ファッショ_2_4_5月号

雑誌『ファッショ』購読をキメて堕落した物質文明に差をつけよう!|世界創造社の世界【1】

いま、劇的に世界情勢も日本社会も変わりつつあります。にもかかわらず、政治は私たちに何もしてくれません。そして私たちが判断しようにも正しい情報を手に入れることがとても難しい。そんな時代です。もう間違った情報を得て一喜一憂する生活はやめにしませんか?

そもそも今、世界はどんな情勢にあるのか。今この時代は歴史の潮流のなかでどんな位置にあり、今後どんなふうになっていくのでしょうか。そんなとき大いに参考になるのが時代の最先端を突き進むイタリアです。

偉大な指導者ムッソリーニ率いるイタリアの経済、政治、文化、芸術の最新トレンドを、海外通のプレイヤーを執筆陣にして紹介するのが日伊同盟雑誌『ファッショ』です(図1)。

図1 ファッショ 1939年4月号

これまでマルクス主義や自由主義をいろいろ試しても、なんだかちっともシックリこなかった。そんなあなたこそ、この『ファッショ』が新しい時代を生きるための魔法のコンパスとなるはず。

今すぐ定期購読の申し込みをキメてライバルに差をつけましょう。今まさに革命のファンファーレが高らかに鳴り響くラジよ!

月刊誌『ファッショ』リニューアル創刊!

なにはともあれ、まずは『ファッショ』がどんな雰囲気の雑誌だったのか、1939年4月号の内容をご覧くださいマセ。

1939年4月号 特集:地中海問題
地中海問題 地中海を制圧するもの(アンジェロ・ジノキエッティ)
地中海問題 地中海を繞る世界戦争(小島威彦)
地中海問題 伊仏外交の危機とその回顧(難波浩)
地中海問題 チュニス問題(清水宣雄)
イタリア便り 自給運動鉱物展覽會
イタリア便り 伊の思想攻勢に仏・人戰陣営攪乱
地中海問題 ファシズム植民地政策(アンジェロ・ジノキエッティ)
オーストリアはドイツ国なり
伊独両首相電報交歓
海の文化(志田延義)
人・事績・思想 イタリア統一の豫言者マッチーニ(金倉英一)
イタリア便り ファシスト教学の本義
イタリア便り エチオピア新道路建設進む
イタリア便り ム首相農業政策の成果を賞揚
人・事績・思想 国粋思想の父カルドウィッチ(原田謙次)
人・事績・思想 ビウス十一世その人為・生涯・事業(平塚益徳)
人・事績・思想 十二世新教皇略歴
スパゲッチ(安東聞多)
イタリア茶話(尾瀬靜江)
伊太利亜の航空事業(泉三郞)
日本の開国と日伊修好通商條約の締結(中村光)
新工業都市建設(伊国国民文化省)
イタリア便り ローマ・ベルリンの新協定
ファツシズムの起源と理論(1)(ジョヴァンニ・ジェンティレ)
イタリア日誌
仏伊関係経過
編集後記

小島威彦(1903-1996)が仲小路彰(1901-1984)と協働して立ち上げた出版社・世界創造社から出版された月刊誌が雑誌『イタリア』。1939年4月号から『ファッショ』へ改題されます。発行元はイタリア社、発売元が世界創造社となっていますが、入り口が違うだけで家は同じみたいなもの。

この世界創造社の設立経緯はよくわからないのですが、「世界創造社」という不思議な社名は、小島威彦の著書『世界創造の哲学的序曲』にも用いられているように、日本が世界の盟主となる「日本世界維新」が「世界創造」になぞらえられているという、なかなかディープな由来。

改題第1号の編集後記には、ものすごい鼻息とともに次のように記されています。

待望の月刊いよいよなる。我らはこの機に本誌の改革すべき諸点を総て改革した。本誌創刊にあたって寄せられたアウリチ大使のメッセージにあるごとく「今日のイタリアを語るものはファシズムを語る」ものである。(中略)ファッショの名の故に忌憚を感ずるものは読むべからず!世界史の進行に目を覆うものは見るを要せず!日伊独の躍進する現実に呆然たる自称インテリ、病める知性主義者の世界に如何に多きか。真に日本を愛するが故に知識を愛するものは本誌の側に組みするであろう。

日独伊防共協定(1936)から日独伊三国同盟(1940)の間に位置する1939年4月から10月にかけて発行された『ファッショ』。最先端のイタリア・ファシズム情報を提供しつつ、日本の立場や使命を説く論説が多くを占めています。

イタリア・ファッショからアジア復興へ

『ファッショ』の目次をパソコン入力しているだけで、激しい煽りに食傷気味になりますゆえ、引き続き、一気に最終号(図2)の目次をご覧いただきましょう。

図2 『ファッショ』1939年10月号

1939年10月号 特集:欧州動乱と日英戦争
ファッショ宣言―満ソ不可侵條約―
「敵は一つ」―グラビア(編集部)
欧州動乱とムッソリニ(渡邊誠)
欧州動乱と反英植民地 印度は英に参戦せず
事変解決と反英(満田巖)
何が世界大戦か(清水宣雄)
雑言番付 第二次大戦の特性
蘆溝橋に立つ(志田延義)
独ソ条約と内閣更迭(井上縫三郞)
雑言番附 上海と軍票
ファシスト政権の教育活動(チェザレ・クリスポルティ)
イタリア自給自足経済(本間陸男)
軽爆撃機 反戦論者正木直彦(篁牛人)
軽爆撃機 神と猿(深尾重光)
軽爆撃機 アメリカの二重性格(泉四郞)
軽爆撃機 電力と石炭(木枝喬)
欧州動乱と反英植民地 シンガポール印度部隊不穏
欧州動乱と反英植民地 印度兵ハンストに英当局困惑
英の口車には乗らず
世界の敵 支那事変の敵(伊田定一)
世界の敵 世界事変の敵(半田弘平)
物動計画の指標(西谷彌兵衛)
放送事業に於ける音楽の役割(牧定忠)
雑言番付 外務省と箱根丸
日本の大陸発展と改新の意識(中村光)
反英全面戦争(高洲陽吉)

雑誌『ファッショ』には多くの執筆者が関与し、グラビアや論考、小説、シナリオ等々の多様なテーマ・表現形態が収録されています。その執筆者の顔ぶれは、小島威彦が関係した「ナチス叢書」や「スメラ民文庫」、「スメラ学塾講座」「戦争文化叢書」でも見られるおなじみの顔ぶれがたくさん。いわば、世界創造社・スメラ学塾おかかえの執筆者でした。

『ファッショ』の巻頭に掲げられた「ファッショ宣言」には次のようにあります。

ムソリーニをして、将来世界への大ナポレオンたらしめよ!ローマ帝国再建の洪業をして、正にかのローマ帝国に対するアレキサンダー遠征路の位置を、再び新世界統一に対して持たしめよ。けだし欧州の内的自己矛盾は新欧州再建をして、所詮はヨーロッパ墓穴構築の必然性を辿らしめるのみであるからである。ムソリーニのこの壮麗な世界史的悲劇を媒介として、真にアジア復興のプロトコールを作成すべき日本世界アカデミア樹立を誰か欲せざるや。

こんな枠組みのもと、「日本を枢軸とする独伊一体の世界維新戦争は、イギリスの全面的後退を決定化する!!今や日本を離れてヨーロッパ否世界はあり得ない」と主張に至ります。1939年には、当然アメリカよりイギリスが糾弾の対象で、掲載論考も反英色が色濃くあります。

日中戦争の泥沼化、そして、第二次世界大戦の勃発と、世界情勢はめまぐるしく変化していました。この雑誌の作り手も読み手も懸命に未来を模索していたのでしょう。それゆえの誇大妄想では中廊下、とも思うのです。

あと、日本国内にあって率先して海外の動向を吸収していた知識人が『ファッショ』の執筆陣だったわけで、その知識を踏まえて日本がどうあるべきか、どう行動すべきか考える姿勢も真剣そのものだったはず。だと思うと、時代のなかで生きることの難しさを痛感させられます。

(おわり)


参考資料:「ファッショ」総目次

四月號(第二巻第三號)
1939.4地中海問題 地中海を制壓するもの(アンジェロ・ジノキエッティ) 2/地中海問題 地中海を繞る世界戰爭(小島威彦)4/地中海問題 伊佛外交の危機とその回顧(難波浩)8/地中海問題:チュニス問題(淸水宣雄)15/イタリア便り 自給運動鑛物展覽會17/イタリア便り:伊の思想攻勢に佛・人戰陣營攪亂17/地中海問題:ファシズム植民地政策(アンジェロ・ジノキエッティ)18/オーストリアはドイツ國なり21/伊獨兩首相電報交驩21/海の文化(志田延義)22/人・事績・思想:イタリア統一の豫言者マッチーニ(金倉英一)26/イタリア便り:ファシスト敎學の本義29/イタリア便り:エチオピア新道路建設進む29/イタリア便り:ム首相農業政策の成果を賞揚29/人・事績・思想 國粹思想の父カルドウィッチ(原田謙次)30/人・事績・思想:ビウス十一世その人爲・生涯・事業(平塚益徳)32/人・事績・思想:十二世新教皇略歴34/スパゲッチ(安東聞多)35/イタリア茶話(尾瀬靜江)36/伊太利亞の航空事業(泉三郞)38/日本の開國と日伊修好通商條約の締結(中村光)42/新工業都市建設(伊國國民文化省)44/イタリア便り ローマ・ベルリンの新協定45/ファツシズムの起源と理論(1)(ジョヴァンニ・ジェンティレ) 渡邊誠・山本饒共著 46/イタリア日誌48/佛伊關係經過49/編輯後記51

五月號(第二巻第四號)1939.5
学問は鬪爭する(小島威彦)2/日―伊―獨・結盟の叫び 援蔣第三國猛省せよ(板垣陸相談話)7/現代社會とフランスカトリック作家(丸山熊雄)8/イタリア音樂(牧定忠)12/日―伊―獨・結盟の叫び:英の對獨包圍政策を痛撃(ヒトラー總統演説)15/ムッソリーニの世界政策 ムッソリーニの對獨政策(淸水宣雄)16/ムッソリーニの世界政策:イタリアと其の領土(編輯部譯)18/ムッソリーニの世界政策 イタリアの回敎徒政策(大倉富太郞)22/チアノ外相演説全文25/ムッソリーニの世界政策:ムッソリーニの制覇時代①(ミルコ・アルデマーニ)藤沢親雄譯28/ファシズムの起源と理論②(ジョヴァンニ・ジェンティレ)渡邊誠・山本饒共著30/イタリアの人造繊維ラニタール(泉三郞)32/明治時代の日伊交渉(吉田三郞)35/アルバニア問題を繞つて(難波浩)39/日―伊―獨・結盟の叫び:アルバニア併合(ムッソリーニ首相演説)43/日―伊―獨・結盟の叫び:ファシスト評議會宣43/黄河大ダムの建設43/イタリア日誌:アルバニア問題經過44/編輯後記48

六月號(第二巻第五號)1939.6
自主外交の欺瞞性(小島威彦)2/イタリアの經濟體制(齋藤時郞)5/皇國外交の指標(安田貞藏)9/血滴 獨伊軍事同盟とトリヴィノフの失脚12/イタリア文學物語(原田謙次)13/血滴 靑年の翼17/イタリアのフィラテリック(松尾樹明)18/血滴 ム首相の獅子吼・動物園異變 22/かくてアルバニアを合併せり(ジ・アウリシオ)23/血滴 共同租界を卽時撤収すべし24/漫畫物語「神前結婚」(篁牛人)25/ファッショ輕爆撃機/ファシズムと勞働者(吉田三郞)28/科學者と人生觀(泉四郞)30/嵐の中から生れ出ずるもの(宮脇昌三)31/日本理想主義の火をたけ(堀井眼目洞)32/英米協調論者を駁す(大倉富太郎)33/獨伊軍事同盟(難波浩)34/金の幻影(滿田巖)35/日本經濟學の諸問題(西谷彌兵衛)37/青春と戰爭への意志(丸山熊雄)39/血滴:陸に上った河童43/アトラスの奥へ(深尾重光)44/映畫「土」・反動「朝日新聞」47/編輯後記48

七月號(第二巻第六號)1939.7
日獨伊軍事同盟論(小島威彦)2/ヨーロッパの植民地略奪(淸水宣雄)4/血滴:南方生命線を確保せよ7/貿易は戰爭なり(小倉虎治)8/血滴:租界問題解決の方途13/事變處理と軍事同盟(井上縫三郞)14/日本人16/スエズ運河(G・A)17/イタリア日誌18/イタリア植民地問題及びヨーロッパ今後の動向(水島知明)19/轉向理論の革命:全アジア統一體のために(堀井眼目洞)22/一九三八年度のイタリア概況(編輯部)25/ファッショ輕爆撃機:興亞施策と滿支の現狀(吉田三郞)28/興銀貸付残高減退とその意義(西谷彌兵衛)29/緩慢なる日本の歴史敎科書(高木尚一)32/汪兆銘聲明と日本の論説(深尾重正)33/日本民族とメダカ(町田登美子)34/大蒙古民族を統一せよ(今藤茂樹)35/雑草的エネルギー(泉四郞)36/赤色空軍の脆弱性(八田義彦)37/血滴:天津租界封鎖宣言39/戰爭文學論序説(丸山熊雄)40/イタリアの音樂政策 血滴 敗殘者の逃避所「國民學術協會」46/アトラスの奥へ(2)(深尾重光)48/巻末言52

八月號(第二巻第七號)1939.8
東京會談(淸水宣雄)2/租界の歴史(吉田三郞)5/日本世界經濟の創建(西谷彌兵衛)9/支倉常長の渡歐(中村光)14/國文學と國際情勢(志田延義)17/世界日誌・イタリア日誌18/親英陣營の凱歌:東京會談(小島威彦)20/北支臨時政府に告ぐ(伊田定一)22/ファッショ輕爆撃機:大觀・栖鳳撲滅(篁牛人)24/ファッショ輕爆撃機:攘英運動と親英學風(宮木雄三)25/ファッショ輕爆撃機:東京會談ののちに來るもの(滿田巖)27/言論の自由(窪田建男)28/土屋喬雄の反日戰(半田弘平)29/スエズ運河論(東春吉)30/子供の四季と小市民文學(河井明)35/銷夏コント:無國籍人・新明正道(南駄郞)40/銷夏コント:今中次麿の日本抹殺論(綾部孝次)42/東亞再建と租界問題(安田貞藏)43/新聞批判46/巻末言48

九月號(第二巻第八號)1939.9
ファッショ宣言1/「朝日新聞とイギリス」―グラビア(編輯部)3/日英會談の全面的批判(淸水宣雄)7/日英會談と財界(西谷彌兵衛)10/日英會談とアメリカ(難波浩)14/イタリア日誌(編輯部)16/朝日新聞と人民戰線(伊田定一)17/朝日新聞と日英會談(半田弘平)20/日英會談と攘英運動(安田貞藏)22/日獨伊軍事同盟締結24/輕爆撃機:大學敎授の識見を疑ふ(龍田洋)26/―田中直吉敎授の東亞協同體論―ソヴェト空軍の本質(野本澄造)28/杉山平助と東京會談(木枝喬) 30/漫畫家よこちらを向け(篁牛人)31/朝日新聞と日英會談(半田弘平)20/日英會談と攘英運動(安田貞藏)22/日獨伊軍事同盟締結24/輕爆撃機:大學敎授の識見を疑ふ(龍田洋)26/―田中直吉敎授の東亞協同體論―ソヴェト空軍の本質(野本澄造)28/杉山平助と東京會談(木枝喬) 30/漫畫家よこちらを向け(篁牛人)31/朝日「學藝部の勲功」 岩崎弦)33/日本世界政策序論(小島威彦)34/日英會談―蔣介石―汪兆銘(今藤茂樹)38/日英會談と租界封鎖(小倉虎治)41/小説「大日向村」と日本文學への課題(河井明)45/世界日誌(呑海生)50/巻末言52

十月號(第二巻第九號)1939.10
ファッショ宣言―滿ソ不可侵條約― 1/「敵は一つ」―グラビア(編輯部)3/歐洲動亂とムッソリニ(渡邊誠)7/歐洲動亂と反英植民地 印度は英に参戰せず10/事變解決と反英(滿田巖)11/何が世界大戰か(淸水宣雄)15/雑言番付:第二次大戦の特性17/蘆溝橋に立つ(志田延義)18/獨ソ條約と内閣更迭(井上縫三郞)20/雑言番附:上海と軍票22/ファシスト政権の敎育活動(チェザレ・クリスポルティ)23/イタリア自給自足經濟(本間陸男)25/輕爆撃機:反戦論者正木直彦(篁牛人)28/神と猿(深尾重光)29/アメリカの二重性格(泉四郞)30/電力と石炭(木枝喬)31/歐州動乱と反英植民地:シンガポール印度部隊不穏32/歐州動乱と反英植民地 印度兵ハンストに英當局困惑32/英の口車には乗らず32/世界の敵:支那事變の敵(伊田定一)33/世界事變の敵(半田弘平)36/物動計畫の指標(西谷彌兵衛)41/放送事業に於ける音樂の役割(牧定忠)45/雑言番付 外務省と箱根丸46/日本の大陸発展と改新の意識(中村光)47/反英全面戰爭(高洲陽吉)49


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