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ある若者が外出を控えるようになった話

 ここ最近の、政府・東京都からの新型コロナウィルスに関する情報発信により、以前と比べて外出は減ったような気がします。そんな中で先日、濃厚接触を避けて多摩川沿いをランニングしていたところ、桜の花が満開。それはそれは美しかったのですが、一方で桜の木の周りにはかなりの人々が集まっており、写真を収めたり、談笑をしたりしていました。それをみた私は、ランニングのコースを変更・迂回しながら、制限が続くことに対して行動を守り続けることは難しいなあと実感すると共に、

どんな情報で・どんな風に人の認識が変わると、外出をより控えるようになるのだろう

と思わずにはいられませんでした。

 そんな思いでいた中、昨晩偶然に触れた、ある興味深いブログのエピソードをご紹介します。それはこの状況でも、高校生の息子さんが外出を控えない・マスク着用もきちんとしない、と悩んでいた母親のブログでした。ブログ曰く、彼女(母親)が「こんな環境だから、外出を控えてほしい」といくら言っても「俺は若いから、免疫力があるし、もし掛かっても大丈夫」「お父さん・お母さんもまだ若い(共に40代)し、問題ないでしょ」と息子さんは、一向に外出を控えず・マスク着用をしない状況。それを母親が父親に相談したところ、彼は息子さんにこういったのだそうです。「お母さんは月に1回、おじいちゃん・おばあちゃん(母親の両親・共に70代後半)の所に行ってるよね」「君とお父さん・お母さんが免疫力があっても、おじいちゃん・おばあちゃんはどうなんだろう」「もし君が外で感染して、お母さん経由でおじいちゃん・おばあちゃんに感染し、大変な状況になった時、君は平気なのかい?」

 この話を聞いた後、その息子さんは外出をすることが劇的に減り、マスクは必ず着用するようになったのだそうです。「そんなうまい話、そうそうないよ」「うちの子供にそんなことを言ってもムダ」というお声もあるかもしれません。またこのやり取り自体に「情緒的すぎ」「科学的でない」ということも多々あるかもしれません。ただここで伝えたいのは

行動の意味(=誰のため・何のため)が認識でき、その意味づけが変わると、人間の行動は劇的に変わることがある。

ということなのです。この息子さんの場合、いきなり外出禁止と一方的に言われ、個人的には「俺は免疫強いはずだし、大丈夫なのに何で俺まで?」という気持ちでいらっしゃったのではないかと思います。「社会のために」というのは頭でわかっても「自分のため」という観点が持てなかった。そこにご自身のおじいちゃん・おばあちゃんのため、という観点が入ることで認識がかわったのだと思います。

 外出回避の動きは今、始まったばかり。短期で済めばいいのですが、長期化した場合、リスクを伝えていくだけでは、人々の行動を抑止していく力は長持ちしないかもしれません。そんな時こそ「自分にとっての行動の意味」を理解することが、1人1人の頑張る力を持続させるのではと思っています。ただ1人1人、自分ゴト化できる意味が少しずつことなる中、どんなメッセージが最も多くの人の認識を変え・行動を変えられるのかと、マーケティングの人間としては思案をしている次第なのです。

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