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【移住と起業】里山の"利点"を活かしてビジネスをする。// 移住STORY14

田舎で起業はいかが?

最近の移住のトレンドは「転職なき移住」とのこと。都会に住んでいる人が、仕事を辞めずに移住を実現するーー。移住先としては、都会から比較的近い田舎。つまり、静岡県や千葉、それと、我が群馬県の高崎や吉岡町なども人気だそう。私が移住の際に情報収集でお世話になった「ふるさと回帰支援センター」のスタッフさんによると、仕事や暮らしぶりを変えないで移住したいと相談する人が多い、と。
でも、私個人としては、せっかく移住するなら、今までのライフスタイルを変えて、地方暮らしを楽しむのも1つの選択肢として検討してほしいと思うのです。具体的には、起業という選択肢を。なぜかというと、私達自身がこれまでの生活を180度変えて、群馬の里山・高山村に移住したから。夫は、移住をきっかけに勤めていた会社を退職しました。トレンドである「転職なき移住」とは真逆で、この里山で自分達の事業を営んでいます。移住して1年半。最初は収入は大丈夫なのか? 事業はつぶれてしまわないか? という不安でいっぱいでしたが、なんとかここまで続けられています。自分の事業を地方で続けるポイントとしては、田舎の"欠点"ではなく”利点”をうまく活用すること。今日は、私達がどんなふうに田舎の"利点"を活用して事業を行っているのか、これまでの1年半の経験をまとめてみたいと思います。この記事が、これから移住をして起業をする人、田舎でビジネスを展開しようとする人の役に立てますように。

田舎に住んでいるからこそ、オンラインツールの活用スキルが磨かれる

田舎でビジネスをする上ではオンラインの活用は必須かと思います。私は実は、個人的にはSNSやインターネットとかAIとか、そういう便利なツールにはどっぷりとつかりたくないと考えているのですが(アーミッシュ文化に魅せられているため)、田舎でビジネスを成り立たせるためにはそうも言ってられません。
SNSで事業活動の発信を行い、オンラインショップで全国のお客様と接点を持ち、必要な資材や材料などもオンラインで購入することが日常となっています。オフライン化は私の個人的な課題ですが、これから田舎で起業しようとする方には「オンラインツールの活用」を強くお勧めします。「そういうの、苦手だから…」と抵抗を感じる方も多いと思いますが、頑張って抵抗を飛び越えて欲しいです。田舎に住んでいるからこそ、オンラインを積極的に活用し、オンラインツールを使いこなすスキルを磨く。オフラインでアクセスできる資源に限界がある環境に住んでいるからこそ、このスキルはどんどん伸びるはずです。むしろこのスキルをどんどん伸ばして、強みにしたいくらいです。ポスト・コロナのこれからの日本では、オンライン上でどれだけ深く広い活動を展開できるかが、ビジネスをする上で重要になってくると感じています。

田舎だからこそ利用のチャンスがある。補助金、商工会、自治体の支援を活用する

東京で事業を営んでいた時は、地方自治体に中小企業や個人事業主に対する支援がたくさんあることをまったく知りませんでした。東京では事業者が多すぎるので、ごく限られた事業主しかその恩恵を受けられないのでしょう。田舎では、状況が変わってきます。事業者のパイがそもそも少ないので、商工会/自治体の持っている予算も分配されやすい。競争率も低いのです。この高山村に移住してからまだ1年半ですが、活用させて頂いた支援はこんなにあります。
・商工会の「専門家派遣制度」
・高山村の「創業支援金制度」
・群馬県の「新ぐんまチャレンジ支援金」

このほかにも、商工会の支援を受けて「小規模事業持続化補助金」に申請をしたり(まだ通っていない…汗)、移住の際に自治体から移住支援金を頂いたりもしました。
往々にして、地方自治体には地方で事業を行う人に対する支援制度がそれぞれ準備されています。制度をしっかりと調べて、活用できるものはどんどん活用していくのがおすすめです。こういう制度をキャッチするアンテナもビンビンとはっておきましょう。

支出が少ないので、大きく収入を上げなくてよい

人気の田舎は都会に匹敵するくらいの家賃、物価の場合もありますが、往々にして田舎の方が支出が少ないです。ここ高山村は、土地も安い、家賃も安い、物価も安い。(自動車経費はかかるものの)生活コストは東京に住んでいたときの1/2くらいになりました。生活コストが安い上に、更に、消費を喚起される機会が圧倒的に少ないので、無駄遣いがないというのも意外なポイントでした。全体的な支出額が半分になると、稼がなくてはいけない金額も少なくなります。これは、田舎暮らし/田舎ビジネスにおける大きなアドバンテージです。目標の売上額が下がるので、事業運営が疲弊しにくいです。そこそこ稼げていれば、十分食べていけるという感覚なので、ビジネスの隅々に、余裕が生まれます。仕事に余裕が生まれると、生活にも余裕が生まれます。ちょっと手の込んだ料理を楽しんだり、趣味を増やしたり、友人とゆっくりアウトドアを楽しんだり、子どもと時間を気にせず思い切り遊んだり……。高い売上目標を追う必要がない分、暮らしに「余白」が生まれます。基本的には、売上が高ければ高いほどやる事が多く、仕事に費やす時間とエネルギーが多いです。逆にいうと、売上が低ければ低いほど自分の暮らしや家族に時間とエネルギーを費やせる。これは私の個人的な持論なのですが、暮らしに必要なお金がある限り、年収は低ければ低いほど良いのではないかと思うのです。自分の人生を、仕事で忙しくし過ぎない。それを叶えるために、必要な仕事量を抑えられる田舎暮らしは最適だと思います。もちろん、田舎でもたくさん稼いでいる方、たくさんいらっしゃいます……。そういう人達は、本当に時間的にも経済的にも余裕があって、感度が高く、人生を楽しんでいて、そして他人に優しいです。

在庫置き場、創作活動スペース、おうちサロン、民泊……広いスペースを活用する

田舎ビジネスの利点は、なんといっても広いスペース! 東京ではバーチャルオフィスを借りたりコワーキングスペースに通ったりビジネスを行う「場」の確保は大きな課題でした。が、地方では「場」を準備するコストがとても安い……!オフィスを一部屋借りても良いし、そもそも住む家が広いので、おうち起業も現実的。私の場合は、自宅の1室を仕事部屋にしており、そこでワンピースの梱包&発送作業をしています。収納スペースも広いので、生地をストックしたり展示会用の什器も収まります。東京ではトランクルームを借りていたので、その分の経費も浮きました(経費が浮くということは、稼がなくてはいけない額も減るということ!)。在庫置き場としての利用のほか、広いスペースは例えばこんな使い方もできそうです。
・airbnbなどの民泊に解放する
・エステやマッセージやリラクゼーション、ネイルサロンなどのサロンにする
・絵を描いたりクラフトを作ったり、創作活動を行うアトリエにする
などなど。起こしたいビジネスによって、さまざまな活用方法があります。スペースがあること、スペースコストが低いことは、田舎での起業の大きなアドバンテージです。

地方新聞、ローカル雑誌など、ローカルメディアに取り上げてもらう

東京で事業を運営していた頃、一度だけネット新聞に取り上げて頂いたことがあります。そのおかげで展示会の来場者が増え、とても感謝したという経験がありました。ここ高山村に移住した際も、新聞社などのローカルメディアの関係者にお会いする機会があると、積極的にアピールを続けていました。「機会があったら誌面に掲載してください!」と、ただの図々しい人ですね……笑 しかし、地道な営業活動が実ってか、上毛新聞さんや朝日ぐんまさんなどとの縁があり、すでに何度か私たちのビジネスを取り上げて頂いております。
これは、都会だったらあり得ないことだとしみじみ感じます。私達の小さい事業の小さな活動は、都心に溢れる大量のニュースとネタにすぐに埋もれてしまいます。対して地方新聞やローカル雑誌などのローカルメディアは、地元のビジネスにしっかりと光を当ててくれる。とてもありがたいことです。そして、購読者も意外と多いのです。地元の方に存在を知ってもらえると、何かあった時に声をかけてもらったり、仕事を発注してもらったりと、ビジネスの広がりが生まれます。こういう嬉しい効果を期待できるので、ローカルメディアへの図々しい営業活動は、これからも続けていこうと思います(笑)

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もちろん、ここに書いたことは必ずしも当てはまらない事業者・事業体も多いはずです。私もまだまだ、田舎でのビジネスは2年生になったばかり。これから挫折も苦労もたくさんあるはずです。また、学びや発見があったら発信していきますね。

山中麻葉 Maha Yamanaka
1984年生まれ。30歳を機にサラリーマン生活に終止符を打ち、ワンピースのオーダーメードのお店を起業。2021年夏、群馬県高山村に、夫と娘と移住。夢は、小さなアーミッシュ村をつくること。

> Down to Earth アーミッシュワンピースのお店
> instagram @shop_down_to_earth
> 著書「アーミッシュカントリーの美しい暮らし」

【お知らせ】
アーミッシュワンピース展示販売会予定
4月9日 熊本県南阿蘇村 お宿「青い空と白い龍」

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