成功を収めた先にあるものが、必ずしもハッピーエンドとは限らない
昨日、こんな映画を観た。
2007年に起きたリーマン・ショックを題材に、その異変をいち早く察知し大儲けした男達の物語だ。
内容としては完全に投資関連であり、専門用語が当たり前のようにバンバン登場するので、その辺りの知識がない人にはよく分からん状態になるかもしれない。
が、内容はさておき人間の心理や感情の生々しさを見たいという方にはこの作品はとても良いものだと思う。
いきなりネタバレになってしまうが、結論を言うとこの表紙に出ている4人は確かに社会的(経済面)には成功する。
誰もが世界的な大不況の煽りを受け阿鼻叫喚の中、巨額の利益を得ていわゆる『勝ち抜け』をすることが出来た。
しかし、彼等は全く幸せそうではないし、勝ち誇ってもいないし、それまで暴落なんてするはずがないと彼等を嘲笑っていた人間に「ざまあみろ」と吐き捨てたりすることもない。
あるのは虚しさや喪失感、何も出来ないという絶望感さえ感じさせるような表情をしたまま、作品はエンドロールを迎える。
作品中で、勝ち抜けた側の1人であるベン・リカートは、この話を持ち掛けてきた2人の友人にこう怒鳴る。
「お前達が儲けるということは、その裏で未来を失う人が大勢出るということだぞ!」
そう、投資の世界では利益を得る人がいるということは、必ず損をする人がいるということ。みんな仲良く豊かになることはないのだ。
この作品は『豊かさとは何なのか』をとても考えさせてくれるものだと思う。
巨万の富を得ることは、つまりこれからの生活には困らなくなるということで、そうすれば心に余裕が生まれ豊かになれる。
だが、そのためには手放したり失うことになるものもあって、その中身によっては豊かどころかさらに貧しくなる可能性すらある。
お金は大切だが、お金さえあれば全てが上手くいくなんてことは決してないのだと終始訴えられているように感じた。
僕達が毎日汗水垂らして働いているのは何故か。
それは仕事で収入を得て、生活していくためだ。どれだけ綺麗ごとを並べたって、そこを否定することは出来ない。
そして少しでも豊かになりたい、お金を得たいと目を血走らせて頑張っている人もたくさんいると思う。
でも、「目を血走らせて」豊かになろうとしている時点で、たとえどんな結末に行き着こうと自分が目指していた『豊かさ』は手に入れられないような気がする。
僕には未だに『本当の豊かさとは何なのか』が分からないけれど、少なくともただただお金を稼げばいいってもんじゃないのは分かる。
かと言って、心だけ満たせてもそれで飯は食えないのも真実だ。
でもとりあえず、豊かになろうとするあまり人間としての最低限の尊厳や誇りまで捨てるのだけはやめようと、この映画を観て思った。
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