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人生には「脚本」があるらしい
昔、『人生の99%は思い込み』という本を作ったことがあります。
人生のほとんどのことは「思い込み」である。その思い込みを客観的に認識し、うまく利用することで、よりよい人生を獲得しよう。そんな内容の本で、心理学の専門家の方に書いていただきました。
そのなかに「人生脚本」という言葉が出てきます。
「人生脚本」はエリック・バーンという心理学者が提唱した概念で、人間は知らずしらずのうちに人生の「脚本」を書いていて、その脚本に沿って人生を歩んでいる、というものです。
子どものころ、親や先生から「〇〇してはいけないよ」とか「あなたはこうなるのよ」などと言われたことはないでしょうか。もしくは、友だちや知り合いから「みんなこうしてるよ」「世間ではこれが常識だよ」などと言われたことはないでしょうか。
親の教え、教育、世間の空気、常識……そういうものに影響を受けながら「人生の脚本」はできていくといいます。
気づけば「自分の人生はこんな感じになる」という脚本ができあがっている。そして、知らないうちにその「脚本どおり」に人生は進んでいきます。
脚本は無意識のうちにできあがっている
「脚本」と言われてもピンと来ない人もいるかもしれません。
「脚本なんかなくて、自分の人生はその都度自分で決めている!」「俺は直感に従って生きている!」という人もいるでしょう。
でも、脚本は自分の意志とは違うところで発動します。潜在意識のようなものなのです。
「大金持ちになる!」と口では言っていても、脚本には「いまの会社で部長くらいまでいって、ふつうに暮らせれば御の字」と書かれていたりする。「成功したい!」といいながらも、脚本には「どうせうまくいかない」と書かれていたりする。
なので、つねに「どういう脚本が自分の人生にとってベストなのか?」を見直しておく必要があるのです。
脚本は「無意識」にできあがっているもの。なので、変更するのはなかなか難しいでしょう。ただ「変更したい」と思うのであれば、まずやるべきことは「脚本という無意識に描いてしまっているストーリーがある」と認識することです。
無意識にできあがっているとはいえ、脚本は誰かに強制されているものではありません。いつのまにか自分で書き上げてしまっているもの。それが体に染み込んでいて、その脚本どおり歩んでいるだけです。
だからもし「人生を変えたい」と思うなら、まずはその脚本を認識する。そうすれば、少しずつ書き換えることはできるはずです。
どの「脚本」に乗っかるのかを選ぶ
最近は、この「脚本」についてよく考えます。
ひと昔前までは日本経済もわりと好調でしたし、なんとなく右肩上がりに成長していくのかな、というイメージが世の中全体にありました。
「右肩上がりに成長していく」という脚本が共有されていて、みんながそれに乗っかって、うまくいっていたような気がします。
でもここ十何年かで、そんな空気はなくなっていきました。
代わりに「悲観的な脚本」が世の中に出回るようになりました。
「競争力が低下して日本の地位がどんどん落ちていく」とか「人口が減少し、年金の財源もなくなって悲惨なことになる」とか「アメリカと中国に挟まれて戦争になる」みたいな脚本です。
国全体に勢いがあって経済が成長していれば、世間の空気や政府が描く脚本に乗っかるだけでも、しあわせになれたかもしれません。みんなと同じように考え、みんなと同じように動くだけでよかったかもしれない。
でもこれからは一人ひとりがきちんと自分の人生の「脚本」を意識しないといけないかもと思ったんです。誰かがしあわせを保証してくれるわけではないからです。デフォルトでしあわせに導かれるような時代ではないのです。
人間はストーリーによって生きている。
そう言っても過言ではないでしょう。もちろん衣食住が揃っていれば「生物的には」生きていけます。
でも、人間は社会的な動物です。社会がないと人間としては生きていけない。そのときに脚本・ストーリーは重要な役割を果たします。
脚本が人を救うこともあれば、不幸にすることもある。だから「どんな脚本を描くか」「どんな脚本を選ぶか」が重要なんじゃないか、と思います。
何度も言うようですが、脚本は強制されるものではありません。自分で書くこともできますし、好きなものを選ぶこともできます。
リクルート創業者の「自ら機会を作り、その機会によって自らを変えよ」という言葉がありますが、これは脚本にも置き換えられそうです。つまり「自ら脚本を書き、その脚本によって自らを変えよ」というわけです。
いろんな価値観に触れて、いいものを選びとる
じゃあどうすればいいのか?
いい脚本を選び取るためにも、いいストーリーを描くためにも、まずはいろんな価値観に触れることが大切だと思います。
ネットだけでなく、さまざまな映画や本、音楽に触れて、いろんな価値観に触れる。そのなかで自分が共感するものを見つける。
会う人を変えるのも大切かもしれません。やっぱりふだんよく会う人の価値観に影響を受けがちです。だからたまには別のコミュニティの人としゃべってみるのもいいかもしれません。
あとは、無理にでも環境を変えてみると視野が広がったりします。いちばんわかりやすいのは職場を変えることでしょうし、住む場所を変えるというのもいいかもしれません。
今乗っかっているストーリー、今携えている脚本が「絶対」というわけではありません。「ちょっとうまくいかないな」とか「このままの人生だとイヤだな」と思うのであれば、別の脚本を用意すればいい。
そのためにもいろんな価値観に触れて、自分の頭で考えることが必要なんじゃないかなーと思います。
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