#49 社長のイライラ



翌朝

少し早起きし朝のルーティンを終えキッチンで社長が来るのを待っていた

暫くすると階段の音が
「ん?来たかな?」

私はキッチンの扉を開ける
すると社長と鉢合わせになり

「お!ビックリさせんなよー。なんだ早いな」

「おはようございます!」
ペコリ
「いやぁーなんか緊張しちゃってー」
ポリポリ

「電話取るだけじゃねぇーか。緊張もクソもねぇーよ」

「アハ、まあそうなんですけど、、、」

「まあ入れよ!10時には留守電が解除されるようになってる。まあかかってこない時は全然かかってこねぇから。かかってきたら"女子プロレス"って言え。で、"後日発表があってからおかけ直し下さい"で、切れ!他は喋るな。わかったか?」

「あ!あのぅ、、、」
小さく手を挙げる

社長は一瞬"ん?"と顔を顰め
「何だよ?!」

「だったらぁ、、、ずっと留守電でもいいのかなぁー?、、、なんて」

するとすぐさま
「バカ助!!」

「痛っ!!」
コツンと拳が頭に落ちてきた

「それが人として最低限の誠意だ!イタズラも多いけど真面目に取材しようって人間だってかけてくるんだ。それでもこっちの都合で話も聞いてられない時もある。せめてもの礼だ。それによって最低限信用は損なわれない。そういうもんだぞ!たくぅお前らジェット世代は!どっか飛んでくのか?ってな」

うーん
何か正しいようなそうでもないような
でもまあそういうモノなのかも
ところでジェット世代って何?
初耳なんですけどぉー

そしてようやく事務所に入った

電話の前に座り私はドキドキしていた
社長は私をジーッと見つめ

「そんなすぐにはかかっちゃこねーよ!」

ゔー
そんなのわかってますよーだ!
何か初めてバイトをした時の感覚に似ている
高校三年間がんばってたホームセンター
楽しかったけど理不尽なこと言うお客さんもいたなぁー
そこで最後の方は気にならなくなったしメンタルも鍛えられたのかも
なんて思い出してたら

バンっと扉が開いた
真琉狐さんだ!!

「お、おはようございます!」
立ち上がりペコリ

勢いよく入って来た真琉狐さんだったが私が電話の前に座ってるのを見て少し拍子抜けしたみたいで

「え?たまちゃん?何してるの?」

「え!いや、、、あのぅ、、今日から当分の間電話番を任されましたっ!!」

すると社長がうんざりしたような顔で
「何ーっ?お前、また来たの?たまの練習でもみてやんのか?」

真琉狐さんはギリっと歯で音を立てて
「はぐらかさないで下さいよーっ!!いい加減に試合決定して下さいよ!!」

「はぁぁぁ」
社長は深く溜息をつく

「だから待ってろって言ってんだろ?興行ってのはトータルでのバランスが重要なんだからよ。お前のワガママだけを聞いてらんねぇの!」

「今回は私がカーコとやらないとダメなんです!!アイツにあんだけコケにされて黙ってろって言うんですかっ?!」

「別にコケになんかしてねぇーだろうよ。お前は本当に一本切れると見境なくなるなぁー」

真琉狐さんの顔がどんどん紅潮していく
「だって私の前に夢子さんに挑戦してベルト巻こうとしてるんですよ?!ずっと私だってベルトに挑戦する機会を待ってたんですよ?横入りで挑戦できるようなベルトなんですかっ?!セカイのベルトって!!」

「うるさいうるさいうるさい!!!後2〜3日で決めんだから黙って待ってろ!!」

真琉狐さんは社長の席に詰め寄りバンっと机を叩いた
そしてギィーっと社長を睨みつけ声のトーンを落とし
「絶対に私とカーコのシングル組んで下さいね。明日も来ますから」

そう言い残し真琉狐さんは部屋から出て行った


社長は顔を顰め頭を掻き
「おい!たまっ!!」

「え?!あ、ハイッ!!」

「塩撒いとけ!!」

「え、えーーっ?!塩ですか?」

「嘘だよバカッ!本当にもうあのバカ真琉狐。耳がキーンって言ってらぁ」
ちょい八つ当たりされた

「ほんとにアイツは!」
社長はまだぶつぶつ言ってる

ん?そういえば誰も来てないけどお弁当は?

「しゃ、社長!」

「何だよ!もう!」

「みなさん今日は?」

「あ?あー今日は誰も来ねえ」

「え?そうなんですか?」

「みんな本業あるしな。まあ無理言って有休取らせたりしてたからな。明日の会議でカード決めねえと大変だ。パンクしちまうよ」

確かにみなさん本業を抱えてる
社長がどう考えてるかはわからないが今はまだ雇い直すというのは難しいのであろうか

みなさん心の底から女子プロレスそしてセカジョを愛してボランティアでがんばってくれているのだ

社長は腕を組み
燻げな顔で「うーん、うーん」と言いながら考え中、、、

そのまま寝ちゃったりしてなんて思ってたらバッと立ち上がった

「おー!ビックリしたあー!!」

私の驚きなんて他所に
「よしっ!決めた!!これだ!これしかないっ!!文句は言わせない!おいっ!たまえ!!」

「あ!ハイィィー」

「もう今日は帰るわ。今日は午後から来んのは夢子か?」

「あ、ハイ。そうです」

「じゃあ夢子に明日全員来るように連絡しとけって言っといてくれ!それと真琉狐には連絡するなってのもな!あーでもアイツまた明日来るって言ってたかぁー。まあいいや、お前はちゃんと練習まで電話番ちゃんとしとけよ!いいな?」

「ハイ!、、、で、あのぅ、、、」

「なんだよ?!」

「お、お弁当は、、、?」

社長はアチャーという感じで顔を手で覆い
「好きに頼め!」

私は立ち上がり
「ありがとうございます!」
ペコリ

そう簡単には弁当諦めませんぜ旦那ー

その瞬間
トゥルルルルル、トゥルルルルル
電話が鳴った

「ほら電話だ!電話番!ちゃんと仕事しろ!」

妙にドキドキするぅー
だが一息呼吸をし

「ハイ!女子プロレス!!」

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