【受験ノート】受験が終わった18歳の春に何をするのかは、とんでもなく大切なこと

 アニメ「けいおん」は、高3に入ってからの方が、いろいろ充実しています。最初のシリーズが大ヒットしたので、予算と人員が大幅に増えて、後半になるに従ってどんどん内容が豊富になってしまったと云う制作サイド上の、都合もありますが、高3に進級して大学受験と云うテーマが決まったので、学校行事のひとつひとつが、より一層、面白くなったってとこもあります。人は、テーマが決まると、心身の諸機能が活性化されて、より前向き、かつポジティブに、モノゴトに取り組めたりするものです。高3になると、高校時代も、もう残り少ないと、はっきりと自覚できるようにもなります。

 HTT(放課後ティータイム)のむぎちゃん以外のメンバーは、夏期講習が始まる前に、パスポートを取得します。受験に合格したあと、海外に卒業旅行に行くつもりなので、あらかじめ取得しておこうと考えたわけです。これは確かに、90'sには、あるあるな現象でした。三泊四日の卒業旅行ですと、京都よりも韓国の方が、明らかに安かったんです。台湾や東南アジアも、まだ物価は安かったので、リーズナブルな金額で、海外卒業旅行に行けました。アニメ「けいおん」のように、ロンドンに行くグループも、まあrareでしたが、ありました(ヨーロッパは物価が高いので、大半は手近なアジア圏でした)。

 9.11以降、海外に行く流れは、一気に縮小してしまいました。 9.11 は、要するに、きっかけで、インターネットの発達によって、人はリアルで、はなく、ヴァーチャルな空間で、満足しはじめたと云うことだろうと、私は想像しています。

 先日、部活のOBのTくんが、ふらっと遊びに来ました。
「次回は車で来ます」と言ったので
「何に乗ってるんだ?」と聞くと
「ミニクーパーで、す」と云う返事が戻って来ました。
いきなり外車名が飛び出したので「へつ?」と、一瞬驚いてしまいました。本校のような中堅校には、外車を親がさくっと買ってくれるような、お金持ちの子供はいません。だいたいは、平均的な所得の家庭の子供です。18、9歳で、いきなりミニクーパーを買うなんて、すごすぎです。話を詳しく聞いてみると、中古を買って、自分で解体、メンテナンスをしたと言ってました。そうじゃないと、18、9歳では、ミニクーパーには乗れません。

 最初に勤めた学校に、卒業後、すぐに中古のMG ミジェットを買った生徒がいました。それを買うために、3年間、ずっと魚屋でバイトをしていたと、学校にMGミジェットを乗り付けて来た時、教えてくれました。18、9歳くらいで、自分の稼いだお金で、MGミジェット買って、それに乗るのは、我々の世代の価値観では、やはり超カッコいいことです。

 プラトンは、魂は理性、欲望、気概の三部分に分かれると説明しています。欲望は、ありすぎても困りますが、ある程度、バランス良く欲望を持っていた方が、生活に張りができて、より頑張れたりもします。

 私が高校生の頃は、車とかバイクとかは、まだ大きな価値を持っていましたから
「受験が終わったら、ハーレイに乗る」とか
「頑張って、スカG(日産のスカイライン2000GT。いわゆるハコスカ)を買う」とかと意気込んでいた受験生はたくさんいました。

 私は、受験が終わったら、奈良を歩くことに決めていました。ハーレイやスカG に較べると、実に地味な欲望です。人生で一番楽しかったのは、UKの音楽に完全にはまっていた中2ですが、2番目に楽しかったのは、奈良および奈良近辺を一人で歩いた19歳の春です。京都は、東山も嵐山も衣笠も、そこら中、アンノン族だらけでしたが、奈良にまでは押し寄せて来てませんでした。奈良には、アンノン族の女の子が好みそうな、華やかなものがなくて、どこを訪ねても、いい感じで、古色蒼然とサビれていました。奈良を歩いた勢いで、高野山にも上がりました。当時は、観光客が訪れるような場所ではなく、お四国八十八ヶ所巡りを終えた巡礼の方が、最後にお札を納める場所が、高野山でした。私は、お四国は済ませてませんでしたが、三十二番札所のすぐ傍に住んでいましたし、県内の札所くらいは、すべて廻っていました。で、勢いで、高野山にも足を運びました。

 先日、テレビ番組で、高野山を紹介していました。外国人観光客が、日々、押し寄せて来ていると報じていました。高野山は、霊的でfantasticな空間です。特に夜は、そういうオーラを放っています。それは、世界中の人が、理解できる普遍的なものなのかもしれません。

 受験が終わった18歳の春に、何をするのかは、とんでもなく大切なことです。生涯の思い出に残る、ここ一番のサビの季節だと言えます。90’sのバブリーな頃は、
「何にも決めてないんだったら、取り敢えず、バンコクに行け」と、アドバイスしていました。90’sのバンコクのカオサン通りのゲストハウスには、常に私の教え子が、複数いました。

 ネットは所詮、ネットです。リアルで解るのと、ヴァーチャルで、解るのとは、天と地の違いがあります。ヴァーチャルで解るのは、つまりカタログを読んで、概要がざっくり頭で解る程度の解り方です。ソクラテスの言う「本当に知る」は、パソコンの仮想空間では不可能です。「本当に知る」は、人やモノと直接向き合わなくては、体得できません。

 受験が終わって、すぐにできることを、いろいろ考えておくと、多少なりともモチベーションは高まる筈です。アーケードゲーム好きの方は、ゲームセンターに乗り込んで、行って、バトルゲームで、自分の力を試すとかでもいいと思います。池袋のゲームセンターには、盛り上げてくれるMCのお姉さんがいたりします(私の教え子が以前、この盛り上げMCのバイトをやってました)。アキバのカリスマメイドがいる店に行くとかでもいいと思います。ラブライブのことりちゃんのような、超絶可愛いメイドはいるわけないだろうと、予想しつつも、行ってみると、想定外の新しい発見があるのかもしれません。もしかしたら、ぼったくられたり。が、ネコ耳つけて、「お帰りなさいませ、ご主人さまにゃん」と言ってもらうだけで、プラス2000円くらいの、取り敢えず、払えなくもないレベルのぼったくです。それも、ある意味、社会勉強かもしれません。

 受験で英語力をつけて、終了後は、浅草で外国人観光客のガイドのボランティアをしたり、山谷の外国人しか泊まらないゲストハウスで、バイトをするとかもありです。今、流行のフィリピンの語学留学とかをしなくても、お金を貰いながら、英語力を磨く方法もあって、思い出もちゃんと残せそうです。

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