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サウナで『クラファン』に取り組む人に伝えたいこと

寒かった冬から一転、外気浴が気持ち良い季節がやってきましたね。2日前に以下のようなツイートをしてみたところ、思いがけない反響があったため急きょ筆をとることにしました。

ある企画でサウナクラファンの全案件をまとめるという作業があったのですが、せっかくのアウトプットを手元にとどめておくのもなぁ…と思い、Twitterで配布をすることに。すると予想以上の反響があったわけです。

ひょっとすると、クラファンを考えている人って実は多いのかも…?今日はそんな方々向けに、サウナでクラファンを検討するときの気付きやアドバイスなどを書いてみることにします。即席で書くものになるので、あまりまとまりがない内容となるかもしれません。その点はご容赦くださいませ。

クラファン5年分をまとめてみた気付き

先に紹介したリストについては、筆者が目見でざっとまとめたものになります。もしかしたら一部抜け漏れがあるかもしれません、それに気付かれた方はお知らせ頂けましたら、いつでも修正しますのでおっしゃってください。

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項目については最小限にとどめており、「プロジェクト終了日」「支援金額」「クラファンサービス」「プロジェクトタイトル」「事業体ジャンル」「事業者名」「リンク」のみ。ここからわかることをまとめていきます。

まずはジャンル別の分布からまとめてみます。支援金額別でまとめようとも考えたのですが、案件ごとで振れ幅が大きかったため、案件数ベースで計測しました。なおノベルティ=サウナグッズ、個人=事業者以外、サウナ販売=テントサウナ開発等、サウナ店舗=小規模サウナ施設という定義です。

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蓋を開けてみると、サウナビルド絡みの案件が合計69案件(宿泊:19、温浴:18、アウトドア:17、サウナ店舗:13、飲食:2)と最多でした。また、2021年に入ってからのトレンドですが、サウナ単体イベントで案件事例が増えているのも興味深いところです。

サウナを新設するにあたっては、温浴をはじめとする事業者を中心に、消費者へ体験提供ができる業種が主にクラファンを活用しているという印象を受けます。とりわけ宿泊業、アウトドア業、飲食業などは補助金関連でよくみられる業種ですね。小規模サウナ専門店による起案数も増えてきています。

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次いで案件数が多いノベルティについてもまとめてみました。もっとも多かったのはサウナハットの案件、プライベート(いわゆるテントサウナ等で使用するストーン等の備品)、タオルやポンチョ、アロマという並びでした。商品単価問わず、サウナユースでの実用性重視で起案されている印象です。

続いてサウナクラファン全体の案件数推移をみていきます。1Q(1月~3月)という括りで、各クオーターごとにどれだけの案件数があったのかを累計でまとめました。※対象月はプロジェクト掲載終了日で設定しています。

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コロナ以前はほぼ3ヶ月に1度、案件が出るかどうかという状況でしたが、コロナに突入してから1Qにつき平均5案件が立ち上がるペースに、2021年には平均17案件まで伸び、2022年1Q単体だけで45案件も起案されています。

最大1兆円とも言われる温浴マーケットの中でみると、点の情報にしかすぎないのですが、クラファンにおける案件数の伸び方は、コロナ以降のサウナの盛り上がりとおよそ連動しているように感じるのは私だけでしょうか?

コロナ以降のサウナブームをまとめたnoteも出していますので、併せてご一読いただけたらと思います。とりわけ相関しているように感じるのは、2021年末には新規のサウナ施設が爆増し、いよいよ目では追えなくなってきたということです。

2022年1Q単体でみても45案件もあるというのは、まさしく混沌とした状態を表しているといってもよいでしょう。コロナ以前の合計が11案件、2020年合計が21案件、2021年は70案件、そして2022年の1Qだけで45案件です。2022年末には一体どれだけの案件数が起案されていることでしょう……

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続いて各案件ごとのサクセス率を算出してみました。2022年は掲載中の案件が多いため、2018年~2021年のデータベースを元にしています。すると「支援金額100万円以上の案件はサクセス率が85%以上」という、興味深い事実がわかりました。

100万円以下のプロジェクトでもサクセスしている事例はあるのですが、サクセス率は50%以下にとどまってしまいます。一方で100万円以上の支援を集めた案件は最低でも達成率70%以上、さらに金額の大小に関わらず、支援金額400万円を超える案件は、サクセス率がほぼ10割という結果でした。

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100万円以上の支援額があった案件は、目標金額をいくらぐらいで設定しているのかも調べてみました。相場としては100万円台が多く、意外にも控えめな目標設定をしていることがわかりました。実際の支援額は数百万円を超えることがあっても、300万円以上を目標に据えた事例はごくまれでした。

次いで50万円以下が多くなってますが、こちらはMakuakeによる案件なので参考程度にみるのがよさそうです。※Makuakeでは支援額が1,000万円を超える案件でも、目標金額を比較的低めに設定する傾向があったためです。

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そしてクラファンにおいては「初速」という指標も影響します。昨日たまたま開始したばかりのプロジェクトを見つけましたが、公開からわずか半日で、目標金額の50%以上を達成しています。支援者数の多さが際立っていますが、目標金額とリターンの単価設定が絶妙なバランスで成立しています。

CAMPFIREによると、公開から1週間で目標50%を超えたプロジェクトは、最終的にサクセスする確率が8割を超えるとのことです。全案件をリアルタイムで追えていないのが心苦しいのですが、100万円以上の支援額があった案件は、初速の条件もクリアしている可能性が高いのではないでしょうか。

サウナクラファンのリアルを書いてみる

では目標金額を100万円以上に設定さえすれば、サクセス率が高まるかも…と思われたかもしれませんが、決してそうではないのがクラウドファンディングの厳しいところです。実際に調べてみると、支援額が100万円以上に到達した案件は全体の4割程度にとどまっています。

目標金額はあくまで目標で、「100万円以上の支援額に値するほどのバリューがあるかどうか」が前提条件なのでしょう。例えばCAMPFIREの平均支援額は、1人あたり1万円前後が相場と聞いたことがあります。100名がみな1万円を払いたいと思えるバリューさえあれば、目標達成へと近づきます。

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たとえ支援者数が100名を割っていたとしても、10名であれば10万円分のバリューを提供できていれば良いのかもしれません。もっと極端な例ですが、たった1名が100万円払いたいと思ったら、その時点で100万円のバリューが創出できている。リターンとの兼ね合いで想定しておきたい点ですね。

ちなみに、サクセス率もあくまで指標の一つにしかすぎません。プロジェクトがサクセスに至らなくとも、例えばサウナビルドの案件なら、途中で施工を止めるという選択肢は考えづらいでしょう。そういった観点でも、100万円以上のバリューを提示できるか否かが資金調達のポイントになります。

100万円以上の支援額に値するほどのバリューとは何か。サウナ開業であれば、いかに「行かなきゃ」という強い動機をユーザーに感じさせられるか。サウナグッズであれば、いかに「買わなきゃ」という購買欲求を刺激させられるか。この事前の掘り下げが、何より重要なのではないかと考えます。

年始のnoteにも書きましたが、サウナ開業ラッシュが続く昨今、地方ではサ旅誘致の競争が激化し、サウナグッズは多数であって多様ではない状態が目立つようになりました。結果、サウナで新規開業 or グッズ新発売=クラファンでも即サクセスの状況となることは、先ず以て考えにくいでしょう。

敢えてクラファンを選択する意味とは

クラファンのアドバイスを求められる機会が増えてきたのですが、お話を伺うたびに「クラファンをやること自体が目的化してしまう」ケースが非常に目立つ…と感じております。サウナの新規開業等を行う際、「各方面から資金調達をしなければ…」と思い、つい手を出してしまうのかもしれません。

資金調達をなるべく多く、という考え方自体は正しいのですが、果たしてクラファンの投資対効果が良いのか、というとまた別問題です。例えば、クラファンオーナーが「手数料だけでこれだけ取られるとは思ってなかった…」と口にされる機会が非常に多く、さらに消費税までもが上乗せされます。

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業界最大手のCAMPFIREは、初回プロジェクト限定で手数料を10%に割り引くなど、定期的にキャンペーンを行っている機会が目立ちます。これが事実上の最安値で、手数料10%+消費税10%の計20%以上が支援金額から差し引かれることを認識しておきましょう。※創業2年以内事業者は課税対象外

支援金額が100万円の場合は20万円、1,000万円の場合は200万円も支援金額とは別に差し引かれてしまいます。200万円を換算すると、サウナ小屋が1棟建ってしまうほどの予算規模です。200万円分の損失を考えると、果たしてクラファンという選択が本当に正しいのかを自問したいところですよね…

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クラファンの投資対効果というのはコスト面だけではありません。プロジェクト支援後のリターンの開発から配送、定期的な活動報告を欠かさず行うなど、支援者1人1人に対してのコミュニケーションコストが想定外だった…と口にされる方も。マメでないと務まらないのは容易に想像ができます。

これほどの労力をかけてまで、なぜクラファンという手段を選択するのか。それは「未来のファンを育て、開業前に売上見込みを立てるためのテストマーケティング」を試みるためです。もっというとリピーターのロイヤリティ育成がゴールで、資金調達や賑やかしはあくまでプロセスの一つなのです。

プロジェクトを設計するときのポイント

まとめると、”100万円以上の支援額に値するほどのバリュー” が ”未来のファンに受け入れられるか” をテストするための手段、それがクラウドファンディングなのです。たとえプロジェクトがサクセスしなくとも、支援者という生のフィードバックを元に、開業前に貴重な修正を行うことができます。

ではバリューとはどのように掘り下げるのか、が論点になるかと思いますが、この話題だけでも1万字ぐらいは書けそうなので別の機会にまとめさせてください。コンセプトメイキングやペルソナ設定などの壁打ちは非公式に行ってまいりましたが、案件ご相談は個別にDMいただけたら幸いです。

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最後に、プロジェクトを作成する際のTipsをいくつか紹介して締めくくりたいと思います。バリューの掘り下げが前提で、あくまでTipsは小手先に過ぎませんので、その点は留意いただきながらお読みいただけますと幸いです。

まずはタイトルですが、サクセス事例からみると比較的シンプルなテキストにとどまる傾向にあります。要素を分解すると【どんなバリューがあるか】【場所】【ミッション】が盛り込まれている事例が目立ちますね。例を挙げるなら ”究極のサウナ『KIWAMI』を作ります!” などが模範例でしょうか。

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そしてプロジェクトは初見が命。よく、本文のライティングをどうしたらよいか?とアドバイスを求められるのですが、タイトルも含めたファーストビューで、いかにバリューを一発で理解してもらえるかが勝負の分かれ目になります。ファーストビューの作り込みにしっかりリソースを割きましょう。

新設するサウナが施工前であったとしても、体験を想起できるイラストを設定してみたり、ムービーを作成してみたり、サウナ施工中の図面やパースを掲出してみたり、どんな場所になるのか?をとにかく見える化することが大事です。(ただ早出しすればよいという話ではないのでその点はご注意を)

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次に起案者のプロファイルですね。起案者がどんな人であるのかを書くのは、もはや必須科目という認識である方が妥当であるかと思います。プロファイルは差別化できたらベターではあるのですが、実際は支援者目線に立つと、プロファイル以上にバリューの中身をみられることの方が多いです。

【起案者の出自】【プロジェクト立上げに至った経緯】【プロジェクト実行になぜ支援金額が必要なのか】を最低限押さえた上で、それ以上にバリューの掘り下げやファーストビュー設計にリソースを割きましょう。どれだけ起案者が優れていても、バリューを欠損していたなら支援には至りません。

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リターンでどのようななものを用意したらよいか?もよく聞かれる項目なんですが、リターンも極力シンプルに設計した方が良いと考えています。バリューがあるサウナ施設や商品を提示できていたら、対価としては体験予約を原価割れしない程度でお得に利用できるという範囲で問題ないかと。

リターンにTシャツやハットなどを苦し紛れに付けるケースが散見されますが、これは必須科目ではないと考えます。著名人とサウナ同席できる等の権利などあれば活用するに越したことはないですが、ノベルティの制作にも時間がかかりますし、より優先度が高いことにリソースを割くべきでしょう。

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CAMPFIREにおける支援額の平均単価は1万円前後と言われていますが、一方で単価の高いリターンを設計することについては大いに賛成です。支援者が100名いたとして動機はわからないけれども、大きな額を投資してくださる1名は必ず存在します。これ、不思議な現象なんですが事実なんですよね…

また、サウナ新規開業案件なら「サウナビルドに参加できる権」などあればぜひご検討ください。世の中には支援額以上に、サウナづくりに携わってみたいというニーズが意外に多いものです。ものづくりへの参加体験こそがプライスレスで、まさにプロセスエコノミーを体現できていると思います。

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最後に見過ごされやすいポイントではありますが、サクセス後の活動報告も本当に大事なアクションです。商品が手元に届いたりサウナ施設がオープンするのは半年から1年以上かかる事例もあり、支援者にとってはモヤモヤしてしまうことが本当に多いのです。この接点を決して侮ってはなりません。

実は活動報告というのは、もっとも見込み客と密にコミュニケーションが取れる場でもあります。そのようなホットな接点って探してみると存外見当たらなかったりするもので、見方を変えれば、サウナ開業後のリピーターを作るという観点ではものすごいチャンスなのです。ここに気付けるかどうかがプロジェクトの成否を分けるポイントとなるかもしれません。

最後にまとめ

以上、簡単ながらクラファンを設計するときのポイントを取り上げてみました。経験者からは一笑されかねない、当たり前すぎるTipsばかりを記載しましたが、普段アドバイスを求められた際に繰り返しお伝えしていることをまとめたつもりです。

サウナブームが加速化するに従い、クラファンを含めて本当に競争が激化してきています。そんな中で有象無象に埋もれず、数多くの反響を集める魅力的なプロジェクトが少しでも増えたらと思い、筆をとりました。プロジェクト作成の一助になりましたら幸いです!

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