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夏の夜の俺らは最高

日が完全に落ちてから明け方の4時ぐらいまでがいい。
ガヤガヤした居酒屋も気取ったバーも、隣に気を遣わなければならないカフェもいらない。
公園でいい。東京23区から離れた住宅街の、だだっ広い公園がいい。小さな野球グラウンドがあればより、ベスト。
俺らはそこにコンビニで買ったビールだの缶チューハイだの持って立ち寄る。
背もたれすらない小さいベンチに腰掛けて色んな事を喋る。すごくくだらない事。でも借金の返済とか、家のローンとかの話は野暮。うまいイタリアンの話も野暮。
真っ暗闇に浮かぶ水槽のような夜。それでも俺たちは最高で最強だった。

そんな夜をいつも探している。うってつけの夜は何度もあった。だけど今の俺たちは隣で笑う連れを探すだけで苦労している。
つまんねぇ夜に、一緒に馬鹿な話をしながら公園で語り明かす奴を探すだけでも苦労している。そんなの居酒屋にはいないし、バーにもいない、だからってもちろん、会社にもいない。

今は一人、公園でビールを開ける。友達の代わりに煙草に火をつけ、煙を大きく吐く。
あたりにはそれぞれ人々の生活が明滅して、穏やかな光を放つ。俺たちはそんな、この世界の夜を作るかけがえのない光になった。

だけど今も探している。最強で最高だった俺たちの夜を。金もなくて、地位もなくて、愛されもしなかったけど、朝まで話してられる、そんな最高の夜を。

サポートはお任せ致します。とりあえず時々吠えているので、石でも積んでくれたら良い。