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Bloc Party〜Jean Dawsonへ② 人種によるジャンルの固定概念をぶち壊すアーティスト特集

Bloc Party、、、新作最高でしたね(泣)。「俺らのBloc Party戻ってきた!!!」と個人的に僕は感動していました。一時期は迷走していた彼らですが、完全復活を遂げた快作と言っても差し支えないくらい。
正直リードシングルのときは「どうなんだろう…」と疑っていた自分がいましたが、軽くそんな疑念が晴れるほど素晴らしい出来だったと感じています。

そんなBloc Partyの話から始まりましたが、今年の初めにBloc PartyからJean Dawsonを繋げた、「Bloc Party〜Jean Dawsonへ 音楽常識を覆す革命者、そしてブラックコミュニティーでのインディーの息苦しさ〜」というコラムを書きました。

この記事のラストに、BakarやJean Dawsonといった音楽の常識を覆して、その壁をぶち壊しに行っている新人アーティストをもっと紹介しますと言っておきながら、全く手をつけていなかったという体たらく…。
Bloc Partyの新作を聴いて思い出したので、今回こそはその続編となる、人種によるジャンルの固定概念をぶち壊し、新たなウェーブを作り出すアーティストを紹介していきます。


Connie Constance

この壁をぶち壊すアーティストの話をするときに、まず彼女から話を始めなくてはならないでしょう。UKのワトフォード出身でロンドン拠点に活動するSSW、Connie Constanceだ。彼女は混血として生まれ、白人が多くいる地域で育ち、そこで混血として過ごすことを"異常"と自身で感じていたと語っています
そんな彼女のデビューアルバム『English Rose』(2019)は、1曲目からThe Jamの「English Rose」のカバーからスタートします。もともとこの曲は色白の美女へ送った褒め称える歌なのですが、それを"混血"である彼女が歌うことでそのイメージをぶっ壊しに行っているという、1曲目からそのエナジーとステイトメントがガンガン入っているアルバムなんですよね。
特に黒人系のルーツを持つ女性アーティストは、レーベル側からR&Bやソウルの方向性にもってかれてしまうとのことで、彼女自身もそれを経験していると語っています。そういう経験を経てConnie Constanceは自分の自由に音楽の表現ができるように、自主レーベルを立ち上げてそこで更なる壁をぶち壊しにセカンドアルバムを制作中とのことです。これからも彼女の活動は楽しみです。


Nilüfer Yanya

Connie Constanceを紹介したら、やはり次に紹介するのはNilüfer Yanyaですね。彼女は、トルコ系の父とアイルランドとバルバドスをルーツを持つ母の間で生まれ育っています。彼女はその名前と見た目で、R&B系の楽曲を作ることを期待していた人もいたのだとか。最新のThe Guardianのインタビューでは下記のように語っています。

“Some people have [described it as] R&B and it’s like: where are you getting that from? There’s a very small element of that in any music I’ve released.”
(何人かは私の音楽をR&Bと表現したけれど、それはどこから来たんだ?という感じ。私がリリースした曲には、そのような要素はほとんどないんです。)

The Guardian(2022)

Connie Constanceも、それこそ前のこの前のコラムのBakarやJean Dawsonも同じようなこと語っていますよね。いまだに蔓延る人種や外見だけで作る音楽ジャンルを特定されてしまう。正直どうでも良いですよね。
特にConnie ConstanceやNilüfer Yanyaは、人種や外見だけでなく「女性」という性別で、作る音楽ジャンルを判断されてしまうというプラスの弊害が生まれています。そんなの古すぎる。どんどん自分たちの道を突き進んで、そんなステレオタイプをぶち壊していこう。そんな気概を音楽から感じます。


Bartees Strange

イギリスで生まれ、現在はワシントンD.C.を拠点に活動するSSW、Bartees Strange。彼はデビューアルバム『Live Forever』(2020)が絶賛され、その後今年に入ってから〈4AD〉と契約。その認知度を高めています。
彼も壁をぶち壊しにいくアーティストの1人。
ロック、パンク、ハードロック、エモ、フォークなどさまざまなジャンルを融合して、彼なりのインディー・ロックを奏でています。爽やかでポップネスなギターサウンドに、彼のエモーショナルな歌声が重なることで最高な音楽を作り出しています。


Master Peace

ロンドン拠点に活動するアーティスト、Master Peace。
2019年のイギリスに行ったときに、たまたまConie Constanceの前座で見れたんですよね。その時からユニークなポップサウンドを奏でていて、インディーポップ、R&B、ヒップホップ…全ての良いところを混ぜ合わせたような極上のポップサウンドが彼の特徴です。
デビューEPも最高だったし、去年の新作EP『Public Display Of Affection』はより洗練されたポップに仕上げていて、この飛躍の仕方には驚きです。さらに最近はThe Streetsと一緒に楽曲リリースしていて、それもアツい。。。


binki

ケニアをルーツに持つNY・ブルックリンを拠点に活動するSSW、binki。
幼い頃からPharrell WilliamsやKanye Westのトラックに自身でフリースタイルすることが好きだったそう。彼は大学で演劇を学んだのち、NYで役者を目指していた途中で、デビューシングルとなる「Marco」のプロデューサーに出会い、そこから雷撃の如く音楽シーンの中で頭角を表していきました。
僕自身も2019年で知ったときには爆発的に人気ありましたね。特にiPod AirのCM楽曲にも起用された「Heybb!」がTikTokを中心にバイラルヒット。ちなみにデビューEPは〈Fader label〉からリリース。
彼もさまざまなジャンルを縦横無尽に行き来するアーティストの1人で、パンクやインディー、ポップ、ダンスミュージック、ファンク、ヒップホップなど、楽曲によって見せる色が全く異なります。何回聴いてもかっこいい。


M.A.G.S.

まさに〈blow my mind=心が吹き飛ぶ〉とはこのことだろう。彼のこの曲を聴いた時にぶったまげた。LA拠点に活動するElliott Douglasによるソロプロジェクト、M.A.G.S.。
2021年のセカンドアルバム『Say Things That Matter』は最高でした。
イントロからアクセル全開の疾走感抜群のギターサウンドにのせて、爽快感のあるクールな歌声によるポップなメロディーが頭の中になだれ込み、ぶちのめされました。The Strokes的なストレートなインディーサウンドは久しぶりに聴いた気がします。


Malady

個人的に勝手に〈Bloc Partyの正式な後継者〉と思っているロンドンの4人組の新星バンド、Malady。まだ3曲しかオリジナルの楽曲をリリースしていませんが(リミックス含めたら5曲)、とんでもない存在感です。確実にロンドンのバンドシーンを新たに切り開いているバンドの一つです。
とにかく一聴すれば、いままでもポスト・パンクシーンとも一線を画すサウンドだとわかるでしょう。彼らの特徴はバンドでもありながら、UKガラージやダブステップ、レイヴといったダンスミュージックや電子音楽の影響を背景にちらつかせつつ(リミックスや最新曲では特に)、インディー・ロックやポスト・ロックを織り交ぜた独特で奇妙なサウンドを奏でています。またボーカルの気だるくクールなボーカルスタイルがKing Kruleを彷彿とするような感じなのもかっこいいんですよね…。これからが楽しみすぎるバンドです。


Sam Akpro

サウスロンドンのペッカム出身の新鋭のアーティスト、Sam Akpro。
いまのサウスロンドンシーンでも一目置かれている存在です。昨年にはデビューEP『Drift』をリリース。まるでKing KruleとPuma Blueが組み合わせたかのようなアーティストだと個人的に思っています。
Miles DavisやJoy Divisionに影響を受けた彼の音楽性は、すざましく独創的です。ジャズやR&B、インダストリアルなどの要素を散りばめつつ、ポスト・パンク〜インディーサウンドに落とし込み、ダークでメランコリックな音楽を奏でています。ダウナーでクールな歌声がさらにアクセントとなり、楽曲に臨場感を与えています。


Dreamer Isioma

シカゴ拠点に活動するアーティスト、Dreamer Isioma(ex: Serena Isioma)。
昨年デビューアルバム『Goodnight Dreamer』をリリース。個人的な2020年のベストEPにもあげた『Sensitive』や『The Leo Sun Sets』の作品を重ねて、満を持してのアルバムでした。
全体的にあらゆるジャンルをブレンディングしたベッドルーム・ポップサウンドに仕上げていますが、インディー・ポップを基調としたものや、メロウで陶酔的なインディー・R&Bソング、ヒップホップやファンク、アフロビートを取り入れた楽曲などさまざま。しかしタイトル通りの夢見心地で独特な浮遊感のあるムードは全曲通して漂っているような気がします。


Downtown Kayoto

ジンバブエで生まれ、現在はUKのHullを拠点に活動するSSW、Downtown Kayoto。昨年、新作EP『NAVIG8』をリリース。
彼もBakarやMaster Peaceのようにジャンルを縦横無尽に行き来してしまうようなアーティストです。楽曲によってはパンクやインディーロック的なアプローチしたのもあれば、ヒップホップやR&B、ダンスミュージック、そしてベッドルーム・ポップのエッセンスを加えたものなど、多彩な音楽に魅せられるアーティストです。


Jany Green

カラフルなポップサウンドが特徴的なLA拠点に活動するSSW、Jany Green。
デビュー作『Lost In Love』を2021年にリリース。
彼が作り出すジャンルを縦横無尽に駆け回るような独創的なポップセンスは本当に素晴らしいです。ヒップホップやインディー、そしてポップの間を縫うような絶妙なサウンドに、陽気な彼の歌声が溶け合い、夏の季節にぴったりな作品へと仕上げています。


SAIAH

アリゾナ拠点で活動するアーティスト、SAIAH。
初期は叙情的なR&Bソングやエモラップっぽい楽曲が多かったのですが、2020年の「HEART(BREAK)」以降、パンクやエモ、インディーのサウンドにヒップホップをブレンディングさせた特徴的なサウンドが多くなりました。BakarやJean Dawsonにも近しい、バンドサウンドをうまく昇華させているアーティストです。


Quinton Brock

NY・ブルックリン拠点に活動するSSW、Quinton Brock。
彼はいままでにJon Bapと一緒にThe Get Money Squadという名義で作品を2017年に2作出したり、2019年のソロ作品ではPink Siifuが参加していたりと、インディーロックからヒップホップ、R&B、ファンクなど様々な音楽を奏でているアーティストです。
2020年の「To The Moon」以降、音楽性に変化がみられ始め、今までの雑多な音楽をクロスオーバーさせ、サーフっぽさも感じ、爽やかだけどエモーショナルなインディーロックソングに仕上げています。彼は影響を受けたアーティストにRamonesやJulian Casablancasを挙げていたりも。いまデビューアルバム制作中とのことで今後も活動が楽しみなアーティストです。


James Mantis

LA拠点に活動するアーティスト、James Mantis。
昨年Kid CudiやKanye West、Toro y Moiなどのアーティストからインスピレーションを受け制作したデビューEP『JAB STEP POP』をリリースしています。
彼は軽やかなリズムに、カラフルで鮮やかなベッドルーム・ポップサウンドが特徴的です。ヒップホップやR&B、インディーロック、パンク、サイケやチルウェイヴ、電子音楽など多くの要素を彼独自の解釈で昇華させています。
特に最新曲「SUCKAPUNCH」はいままでの中でも突き抜けていて、疾走感のあるリズムにオルタナティヴサウンドが重なり合った高揚感を覚える楽曲に仕上がっています。


Benét

ヴァージニア州リッチモンド出身のシンガーソングライター、Benét。
昨年にデビューEP『Game Over!』をリリースしています。
透明感のありながらもクールな歌声と、80年代のファンクやディスコの系譜を感じつつ、インディー・ポップやインディーR&Bを間を縫うような心地よいサウンドを奏でています。


ernest rareberrg

NY拠点に活動するアーティスト、ernest rareberrg。2020年2月のPigeons & Planesの「Best New Artists」にも選出されるなど既にお墨付きのアーティストです。
2019年にリリースしたデビューシングル「tearing me apart」で注目を集め始めます。透明感漂うファルセット・ヴォイスからアンニュイなクールな歌声を駆使しつつ、2000年代のインディーロックを想起させるエッジーなギターと疾走感のあるリズムが特徴的な楽曲です。
その他にもJean Dawsonにも通じるような力強くパンキッシュな「show me your body」や、淡く消え入りそうな美声と浮遊感のあるシンセがクセになるノスタルジアな「Secondary Handstand」など、彼の幅広さには驚かされるばかり。未だ公式な楽曲は4曲しかリリースしていませんが、既にゾクゾクさせるような期待大な新人アーティストですね。


最後に

という感じで人種によるジャンルの固定概念をぶち壊すアーティストたちを紹介してきました。まだまだこういったアーティストは世界中にたくさんいて氷山の一角みたいなものですが、少しでも皆さんの音楽の世界が広がっていたら嬉しいです。
冒頭のConnie ConstanceやNilüfer Yanyaの部分でも触れましたが、人種による偏見だけでなく、性別による偏見で音楽的ジャンルを制限されてしまうという問題にも触れました。最近のPoppy Ajudhaもそういったものに異を唱えるアーティストかと思っています。
こういった業界内やアーティスト間、私たちリスナーの間でもそういった偏見や問題はまだまだあるかと思います。正直そんな偏見のせいでアーティストが自由に音楽を表現できないなんて、普通に考えておかしいですよね?自分が思っている常識や価値観というのは、本当にどんどん取っ払って行った方がいいというのはこのコロナ禍の数年間で痛いほど感じました。「黒人だからラッパーだ」「女性の黒人だからR&Bだ」というような「〇〇=〇〇」という枠組みに押し込めるという概念自体がまず古いと私自身も感じます。正直ジャンル自体の枠もほぼ無くなっているような時代ですが、よりアーティストが自由に表現できる世界になって欲しいと一個人としても願っています。
そして今回のアーティストの楽曲をまとめたプレイリストも作ったのでよかったらどうぞ。またなにかしらのタイミングでコラム書こうと思っているのでお楽しみに〜


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