マガジンのカバー画像

四角いマットの人食い狼

13
密かに本物と入れ替わったレスラー、ローン・ウルフと、プロレスの神殺しを目論む若手最強の男、ハラダ。二人は果たして『戦うことができるのか?』 プロレス政治劇。
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

四角いマットの人食い狼(4)

四角いマットの人食い狼(4)

 一週間ほどしてから、ゴッドプロレス側は緊急の記者会見を開いた。帝国プラザホテルの鶴の間──様々な芸能人が華やかな式を執り行ってきたこの場は、まるで戦いを始める前のようにピリピリとした空気が支配していた。

「ハラダ選手! 説明してくださいよ!」

 日本スポーツの記者が気勢をあげる。

「言ったとおりですよ。自分は明日からリブレに移籍して、そこのベルトを獲ります」

 天井に手がくっつくのではな

もっとみる
四角いマットの人食い狼(3)

四角いマットの人食い狼(3)

 三時間後──
 神プロ道場にて。
 二メートル近くの巨体が、鷹が滑空し獲物を捉えるかの如く、鋭いドロップキックを放つ。
『GOD P.W』のロゴが入ったシャツ姿の男は、同じシャツのレスラーの胸板を貫き、一撃でふっ飛ばした。
 練習とはいえ、激しいスパーリング──しかしそれがハラダの流儀だった。

「ハラダくん! 練習中すまない」

 古川は彼に声をかけた。 
 分厚い胸板ながら、プロレスラーとし

もっとみる