【詩】誕生

泥でできた
子どもを生みました
産湯を使ったら
跡形もなく
溶けていきました
湿気がよくなかったのだろうと
今度は
砂でできた
子どもを生みました
難産でした
出てくるそばから
風に吹かれて
消えていきました
私には子どもが授からない
すべては涙になりました
涙とは私のことです
どこからともなく
水が流れてきて
ひたひたと
横たわる身体を濡らし
豊かな髪と
指先から
水に溶け出し
やがてその身は
流れ去ってしまうでしょう
もはやそこにあるのは
ただ清冽な泉だけで
まさかひとりの人間が
ここに溶けているなどとは
誰も思うことはないでしょう

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