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グレた大人が誰かを救う

やはり何度考えてもそう思う。
例えば物凄い挫折をしたり、二度と立ち上がれないほどの失恋を経験したり、貧困アンド鬱屈の二人羽織をしていた時。

真っ先に自分を肯定してくれたのは、いつだってグレた悪い大人だった。

それは本当の悪ではない。悪そうに見える、というやつだ。どちらかと言うと、やさぐれているに近い。もうずっと煙草吸いながら話はするし、髪の毛ボッサボサの無精髭で清潔感とかそういうのとは程遠いし、言葉遣いも雑で荒々しい。
うーっす。とか、おいっすー。とか、そんな感じ。
口を開けば下ネタばっかり、スーツなんてなんかの式とかでしか着たことないし、変なエセ関西弁とか使ったりもする。これは自分か。

だけど、こういった人々をバックに持っておくと、はっきり言って強い。

冒頭に書いたような事柄、そういう状況になった時。こういう人達は、
「何を湿っぽいこと言うとるねん!とっとと飲みに行くぞ!早うこんかい!」
とね、土足でガンガン上がり込んできて少々強引に引っ張りあげる。
こっちの事情なんか、まるで御構い無しであるし、話したとして、
「いいから、早う!」
と言い切ってくる。身勝手極まりないし、強引だ。

でもなんで救われたかと言えば、その強引さがごちゃごちゃ入り組んだものを吐き出させたからに他ならないし、彼等は何故か本能的に分かっている。

人間、本当のドン底からは、誰かに引き上げてもらわなければダメなのだという事を。
そこから一人で這い上がってしまうと、何か別の代償を払う羽目になってしまうということを、本能的に知っている。

だからこそ少々強引でも引っ張りあげてしまう。

そして、引っ張りあげた後は、
「そんなん全然凄いやん、ゴイスーってやーつやん。俺なんか昨日5万負けたわ!」
なんて、心の重石をどんどん軽くしてしまう。
自分がろくでもない事を根拠にして、相手の自己肯定感をガンガン高めてしまう。

こんな事が出来るなら、ろくでもなくても全く問題はないんじゃないかな。

「仕事が面白くないって!はんっ!俺なんか営業出て一日中パチ屋の駐車場に車停めて煙草吸っとうで!」

「面接に落ちたぁ?へぇ、そんならここでやったらええやん。なんなら内定通知出したってもエエ、そんなん手書きやけど!」

こういった手法は、繁華街のど真ん中だとか、喫煙所とか、安居酒屋とか、そういう所で学んできた。
だけどこれがまた、絶大なる効果を発揮する時がある訳よ。

辛かったね、分かるよ。とか、
少し休みなよ。とか、
それも一つ、寄り添う、共感する意味では確かに暖かい。

だけれども、現実面ではね、
「なんやそんなくよくよし腐って、ええから来い!ぜーんぶ聞いたるから来い!
居なくなりたいなんて、死んでから考えてもらいや、どっかの誰かさんに!」
やさぐれ思考で相手の殻強引にブチ破って、引っ張りあげる、そんなストリートのマイウェイ手法を、とんでもなく敬愛しているのです。

近頃、街にそういったグレた大人が減った。
そう思う。その気持ち、分かりますとか、まずは客観的に自分を見つめ直しましょうとか、ピシッとしたスーツか、お洒落なワイシャツ姿の社会人然とした大人が多い。
それはそれで、良いんだ。

ただそれでも、ドン底にいた時に引っ張りあげてしまったのは、自分にとってはやさぐれた大人であった。
だから、自分は今、というかここぞという時には、土足で踏み入って、引っ張りあげる、やさぐれた男で、いたいんだよ。

サポートはお任せ致します。とりあえず時々吠えているので、石でも積んでくれたら良い。