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『1Q84』から40年後の世界(アフターレッスルマニアXL)

レッスルマニアXL明けのRAWとSmackDownを観終えた。
Abema実況の清野さんが思わず『新しい大河(ドラマ)の始まり』と煽った事で逆に浮かび上がったのは、レッスルマニアXLに向かうあのロイヤルランブル直後辺りの熱狂はまさに『鎌倉殿の13人』のソレに近かったと思う。
ならばアフターレッスルマニアXLについて語るのは酷である(苦笑)。
我々はもはや『大河ドラマ』や『朝ドラ』という伝統の枠組みの中で『鎌倉殿~』や『あまちゃん』のような逸材コンテンツを時折見出す事でいつからか再び『終わりなき日常』の檻の中を無難に過ごしている。だからこそ去年からもう既に何度も何度も声高に繰り返されている『新時代(NewEra)』という言葉に違和感を感じるのである。一体『新時代』って何なのだろうか?

レッスルマニアXLとは40年の『物語』の終焉がテーマであったが、ではその40年前の1984年とはどんな年であったのか?まさにこの年はプロレス界にとって村上春樹さん小説タイトルでもある『1Q84』が相応しい年だった。
レッスルマニアの40年『ヴィンスサーガ』の起源はこの年に始まったヴィンス・マクマーン=WWF(当時)による全米侵攻=アメリカンプロレスの統一であり、これを前述小説の元ネタである『1984』ビッグブラザーの預言に見立てた見解はフミ斎藤さんを中心に多く語り継がれてきた。更にこの年は奇しくも日本では伝説の『世界のプロレス』が放映された年でもあり、そのパイロット特番で放映されたのが最近公開された『アイアンクロー』で描かれたデヴィッド・フォン・エリック追悼興行である。

二世レスラーの光と影(或いは表と裏)という意味でレッスルマニアXLと『アイアンクロー』とはまさに『1Q84』から40年後の2024年共に観るべき作品である。そしてこの2つの『物語』からはもう一つ歴史の性が浮かび上がる。『アイアンクロー』で父フリッツが息子達に巻かせたかったのは当時のプロレス界の最高権威であるNWA世界ヘビー級王座であり、まさにこの時代は前述の『世界のプロレス』という番組が成立した全米各州にテリトリー=団体を遠征する世界王者をシェアした最後の時代でもあった。その枠組みが終焉に向かう時代の短命政権王者代表ダスティ・ローデス(歴史的呼称尊重)の息子コーディが40年後に悲願の『物語』で手にしたもの。。。それは現時点でプロレス界最高の『WWE統一ユニバーサル王座』である事はもちろんではあるが王座以上の価値は『レッスルマニア』のメインでそれを叶える事であった。これこそが『1Q84』から40年後の世界であり、だからこそ40年の『物語』が完結したのである。

そして本物の『物語』(≓価値感)とは40年くらいで変わるべきものである。
昭和のプロレスファンにとって『NWA』とは『アメリカ横断ウルトラクイズ』等を代表とする世界≓アメリカ幻想に楽しく騙されていた時代の象徴たるプロレス界の最高権威であったと思う。今回改めて調べて驚いたのはこの組織が発足したのは 1948年(なので初代フランク・ゴッチは後付けの歴代王者だったのは近年有名な話)だった事である。NWA世界王者を最も重宝したジャイアント馬場さん≓全日本プロレスがリッキー・スティンボード(最後の相手は2代目タイガーマスク=三沢)の招聘を最後に自らの団体内主要王座統一に舵を切ったのが 1988年であり、アメリカ本国でもほぼこの辺りを境にNWA王座がWCW王座に切り替わった事を考えると40年というサイクルはプロレス界にとって価値観の耐用期限なのかもしれない。

『新時代(NewEra)』とは声高に叫ぶものではない!それは時代の性として自然発生するものであり後々気付くものである。『NWA』(+ジャイアント馬場)というある種の既得権益のオルタナティブだったWWF(当時)=ヴィンス・マクマホンと新日本=アントニオ猪木(或いは新間寿)によって創造されたのが『レッスルマニア』であり『IWGP』である。この起源となった1979年末のMSG大会については年初『WWEネットワークを解約する前に』という記事に詳細を書いたので是非そちらも読んで頂きたいが、40年前にはNWAが滅びこの2つがその後のプロレス界を支配する2本柱になるとまでは想像しなかった。世代闘争と『新時代(Era)』はほぼ同意語である。
それが謳われるのむしろ『新時代(NewEra)』への閉塞感があるからである。

アントニオ猪木もヴィンス・マクマーンもいない世界とは。。。考えようによってはZEROの時代とも言える。奇しくもレッスルマニアXLまでを最高の状態で迎えベルトを引き継いだこの10年の主役元『ザ・シールド』セス・ローリンズとローマン・レインズのアフターレッスルマニアに姿を現さなかった事と対照的に元ディーン・アンブローズのジョン・モクスリーがまさかのIWGP世界ヘビー王者になってしまった。やはりレッスルマニアXL後の世界は7大王者(WWE主要+IC+US+IWGP)による戦国時代となった。或いはその隙をみてとびぬけるのはむしろAEW大陸王者カヅチカ・オカダなのかもしれない。

ただそれはあくまで『1Q84』世界の余韻の中での話である。今年1年はかつて『ロスタイム』と呼ばれたこの時期をまったり楽しむのも良い。私もついついレッスルマニア41に3度目の『A』の『物語』を性懲りもなく期待してしまった(苦笑)。そしてそれはプロレス界に限った事ではない。
来年 2025年は『大阪万博』の年である。2020年(+1)『東京オリンピック』新国立競技場建設で我々は『新時代』の好機を逃したと昨今のWWE等の国際的イベント誘致でみる世界のオリジナル溢れる大会場を観て思う。あの時もしザハド案の『オイスター(生牡蠣)ドーム』を創る財政的なそしてメンタルでの勢いがあればインバウンドに沸く東京の良い名物にもなったのに。。。
国立競技場はワンピースにおける海賊船『メリー』の『物語』でもあった。

『大阪万博』をただ批判するのは簡単である!しかしそれは『1Q84』世界から脱出するのをまた放棄する事でもある。この閉塞感から抜け出す為に良くも悪くも『大阪万博』に関心を持つ=閉塞感脱出のカギとして利用する方が良い。もうそろそろ皆『iPhone』に飽きてませんか?テレビの替わりになる筈の Abema でなんでこんなにここぞとばかり広告を見せられるのか?と感じたアフターレッスルマニアXLの Raw と SmackDown。。。
唯一の救いはAJスタイルズの勝利という私の価値観も戒めよう(苦笑)。

最後に名前を拝借したので『1Q84』ネタで締めたい。
月が2つ存在する『1Q84』世界から脱出した天吾と青豆は『虎マーク』ガソリンスタンドの看板が逆になっている違和感に気付く(だったと記憶している)のだが、これは翌年 1985年に起きた阪神タイガース優勝を暗示する村上春樹さんなりの小粋な歴史ジョークだったと思う。ならばこれに便乗して2025年の万博が大阪なのも何かの縁と都合良く捉えた方が楽しい。
そろそろ本物の『新時代』へ気持ちだけでも切り替えませんか?





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