BYDの決算を見てみた

何かと名前を聞くようになったBYD。社名は、Build your dream だそうで、正直この会社については、これくらいしか知りません(笑)。

株式は香港か、シンセンか、どっちかに上場しているかと思いきや、両方に上場してました。本社はシンセン。

中国は資本主義の国ではないので、表に出ている財務諸表をどこまで信用して良いのか、私はわかりません。政府からの補助金なんかもありそうですし。

人民解放軍系の会社というのも、珍しくないですし、日本や欧米の会社を見るときと同じ目線で見て良いのか、正直疑問です。

前置きはさておき、実際見てみましょう。とりあえず、アニュアルレポートを見るのが普通かと思いますが、かなりファイルサイズが大きいので、止めました。代わりにこちらを見てみました

決算書を分析する際は、まず重要な方から見ます。私はまず貸借対照表から見ます。まず損益から見る人が多いかと思いますが、私は貸借対照表を見てから損益を見ますね。

貸借対照表のどこを見るかといえば、まず自己資本比率です。BYDの自己資本比率は、150462/679547=0.22 約22%です。大したことない(笑)。2年前(2021)はどうか。104244/295780=0.35 約35%。たった2年で35%から22%に急降下。褒められませんね。正直、ヤバい傾向です。どんどん下がってます。

自己資本比率は高いほどよい指標です。おおむね50%超えていれば、資金繰りはまず問題ない。これは大企業だろうが、中小企業だろうが同じです。

なんでこんなに下がっているのかいえば、尋常でないくらいに総資本が増えていることが原因。2年で倍以上とか(295780→679547)、マトモじゃないですね。やみくもに規模拡大しているという風に見えます。

貸借対照表がわかれば、損益もある程度予想がつきます。大企業であれば、総資本の額と売上はほぼ同じ額になります。総資本回転率という言葉を使いますけど、1回転が普通。なので、BYDの売上は679547近辺だろうな、と思われるわけ。売上がわかれば経常利益も予測がつきます。つまり、損益計算書なんて見なくてもほぼわかるわけ。

では、次に損益計算書を見てみましょう。2023年は、602315。先ほどの予想に近いですよね。1回転はしていない。602315/679547=0.89 ここは最低1でないといけないと私は思っているので、ダメですが、製造業なのでまあ、甘く判断すればギリギリセーフというところでしょうか。ちなみに2年前は、216142/295780=0.73 なので、これでも良くなってきているんですね。

総資本回転率は大企業は基本1,中小企業は1.5と覚えてもらって構いません。設備投資が必要な業種ほど回転率は落ちます。

さて、損益に戻って利益率などを見てみましょう。国際会計基準なんで、日本の一般的なものと少し違うんですが、国際会計基準でいうところの営業利益率(日本でいう経常利益率と言ってよい)を見ると、32442/602315=0.054 約5%なので、ここは合格と言っていいでしょう。大企業で5%に到達することはそれほど多くないんです。1%ぐらいの会社が実際多数あります。

ちょっと横道にそれますが、国際会計基準って、費用を全部合計しているので、分析しにくいんです。日本の会計基準の方が圧倒的にわかりやすいと思います。

ちなみにトヨタと比較してみます。トヨタの自己資本比率は約38%ぐらいなので、ここはトヨタ圧勝。優秀です。昔よりも良くなっているのではないでしょうか?国際会計基準の営業利益率でも約11%あります。これはすごい!二桁ってそう簡単に実現できない数字です。

まあ、トヨタと比較するのも可哀想なので、BYDに戻ります。

損益的にはまあ問題ないわけですが、問題は貸借対照表です。財政状態です。先に書いたように自己資本比率がドンドン下がっている。投資の回収が終わらない内に次の投資をしている、あるいは、成長を重視して、財務の安全性を軽視していると判断できます。つまり、貸借対照表よりも損益計算書重視の経営。これ、会社がダメになるパターンです!

BYDの場合、このまま行けば、資金繰りが危うくなる可能性があります。これは自己資本比率以外の部分を見ても明らかです。

流動比率というものがあり、これを見ると、100%切っています。支払を遅らせて資金繰りを保っていると解釈してもいいわけです。簡単に言うと、手元のお金よりも、短期的に払わないといけない債務の方が多いということ。運転資本がマイナスになってます。それも年々マイナス額が大きくなってます。

このまま売上がどんどん伸び続ければいいかもしれませんが、もし、売上の伸びが止まったり、売上が減り始めたりすると、一気に資金繰りが悪化する可能性があると判断できます。

現状、売上はとんでもない勢いで伸びていますので、いますぐ、何か問題が起きるわけではないですが、売上が伸びるということは、総資本が増えるということになり、急激な売上の増加は資金繰りの悪化を招くという鉄則をBYDは知っているのかいないのか。そこが分かれ目かと思います。

総合的に言うと、今はいいです。なんとかギリギリバランスを保っています。しかし、財務の安全性が低いため、売上が頭打ちになるような状況が発生すると一気に資金繰りの悪化が表面化する可能性があります。

損益計算書だけ見て経営することは非常に危険なことです。BYDはどうかわかりませんが、この先自己資本比率が10%台に低下するような事態になれば、貸借対照表を見ずに経営していると断言してよいと思います。10%台は危険水域ですから。

私が経営者なら、売上の伸びは抑えて、自己資本比率をまずは30%台に回復させることを優先します。売れるんだから、ドンドン売ればよい、というのはアホな経営者のやることです。BYDはアホなのかどうなのか。今後の数値を見れば判断がつきます。


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