#短編小説
天使が街にやってきた(後編)
「……家に戻るのが嫌で仕方ねえな」
オールドハイト東地区、サイの住むアパート前。普段は使わない喫茶店に入り、窓際──ガラスの壁で道路と隔てた席で、コーヒーとサンドイッチをつまみながら、ドモンとサイは見慣れたアパートを見上げていた。
窓にはブラインドが降りていて、中の様子は伺いしれない。
「ともかく、奴さんはあんたを最終的には殺すつもりでしょう」
ドモンは端末に来たメールをサイに見せながら言っ
天使が街にやってきた(前編)
「君も隅に置けませんねえ」
ニタニタと笑顔でそう言って笑えあえたのなら。それは幸せなことだっただろう。
残念ながら、その相手だった男──サイにはそういう感情はない。むしろ憂鬱そうな表情だ。オールドハイト、セントラルパーク。暖かい季節だ。ベンチに座り、新聞や本、タブレットで文化を摂取する──白い雲が伸びて消える。
「いつの間に同棲なんか始めたんです? 仕事ばっかりだと思ってましたけど、やることや