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自#066|やるべきことを「見える化」して、反復して確認することができるのが手帳の最大のメリット(自由note)

 第8回手帳甲子園で最優秀賞に選ばれた、創価高校の深瀬真歩さんの1週間分の手帳の書き込みの写真が、EduAの一面に掲載されていました。1日のタイムテーブルが、縦軸に刻まれていて、左側に青で予定を書き込み、右側に緑で実際にやったことを記しています。通学に1時間半かかるそうです。そこは、予定を書き込まず、90分間に実際に行ったことを、円グラフで表示しています。朝と帰りで、毎日、2回あります。合計180分を有効に使えば、その日の勉強量のノルマの半分は、電車の中で、仕上げることができます。

 高3に上がる春休みに、Mさんと云う一個上の先輩の合格体験を、4、5人の受験仲間と一緒に聞いたことがあります。Mさんは、現役で東大の文Ⅰに合格しました。田舎の県立高校の大秀才ですが、勉強ができると云うオーラは、1ミリも放ってませんでした。どっか山奥の兄ちゃんと云う雰囲気の素朴な先輩でした。Mさんは「ボクの話は、あんまり参考にならんと思うよ。だって、ボクは、片道3時間かけて、列車で通ってたから」と、開口一番、我々に告げました。

 東京の満員通勤電車ではありません。四国のローカルなディーゼル車です。片道3時間box席の椅子に座って勉強できます。「毎日、6時間、地道に勉強して、授業も必要なとこを集中して受講してたら、まあ普通に合格すると思うで」と、Mさんは言ってました。
「世界史の教科書を何回、読んだんですか?」と聞くと、「50回くらいかな」と、さらっと言われて驚きましたが、勉強以外、何もできない汽車通だから、50回、軽く読めたんだろうと思います。教科書は、慣れたら、1時間で20ページくらい読めます。6時間だったら120ページ。当時の教科書は、350ペーシくらいでしたから、3日で一巡します。150日、つまり5ヶ月もあれば、50回は読めます。3年間で、36ヶ月あります。その内の5ヶ月を、世界史に費やすことは、国立文系であっても、充分、可能です。

 Mさんが受験生だった頃は、ゲームボーイ、プレステ、ガラケー、スマホと云ったガゼットはありません。ポケベルすらまだなくて、本を読むか、眠るか、どちらかの時間の潰し方しかなかった、ある意味、古き良き時代です。

 深瀬さんは、朝の電車の中では、3つくらいの科目の復習をしています。帰りの電車の中の3つか4つのメニューのひとつは、スマホです。高1の2学期の中間試験の頃の手帳です。高1ですと、スマホは必需品です。

 下段がto do リストの枠で、そこに、その日やるべきことを、おそらく前日の夜に書き込んでいます。私も、文化祭や夏の大会前の忙しい時期になると、朝、登校するや否や、A-4の紙に赤のサインペンで、その日のto do リストを書いていました。忙しくなると、to do リストを作成しないと、メニューを消化できなくなります。文化祭や大会の当日は、さらに忙しくなります。当日、何をするか考えながら行動したりすることは、まずできません。ほとんど反射神経で、次の行動に移って行きます。本当に忙しい日は、前の日にto do リストを、タイムテーブルに合わせて書き込んでおいて、朝の電車の中や、イベントの開始時刻前に、何回も頭の中で、メニューをシュミレーションしておきます。そうすると、考えなくても、動けるようになります。

 手帳にto do リストを書いておけば、手帳を開く度に、何度もメニューを確認することになります。人間は、ちゃんと理解できていることは、実行できるんです。to do リストを何回も見て、やるべきことが理解できたら、そのメニューは、確実に仕上げられます。やるべきことを「見える化」して、それを何度も反復して確認することができること、これが、手帳の最大のメリットだと、私は考えています。

 深瀬さんの手帳は、右側の余白に毎日の振り返りを書いています。各科目ごとの振り返りも、1週間単位で、ABCDEの自己評価をつけ、コメントも添えて、振り返っています。週の目標も、毎朝5時起床、目標勉強時間突破、通学時間を有効に、と3つ書いています。蛍光ペンなども使って、全体をカラフルにして、結構、詰め詰めで、手帳を最大限、活用しています。

 この手帳は、学校で配布されています。担任の先生が週1で、確認する仕組みです。その週のまとめのコメントを書く欄もあります。担任の先生は、アドバイス、感想などを、簡潔な文章で書き込みます。つまり、ビジネスの世界のホウレンソウを、学校現場に持ち込むために、手帳を導入したと云う風にも言えます。結局は、手帳を通して、生徒を管理すると云うことに(ぶっちゃけな言い方をすると)なってしまいます。

 中学生は、親が9割みたいな本を、7、8冊読みました。中学受験の本質は、親(母親)が、どれくらい自分の子供を、おだて、すかし、だまして、頑張らせられるかどうかに、かかっています。子供は、放置すれば遊びます。高校生も、放置すれば、遊んでしまうのであれば、手帳を通して、ある程度、ゆるやかに管理するのは、やむえない時代に来ているんだろうと思います。高校が、生徒を管理すると云うことになると、生徒の自主性、自律性、主体性を開花させるのは、大学の役目だってことに、やっぱりなってしまいます。結局、大学に丸投げしてしまっているんです。大学に丸投げしておいて、大学は何もしてくれないなどと、勝手な文句を言うことはできません。

 私も、深瀬さんが使っているのと、ほぼ同じ手帳を使っています。手帳に書き込む文字の量も、手帳に費やす時間も、おそらく深瀬さんの30分の1以下です。手帳は、仕事をするためのツールのひとつに、過ぎないからです。深瀬さんの場合、手帳を書くことが目的になってしまっているってとこがあります。じゃなければ、最優秀賞は、獲得できません。が、何かに夢中になることはいいことです。手帳を書くことに夢中になっても、全然、構いません。私が見ているのは、高1の10月の中間試験の頃の一週間分だけですが、3年間、これを書き続ければ、手帳を、ぱらぱらっと捲って、ページを開けば、その頃、何をしていたのか、一目瞭然で解ります。過去をしっかりと振り返ることができれば、これからやるべきことが、見えて来たりもします。受験前に、気持ちが落ち込んだり、凹んだりしても、これまで書き込んだ手帳を見れば、自分がやって来たことが、見える化されていますから、即座に自信を取り戻すこともできます。

 公立の中堅校も、手帳を使って、生徒の勉強状況を確認し、アドバイス、声かけをすべき時期に来ていると思います。

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