【受験ノート】横浜国立大学

 横浜国立大学の最寄り駅は、横浜市営地下鉄三つ沢上町駅で、そこから徒歩で15分ほど歩くと、広々としたキャンパスに到着します。正門から一番奥の理工学部までは、さらに10分ほど歩きます。キャンパスの中央付近に図書館や学生センターがあって、それなりに、便利なんですが、学生がもっとも頻繁に利用すると思われるコンビニ(ローソン)は、坂を上った西門の傍のとても不便な場所にあります。このへンは、学生の使い勝手とかを、まったく考慮してなくて、やっぱり(国立なので)お役所ねって、思ってしまいます。が、まあ教授会(理事会?)のお偉い方々には、コンビニなど、アカデミズムにとっては、きっと、枝葉末節の些事です。

 学校案内の巻頭のカラー写真には、観覧車やランドマークタワーが見えるみなとみらいや、横浜ベイブリッジなどを、臆面もなく使っています。が、例によって、港ヨコハマのイメードとはほど遠い、横浜駅からだと路線バスで、25分も奥に走らなければいけない丘陵地にキャンパスはあります。

 戦後の学制改革で、新大学が発足する時、3つの学校から文部省に「横浜大学にしたい」と云う申請があったそうです。三者が協議して、横浜国大、横浜市立大、神奈川大の名称で落ち着きました。三者それぞれ、港ヨコハマとは、かけ離れた場所にキャンパスはあります。

 学校案内には、「高度な研究と人材育成」と云うタイトルで、「Intelligent、Innovative、そしてInternationalで、高度な研究(Research)を研究倫理遵守のもとに推進し、知の創造と実践のための実践的学術の国際拠点-Key Instituteを形成します」などと、コテコテなことを書いています。見開きのページに、太字で、Be Active(実践性)、Be Open(開放性)、Be Innovative(先進性)、Be Global(国際性)と、大学の目標を明示しています。ディプロマ・ポリシー、インベスティゲーション実習、デバイス研究室、空気ショワーコア検出、コヒーレントフォノン分光法など、学校案内を読む高校生が、まず知らないと思われるカタカナ用語も、そこら中にあふれでいます。

 「一体、誰のために、何のために、学校案内を作成してるんですか?」と、高校の嫌味な教員として、突っ込みたい気分には、まあなります。が、学校案内に写っている学生たちは、いたって庶民的です。基本、ユニクロを着て、少しもお酒落じゃなく、まあどっちかと云うとださくて、するっと安心してしまいます。ええかっこしいの学校案内からも、丁寧に見て行くと、read between 1ines、横浜国大の学生の飾らない、素朴な素顔がちゃんと見えて来ます。

 教員にならない教育系(いわゆるゼロ免系)の専攻は不要だ、みたいなお達しが、文科省より出されたので、横浜国大は、すぐさま教育人間科学部の人間文化課程を切り捨て名称もsimpleに教育学部に戻し、教員養成のみに焦点を絞ったカリキュラムを再編成しました。「うわぁ、独立行政法人の筈なのに、文科省の言うことを、すぐさま、唯々諾々と受け入れてしまうヤワな学校なんだ」と、幾分、シニカルな目で見てしまいましたが、旧教育人間科学部時代は、B'zの稲葉さんや、映画監督の岩井俊二さんなどを出した、ある意味、プチカオス的な学部だっただけに、プチカオスをやめて、リスクを低減したと云うことだろうと、冷静に判断しています。リスクを低減したわけですから、高校の教師が文句を言う筋合いは、本来、ないのかもしれませんが、横浜国大らしいIdentityの大事な部分が、なくなったかもとは思ってしまいます。

 教育学部は、小学校教諭一種の免許状を、取得することが義務づけられています。小学校の免許状だけでなく、中学校教諭一種か、特別支援学校教諭一種のどちらかを、取得することも、どうやら相当強く、推奨している様子です。私も教育課程を取って、教員になりましたから、教職課程のカリキュラムが、どれだけコマ数が多く、大変なのかは承知しています。小・中両方の免許を取得するとなると、看護学部並みに、授業が隙間なく入ってしまいます。ボランティアや実習にも行かなければいけないので、ある意味、blackなキャンパスライフになってしまいそうです。が、まあ、小学校や中学校の現場は、労働時間と云う観点に立つと、blackな職場ですから(PM5:00に勤務時間は終了ですが、そこから最低、3時間くらいは残業しないと、日々の仕事はこなせません。小中の真面目な先生で、PM5:00の定時に退勤している人は、まずいません)学生時代から、black 慣れしておくと云うことなのかもしれません。経済的に安定しているからと云う理由で、看護学部に進むと、看護の世界に向いてない人は、間違いなく途中でリタイアしてしまいます(そういう卒業生を、私はかなりの数、見ました)。それと同じように、小中の教員も向いてないのに進むと、挫折します。が、まあ看護と違って、途中で方向転換しても、一般の会社に就職できますから、そのへンは、看護よりもリスクは低いと言えます(看護系は途中でリタイアしても、つぶしは効きません)。

 経済学部は、横浜高商の伝統を引き継ぐ看板学部だと言えます。カリキュラムポリシーの1番目に「数学・外国語・情報処理の基礎学力を修得させる教育」を掲げています。国立ですから、基本、数学の勉強はして来ています。数学ができなければ、経済は解りません。私は、政治経済学部出身で、必修の理論経済学Iと理論経済学Hを、何とか取得しましたが、レポートで作文をして何とかごまかしたと云うのが実態で、経済理論は、数学ができないので、さっぱり解りませんでした。私大の経済学部は、数学ではなく社会で受けられますが、経済学部に進学して、なおかつ、経済学についてある程度、基本的なことを理解したいと考えているのであれば、経済数学は必須です。もっとも、横浜国大の経済学部にも、微分積分ができない学生が、結構、いるらしいので、まあ、何とかなるっちゃ、なります。就職のことを考えると、有力な先生(つまり企業とコネのある先生)のゼミに入れるかどうかで、ほぼほぼ、すべてが決まってしまいます(まあ、これが世の中のリアルです)。

 横浜国大は、都市科学学部と云う新たな学部を立ち上げました。

 「都市科学部は、これからの都市づくり、都市社会構築を担うために理工系と人文社会系の知識を学ぶことで、文理両面の視点を備え、グローパル・ローカルにわたる多次元な世界を理解できる広い視野をもち、横断的な課題解決能力・総合力を身につけた、人材の育成を目指します」と、学校案内に書いてあります。正直、解ったような、解らないような、内容です。まだ、創設されたばかりです。カリキュラムは確立してないと推測できます。卒業生が出て、就職の実績などもはっきりしないと、評価は下せません。創設されたばかりの学部に進学することは、リスクが高いので、正直、あまりお勧めはしません。

 横浜国大には、留学生が沢山来ています。留学生を派遣できる海外の協定大学は、沢山あります。が、横浜国大から海外に留学する学生は、そう多いとは言えません。chanceがあるのにそのcahnceを生かさないのは、もったいないかなと云う気はします。

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