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コールセンターで見えた人間模様

以前、コールセンターで働いていたことがある。

某IT企業のエンドユーザーサポートで、なかなかの規模のセンターだった。

やろうと思ったキッカケは、「電話という声だけで相手とコミュニケーションを取る手段がない中で、自分がどれだけ出来るのか」を試してみたかったから。

週5日、フルタイムでオペレーターとして電話対応に明け暮れていた。


コールセンターで働く人々の事情は様々だ。

当時僕がいたコールセンターで働いているほとんどの人は派遣社員で、年齢層は10~50代とバラバラ。男女の割合も半々というところ。

就活をしたものの上手くいかず、派遣に流れてきた新卒。ご家族を持った主婦さん。夢を追う若者。心身に病気を抱え、力仕事で働くことが難しいという人。

とにかく雑多で、まさに社会の縮図という感じがした。


離職率は恐ろしいくらいに高かった。例えば新しく10人入ってきたとしたら、3か月後に残ってるのは1~2人なんてザラだ。大体はある日急に来なくなり、そのままフェードアウトするパターンだった。

他人のことを言えないが、正直働いている人のスペックは低かった。電話を取るのが仕事なのに「電話を取りたくない」と言い始めたり、問い合わせしてきたカスタマー(顧客)と喧嘩を始めたり、ヤバいミスを連発したりと、日々問題が絶えなかった。彼等の尻拭いを何度してきたか分からない。

そして、問い合わせしてくるカスタマーも凄まじかった。

「殺すぞ」や「バカかお前は」という暴言を当たり前に吐く。オペレーターが女性の際にセクハラ発言を連発する。規約に則って説明し、実際に規約も見せてるのに納得しない。

コミュニケーションが電話という形だと、対面の時よりも強気に出る人が多いらしく、本性も出やすい。

これが原因でただでさえ高い離職率はさらに高まり、センターは常に人手不足だった。

あまり言いたくないが、コールセンターではオペレーター側とカスタマー側のレベルは比例するものなのかもしれないと思った。


とはいえ、個人的にはコールセンターのオペレーターとして働いていた時代はなかなか面白かった。

僕は普段からテンションが変わらない方だし、異常事態が起きても「おー何か起きてる」くらいのノンビリとした構えだったのが良かったのかもしれない。

カスタマーから暴言など吐かれても、「スゴい怒ってるなぁ。疲れないのかな。」くらいにしか思わなかったし、内部の醜い人間関係も「お互い不毛な戦いしてるなぁ。」と思いながら眺めていた。

良く言えばメンタルが強く、悪く言えば誰に対しても無関心。

仕事なので自分の中で決めた最低限のラインは守っていたが、それ以上のことは特段指示命令がない限りはやらなかった。

ただコールセンターで3年以上働いた経験からすると、おそらくそれくらいの距離間でちょうどいいように感じる。


コールセンターで働く中で、生々しい人間模様を何度も垣間見た。

職場内では不倫関係となった男女がいたり、4人のおばさんグループのメンバーが別々の場所で互いの悪口を言っていたり。

問い合わせてくる人は、離婚した奥さんが旦那名義で勝手に契約し請求が発生したサービスの料金を返せと怒鳴ってきたり、親の財布から子どもがクレジットカードを盗み、それで買われてしまったサービスを取り消してほしいと泣きながら言われたり。

どこにでもあるであろう人間模様だが、それを間近で見ていると何とも言えない気持ちになる。

そして、日々を平和に暮らせている自分が、何て素晴らしいことなんだろうとも思えてくる。


特にやりたいこともなく、将来に迷っている人は1度コールセンターで働いてみることをオススメします。

場所にもよると思いますが、コールセンターの『電話というツールのみでやり取りする仕事』は間違いなくあなたのコミュニケーション力を鍛えてくれます。

職場内には「こんな人でも金もらって生きていけるんだな・・・」という人がいて愕然とすることもありますが、同時に「あれで大丈夫なら、自分でも何とかやっていけるな」と自信がつきます。

カスタマーの中にはヤバいタイプの人が一定数いて理不尽なことを言われ落ち込むこともあるかもしれませんが、気にしなくてOKです。彼等はあなたに怒ってるのではなくあなたの背後にある会社の制度に怒っているだけです。それをあなたに怒っている時点で意味のないことをしている可哀想な人です。

それに慣れてくると、「はいはい。」と思えてきて鍛えられてきて、多少のことでは動じなくなります。

いずれAIに取って代わられると言われるコールセンター業務ですが、人間の機微を正確に捉える技術が完成するのはまだ時間がかかると思います。

人手不足な場所が多く、その気になれば割かしすぐ入れるところばかりなので、人生経験の1つとしていかがでしょうか。

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