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-昨季出場8試合の悔しさをバネに-「勝負の年」と誓った荒谷裕秀の成長

「すごいな…」
記者席で思わず声が漏れた。

B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2021-22
QUARTER FINALS〈GAME1〉。
東地区1位の千葉ジェッツのホーム、
船橋アリーナに乗り込んだ宇都宮ブレックス。

3月の試合では大敗を喫しているアウェーの地で、
チームに勢いをもたらしたのは
4本の3Pシュートを含む
14得点の活躍を見せた荒谷裕秀だった。

「フリーだったら積極的に打っていこうと思って
 試合に臨んでいたので、
 何本もシュートが入ってくれて
 すごく良かったと思います」

出場時間:15分43秒/14得点(内 3Pシュート4本)

BREXは前半だけで
15本中8本の3Pシュートを沈めた。
50%以上と高確率で決めきれた要因について、
安齋HCは荒谷の名前を挙げて称賛した。

「チームとして作った形と言うよりは
 タフショットも決めていたと思うし、
 あれがなければ展開が全然変わったので、
 前半は荒谷のおかげだと思います」

5月14日 安齋HC 試合後会見

またこの試合、
チームトップの21得点を挙げた比江島も、
同じポジションとして
一緒にワークアウトを積んできた
ルーキーの活躍に目を細める。

「彼はもともと能力があるし、
 自信を持ってやればあれぐらいできると
 思っていました。
 セカンドユニットの所で
 ちょっとやられかけたんですけど
 ヒデが引っ張ってくれて、
 特ベンチの雰囲気もすごく良かったですし
 ハーフタイムや試合が終わってからも
 みんながヒデを祝福していました。

 こういったチャンピオンシップの舞台では
 ベンチプレイヤーだったりが
 影響を与えてくれる働きが必要になるので、
 今日は彼がその役割を担ってくれて
 チームとしても助かりました」

出場時間:27分19秒/21得点/7アシスト

余談ではあるが、
ドライブを得意とする荒谷が
実は中学時代にプレーを参考していたのが、
当時、青山学院大学でプレーしていた
比江島だった。

「大学でバスケをしたい」と思ったのも
当時の比江島の存在が大きかったことを
以前の取材で話している。
(本人には伝えたが「反応がなかった」らしい)

8つ歳の離れたポジションの同じ2人。
時を経て大舞台で同じコートに立ち、
そして、チームを勝利に導いた。

こういった運命の交錯も
スポーツが持つ魅力の1つかもしれない。

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課題として取り組んできたアウトサイドシュート

プロ入り前から、
ドライブやポストプレーに定評があった荒谷。
首脳陣や先輩たちも、
「他にはない魅力がある」と口を揃え
そのポテンシャルに期待を寄せているほどだ。

一方、3Pシュートの成功率も
レギュラーシーズンでは36.7%を記録。

限られたプレータイムの中で
要所の大事な1本を決め切ってきた印象があるが、
「課題として取り組んできた」
荒谷自身が強調するように
日頃のワークアウトの成果が
この大一番で発揮されたことが窺える。

そのシュート確率を高めた要因として
安齋HCは「メンタル面の重要性」を挙げた。

「バスケってどちらかと言うと
 メンタルスポーツだと思うので、
 メンタルが試合に入れているかかどうかで、
 ”自分のシュートが打てるかどうか”
が決まる。
 今日のヒデはメンタルも試合に入っていて、
 1本目の3Pシュートが決まったのが
 すごく大きかったと思うし、
 それがシュート確率に繋がったと思います」

5月14日 安齋HC 試合後会見

それもそのはずだ。
舞台はチャンピオンシップ。
しかも相手は東地区1位の千葉ジェッツ。

ルーキーが平常心で
“試合に入っていくメンタルを持つ"ことが
容易でないことは想像に難くない。

しかし、荒谷は「気負いはなかった」と
試合前の心境を振り返り、
強豪相手でも落ち着いて臨めた
レギュラーシーズンの経験を引き合いに出した。

「ここ最近、レギュラーシーズンから
 チャンピオンシップに出てるような
 強いチームとの試合が続いていて、
 特に気負いなく試合に入ることができたのは
 すごく良かったかなと思っています。
 
 今日も1本目がコーナーからの
 3Pシュートだったと思うんですけど、
 気持ちよく打ちきり決めることができて、
 その後のシュートを
 おもいっきり打てたのかなと思います」

5月14日 荒谷裕秀 試合後会見

初出場だけど、2度目のCS

特別指定選手として加入した昨季、
レギュラーシーズンは出場わずか8試合。

だが、チームは天皇杯とリーグ戦、
2度もFINALに進出し、
その空気感をすでに肌で感じていたことも
気負いせずに臨めた要因の1つだろう。

「この舞台で試合に出たい」
その想いはより増したと言う。

「天皇杯の決勝だったり、
 チャンピオンシップの決勝は
 なかなか経験できない雰囲気じゃないですか。
 そういうのを
 この半年間で学べたのかなと思います。

 あんな試合に出ない経験が初めてだったので、
 試合に出たいなという気持ちがありました。
 足りない部分が大きいのは感じているので、
 これからそこを補っていければと思います」

21年7月 荒谷裕秀 取材

迎えた2021-22シーズン。

「勝負の年」と自らにプレッシャーをかけ、
結果を着実に残しながら
少しずつ、少しずつ、
プレータイムを勝ち取ってきた荒谷。

「僕が選手を出す基準は
 オフェンスよりディフェンス」

安齋HCが語るように、
まず荒谷に求められていたのは
得意のオフェンス力を発揮することではなく、
ディフェンス面を
BREXのスタンダードに押し上げること。

その壁は自分でも分かっていた。

BREXに加入を決めたのも、
苦手だった
ディフェンス面の向上が目的だったからだ。

11月取材時 荒谷裕秀

練習の中で分からないことが見つかれば、
すぐに首脳陣の下へ確認に行き、
ベンチで試合を見ている時は
チームのトップディフェンダーである
遠藤祐亮から盗めるものを探した。

「ボールから遠い位置にいる
 ディフェンスの時の反応が早いし、
 そこからヘルプに行くのか
 ヘルプをフェイクにして戻るのかとか
 そういう判断も早いので、
 ポジショニングとかも見てますね。

 以前は試合を見るときに
 オフェンス面を見ていたんですけど、
 それを少しずつディフェンス面も
 自然に見られるようになったことが
 意識の変化かなと思います」

練習後に安齋HCに確認しに行く荒谷

開幕前。
普段から荒谷のワークアウトを見ている
佐々宜央アシスタントコーチに
話を聞いたことがある。

詳しくはこちらの記事にも記したが、
その時の言葉が今でも忘れられない。

「荒谷は真面目だから
 長所(オフェンス)はずっと意識させながら、
 短所(ディフェンス)を
 最低限に引き上げる作業が大事なんです。
 感覚的には3年ぐらいかかると思いますよ
 そんなに簡単じゃないです。
 でも日々の成長を本人が感じられたら、
 一緒にやってる俺らもうれしいんですよ」

9月取材時 佐々アシスタントコーチ

CSは"日替わりヒーロー"が勢いになる

3年どころか、
わずか1年でチームに不可欠な存在へと
成長を遂げた荒谷。

だが、言葉を裏返せば
3年後にはどんな成長を遂げているのだろうと
期待は高まるばかりだ。

GAME2では
同い年のテーブス海が14得点と活躍。
日替わりで若いヒーローが生まれ、
チームに勢いをもたらしている。

「若さ」は時に信じられないパワーを生む。

このチャンピオンシップ中ですら
まだまだ成長する
可能性を秘めているからまた脅威だ。

再びアウェーで
川崎ブレイブサンダースと対戦する
セミファイナル。

次のヒーローはいったい…

B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2021-22
SEMI FINALS

GAME1 5月21日 15:05〜
GAME2 5月22日 16:05〜
GAME3 5月23日 19:05〜

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