「おもしろい」ってなんだろう? 町の看板を勝手に添削してみた。
このエントリーは『書くのがしんどい』(PHP研究所)からの抜粋に修正を加えたものです。
「情報」だけでは価値がない
いまの時代、多くの人に読んでもらうためには「おもしろさ」が必要です。
昔はインターネットなどがなかったため、そもそもの情報量は多くありませんでした。よって「みんなが文章を読んでくれる」ということを前提に書けばよかったのです。
そもそも情報への需要があったので、情報さえ提供していれば読んでもらえたのです。
しかしいまはそうではありません。
ネット時代の書き手は、飽きられないように、離脱されないように、工夫をこらしておもしろくしないと読んではもらえないのです。
史跡の案内板はなぜおもしろくないのか?
地方の観光地などに行くと、史跡の案内板をよく見かけます。
「龍馬の出生地」とか「伊達政宗が最後に戦をした場所」みたいなやつです。ぼくは、ああいう案内板を最後まで読んだことがありません。ほとんどが「情報」の羅列で、読んでいてワクワクしないからです。
明治神宮外苑にもこんなイチョウ並木の説明が書いてある看板があります。
文字におこすとこんな感じです。
いちょう (銀杏・公孫樹)
銀杏は、現存する最も古い前世界の植物の一つです。地質学上中生代ジュラ紀(一億五千万年前、巨大な恐竜が棲息していた時代)に地球上にひろく分布し、生育していた樹種です。従って、その化石の発見は極地より南北両半球、中国・日本にまで及んでおります。氷河期の到来により、多くの地方では、銀杏樹は絶滅しましたが、温暖な気候を保ち得た中国では死滅を免れ、生育を続けて現在に至っております。日本の銀杏は、この中国より渡来した樹種で、現在では街路樹・防火樹・庭木としてひろく植えられており、「東京都の木」ともなっております。現在では東南アジア以外ではほとんど植えられておりません。並木の総本数は一四六本(雄木四四本・雌木一〇二本)
ちゃんと読むと、内容的にはけっこうおもしろいことが書いてあります。ただメリハリがないため「情報の羅列」に見えてしまい、読むときに少し「しんどく」なってしまいます。
これをどうすれば離脱されない文章にできるでしょうか?
文章に動きを入れる
まずは文章にメリハリをつけましょう。単調な文面に「動き」をつけるのです。
ぼくがnoteで文章を書くときは、スマホのワンスクロール内にひとつは「見出し」や「太字」を入れるようにしています。
パッと見て一瞬で文字が入ってくることが大切です。コンマ何秒で「読みやすそう」と思われることが大切なのです。
キャッチャーな見出しをつけ、ひらがなを増やし、熟語を減らし、改行と太字でメリハリをつけ、動きを入れてみる。
すると、こうなります。
恐竜の時代からあった「イチョウの木」
イチョウは、いまあるなかでもっとも古い植物のひとつです。
1億5千万年前、巨大な恐竜が生きていた時代に広く生えていました。いちょうの化石は北極・南極から中国、日本でも発見されています。
氷河期が来て、多くの地域でイチョウは絶滅しました。しかし、暖かい気候を保つことのできた中国では生き延びることができました。
日本のイチョウは、中国から来た種です。
現在では、街路樹や防火樹、庭木としてひろく植えられています。「東京都の木」でもあります。いまは東南アジア以外で、ほとんど植えられていません。
並木の総本数は146本(雄木44本・雌木102本)。
どうでしょうか。
これであれば、少し立ち止まって読もうという気になるかもしれません。見出し、改行、太字、かんたんな表現。たったこれだけのことで読む人が何倍にも増えるとしたらこんなにお得なことはありません。
情報+感情=おもしろさ
そもそも「おもしろい」とはどういうことでしょうか?
ぼくなりに定義するのであれば「感情が動く」ということです。笑える、泣ける、怖い、勇気が出る……。おもしろいものを目指すのであれば、とにかく読み手の感情を動かさなければいけません。
イチョウの看板も情報の羅列のように見えますが、読んでみると「グッと来る」ポイントがいくつかあります。そこを「強調」してあげるだけでおもしろくなるはずです。
・イチョウは恐竜の時代からあった
・イチョウはいまあるなかでもっとも古い植物のひとつ
・氷河期が来て多くの地域でイチョウは絶滅したが、中国では生き延びた
このあたりは「へえ」と思えるポイントです。
このグッと来るポイント、「へえ」と思えるポイントがビシッと伝わるように設計することが大切なのです。
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