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息子に嫌がられる。

前回のnoteでは、
ラストに登場する絵本にたくさんのリアクションを頂いた。

うすうす感づいていたけど、
私が絶好のパスを出して、
麦氏が一番美味しいところを持っていってる気がしてならない。
しかも、扱いがかなりヒドイ。
燃え尽きているし。
恩を仇で返すとはこのことだ。

まあ、いい。
自分が燃えようが読み手の方に楽しんでもらえれば良いのだ。
となると、このマッチ棒の絵本を
noteで連載するのが最善なのではないか。
そこで、麦さんに提案したら、
「それは、まあ、番外編で」
とお茶を濁された。
きっと周囲からの反応の良さから、
彼なりにカネになるニオイを感じたのだろう。
ちっ。
「マッチメーカーから仕事が来ましたよ!」
とか適当なことを言ってたくさん書いてもらうか。
こちらは一刻も早く
デ●ズニーやサ●リオとかとの契約まで漕ぎ着けたいのに。


さて、このnoteを書き始めてから遂にアレが来てしまった。
噂に聞いていたアレが。

「じゃあ、お風呂入ろうか」
「グギャー!!!」

「じゃあ、おむつ変えようか」
「ブギャー!!!」

「じゃあ、ねんねしようか」
「ビギャー!!!」

何につけても、息子が嫌がるのだ。
そう、いわゆるイヤイヤ期が始まったようだ。
もちろん存在は知っていたが、
「って言っても、子どもらしく首を横に振って
『イヤイヤ〜』ってくらいの可愛らしいもんでしょ」
と高をくくっていた。
しかし、実際にそれを目の当たりにすると、
自分の見込みの甘さを叱責したくなる。
イヤイヤ期の子どもは
この世の終わりのような抵抗の仕方をする。
その時、大人は完全に無力だ。
何がそんなに嫌なのか理由がまったくわからない。
理由がわからないと、対処の仕様がない。

何より消耗するのが、寝かしつけだ。
寝室に連れて行っても、まあ寝ない。
キャッキャっと私のベッドの上にあがって転がり、
「夜はこれからだぜ〜!」
と言わんばかりにはしゃぎ、シーツにヨダレを垂らしまくる。
その時、やっている行為はともかく、
見た目は天使のような可愛らしさだ。
ここまでは仕方ないなぁと思いながら、
「ほーら、お父さんが捕まえたぞ♡」
みたいな感じで捕獲し、
布団に横にするとものすごい抵抗を示し始める。
楳図かずおの漫画のように、
悪魔の形相になって「ギャー!」と絶叫し始め、
吉田沙保里も真っ青の巧みなローリングを決めて、
必死で布団から脱出しようとする。
こちらも負けじと抱きかかえて寝かせる。
はねのける息子。つかまえる父親。
30分ほどで眠りにつけば御の字である。

風呂あがりに寝室へ直行するのが息子のルーティンなのだが、
洗面所時点で彼は寝かしつけを察知するようになった。
お風呂ではおもちゃで遊んでご機嫌だったとしても、
タオルで体を拭き、
保湿クリームを塗ってあげるあたりから、
雲行きが怪しくなってくる。
ドライヤーで髪を乾かす頃には、
「オレはまだ寝ない!」という意思を
キレイな海老反りによって表現し始める。

ただ、こちらも手をこまねいているわけにはいかない。
なだめすかして寝室に連れていかなければ!
「ちょっとそっちに行ってみようか」
「大丈夫大丈夫、何もしないから」
「ちょっと横になるだけだから!」

と説得を試みるが、
ススキノの外れで繰り広げられる会話ぽくて、
なんかイヤだ。

最終的には妻に交代すると落ち着くことが多い。
先日なんかは、妻に抱っこされながら息子は
「お前に用はないぜ!」
という蔑んだ視線をこちらに送ってきた。
完膚無きまでの敗北だ。
私は何か悪いことをやったのか。

そんな攻防に疲弊した翌日、
休日だったので近所のコンビニまで家族3人で歩いた。
帰り道、息子は妻と手をつないでご機嫌だ。
小さな手でしっかりと確かに握っている。
その時、私の脳裏にはあの日の手がよみがえってきた。

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2018年10月初旬。
良く晴れた日だった。
看護師さんから待合室で待つように言われた私は、
持ち込んだPCで仕事をしようとしたが、
案の定集中できない。
ソワソワしたまま1時間ほど経ったころ、
看護師さんがやってきた。
「おめでとうございます。無事に産まれましたよ」
妻よりも先に手術室から出てきた
息子のところまで案内してもらう。
そこに向かう廊下の光景は今でも目に焼き付いている。
初対面で思ったのは「小さい」ということ。
「抱っこしてみますか?」
と看護師さんから言われて、とまどいつつも体を受け取る。
人形みたいな手をおっかなびっくり触れてみると、
柔らかな肌はほんのり温かった。

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そうだ、あの日あんなに小さな手が
今は握れるくらいまで大きくなったのか。
想像以上に育児は大変なものだけど、
そんな時の流れを感じれば、
父になるのも悪くはないと思えてくる。
よし、じゃあ今日は三人で手をつないで家に帰ろうか。
息子の左手に自分の手を差し伸べる。
その刹那、
息子が私の手を振り払った。
ハッキリと。
明確に。
イヤイヤと。
しかも、ノールックで。

切ない。
私の伝記が映画化されたら、
きっとこのシーンに全米が涙することだろう。


noteでフォロワー数万人いる友人から
「戦闘力低すぎる育児ブログ…新しいですね!」
と感想が届いた。
ちなみに彼女は私をフォローしてくれなかった。
フォロー欄が汚れるからか。
わかる。

しかしだ。
戦闘力がいくら低くとも、
ウ●コを浴びせられるような負け戦だとわかっていても、
立ち向かわなければならない戦いがある。
それが育児だ…。

あ、そうそう。
ここまでのくだりを踏まえて、
麦氏がイラストを描いてきた。
なんだかんだ言っても人のいい麦氏のことだ。
せめてイラスト中だけでも息子と仲睦まじく
手をつないでいる様を描いてくれたに違いない。
それくらい夢を見させてもらっても
罰は当たらないだろう。










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…。

そうか、麦氏にはお見通しだったのか…。
私が実は結婚しておらず、子どももおらず、
noteにしたためていたのは、
すべてVR、仮想現実で見ていた光景だったこと…。


東井崇の育児 シーズン1はこれにて終了。
ご愛読ありがとうございました。
(妻と子どもはたぶんいます)


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