に最新鋭のフェーズドアレイ気象レーダを仮想的に展開した場合の観測データをシミュレーションし、そして、フェーズドアレイ気象レーダによって30秒ごとにすき間なく雨雲の立体構造を捉えることで、線状降水帯の豪雨の予測精度を大きく改善できることを定量的に確認したことを発表した。

本研究により、九州全土という広範囲に17台のフェーズドアレイ気象レーダを展開することで、2020年07月に豪雨をもたらした線状降水帯の予測を大きく改善できることが分かった。この結果は、地球規模の温暖化により脅威を増す線状降水帯の予測精度の向上や被害の軽減に向けた新しい予測技術や観測システムの提案に繋がるものと期待できる(図02.01,図02.02,2,[8])。 

図02.01.ポスター「線状降水帯に迫る!!」。
図02.02.ポスター「シミュレーションで線状降水帯の豪雨予測精度を改善-もしも最新鋭気象レーダで九州全土を覆えたら-」。


また、同チームは、上記の研究のVRを展示した(図02.03,2,8)。

図02.03.線状降水帯のVR。


なお、同チームは線状降水帯以外の気候に関連する研究に関与している([9][10][11])。


「3-1.線状降水帯に迫る!!(データ同化研究チーム)」で、「富岳」が防災・減災に使用されていることを初めて知った([12][13])。

「富岳」などのスーパーコンピュータを用いる線状降水帯などの気候に関連する研究がさらに進展することで、誰もが防災・減災できることを大いに期待する。



参考文献

[1] 国立研究開発法人 理化学研究所 神戸事業所.“理化学研究所 一般公開 in 神戸 2023 ホームページ”.https://www.kobe.riken.jp/event/openhouse/23/#outline,(参照2024年02月28日).

[2] 国立研究開発法人 理化学研究所 神戸事業所.“わくわく「富岳」 南エリア”.理化学研究所 一般公開 in 神戸 ホームページ.R-CCS わくわく「富岳」.https://www.kobe.riken.jp/event/openhouse/23/ccs_ja.html,(参照2024年02月28日).

[3] 公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構.“神戸医療産業都市(KBIC) 2023 一般公開 ホームページ”.https://www.fbri-kobe.org/kbic/ippankoukai/2023/,(参照2024年02月28日).

[4] 国立研究開発法人 理化学研究所.“データ同化研究チーム”.理化学研究所 ホームページ.研究室紹介.計算科学研究センター.https://www.riken.jp/research/labs/r-ccs/data_assim/,(参照2024年02月28日).

[5] 国立研究開発法人 理化学研究所 計算科学研究センター.“データ同化研究チーム”.理化学研究所 計算科学研究センター トップページ.研究活動.研究チーム紹介.https://www.r-ccs.riken.jp/research/labs/dart/,(参照2024年02月28日).

[6] 国立研究開発法人 理化学研究所 計算科学研究センター データ同化研究チーム.“データ同化研究チーム ホームページ”.https://www.data-assimilation.riken.jp/,(参照2024年02月28日).

[7] 国立研究開発法人 理化学研究所 計算科学研究センター データ同化研究チーム.“研究紹介”.データ同化研究チーム ホームページ.https://www.data-assimilation.riken.jp/jp/research/index.html,(参照2024年02月28日).

[8] 国立研究開発法人 理化学研究所.“シミュレーションで線状降水帯の豪雨予測精度を改善-もしも最新鋭気象レーダで九州全土を覆えたら-”.理化学研究所 ホームページ.研究成果(プレスリリース).研究成果(プレスリリース)2022.2022年03月07日.https://www.riken.jp/press/2022/20220307_1/index.html,(参照2024年02月28日).

[9] 国立研究開発法人 理化学研究所.“衛星データと計算による世界の降水予報-理研とJAXAのwebで5日後までのリアルタイム降水予報を公開-”.理化学研究所 ホームページ.研究成果(プレスリリース).研究成果(プレスリリース)2020.2020年08月20日.https://www.riken.jp/press/2020/20200820_2/index.html,(参照2024年02月28日).

[10] 国立研究開発法人 理化学研究所.“台風の強風予測を改善-もしも静止気象レーダ衛星があったら-”.理化学研究所 ホームページ.研究成果(プレスリリース).研究成果(プレスリリース)2021.2021年07月07日.https://www.riken.jp/press/2021/20210707_1/index.html,(参照2024年02月28日).

[11] 国立研究開発法人 理化学研究所.“トンガ海底火山噴火のラム波を鮮明に可視化-ひまわり8号が捉えた波の全貌-”.理化学研究所 ホームページ.研究成果(プレスリリース).研究成果(プレスリリース)2022.2022年05月09日.https://www.riken.jp/press/2022/20220509_1/index.html,(参照2024年02月28日).

[12] 国立大学法人 東京大学 大気海洋研究所.“「富岳」成果創出加速プログラム 防災・減災に資する新時代の大アンサンブル気象・大気環境予測 トップページ”.https://cesd.aori.u-tokyo.ac.jp/fugaku/index.php,(参照2024年02月28日).

[13] 内閣官房.“スーパーコンピュータを活用した防災・減災対策”.内閣官房 トップページ.各種本部・会議等の活動情報.国土強靱化.防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策.防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策 各対策毎の概要.その5(PDF/4,298KB).https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/5kanenkasokuka/pdf/kakutaisaku5.pdf,(参照2024年02月28日).

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