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【詩】京都物語

子どもを生むこと育てること
一度も想像したことなんかなかったのに
アナタノコドモガホシイ
目の前に用意された台本のセリフを忠実に読んでみる
ソレハウレシイナ
あなたからも棒読みのセリフが返ってきて
わたしたちは冬の宇治川の橋の上
震えながら学芸会をしていた
みんなに内緒であなたと
こっそり化野に行ったとき
竹林に風が吹いて
さらさらと鳴って
わたしは思わず立ち止まった
どうしたん、とあなたは聞く
竹の音、とわたしは答える
竹林は蚊が出るから嫌いや
ああ
予感は当たって
あのときの化野からは
あなたの姿だけが永遠に消えている
記憶の風景からは
真っ先に消え去るけれど
あなたはわたしの物語のなかで
新たに再生産されては蘇る
都合のいいように書き換えられる
もしあなたが
物語になどならずに
記憶の風景のなかにとどまりたいと言うのならば
見せてよ
あなたの本気のいのちを

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