90年代の音楽を知らないアナタへ その66 ONE MORE CHANCE/STAY WITH ME REMIX(95)/THE NOTORIOUS B.I.G 若人よ、ビギーを聴こうじゃないか。
ビギーについては、ガセを含めさまざまな話が存在するのでなにが真実であるかは正直わからない。だが皆彼の音楽が大好きだった。
若くして亡くなったので、10代や20代のヒップホップファンには特に伝説となっているのが、リアタイを経験してきたわたしにとってはなんだか不思議な感覚である。彼の美しいフロウを聴いたことない世代がいるなんて。
90年代に青春を送った音楽ファン誰しもが彼の名前は聞いたことがあるし、特にヒップホップファンでなくても彼の名フロウを耳にしたことがあると断言してもいいくらいのヒットメイカーで、抜群の存在感だった。
しかし今の若い世代はビギーをほとんど聴かないらしい。いち連のゴシップを深く知る必要はないが、少なくともディスコグラフィーぐらいは通ってきてるかとおもいきや、そうでもないらしい。現役のミュージシャンばかりに興味が行くのは仕方がないが、ことヒップホップにおいてはクラシックもしっかり押さえておくのがそもそもであろうし、クラシックを聴かなければヒップホップそのものを楽しむ要素に欠けていると言っても過言ではないのではないか。楽しみが半減しているともいえる。
あたかも意味ありげな持論を展開した後にこの曲を紹介するのは恥ずかしいのだが、単にこの曲はビギーとヤリマンの話である(笑
ビギーのナニが欲しくて「Baby Give me one more chance」と女性のフックが入っているだけw いわゆるベッドミュージックだ。ただし、音楽の知識を吸収するだけ吸収できる思春期にはこういう音楽は絶対に知っておくべきだし、もしあなたが男であれば、絶対的に通らなければその後の人生が面白くないと、男のわたしは思う。
ビギーの曲は全て金、性欲、羨望、成功、女性関係といった男の妄想を満たす要素が色濃い。貧しい環境で育ったビギーにとってこれらを謳歌することが人生だったし、幼い頃に蔑まれた周りへの最大限の威嚇であったことは容易に想像がつく。
この曲は90sヒップホップの金字塔ともいえるアルバム「Ready to die」からシングルカットされ大ヒットした。サンプリングで使われているのはサンプリング・エレメンツとして人気のデバージ「Stay with me」。お馴染みのメロディのキーを上げて印象的なBGMに使いリミックスしてある。
フックを歌うのは本妻のフェイスエヴァンスで、彼女の煽情的な声がこれまたデバージの甘いサンプリングによく似合っている。この曲で登場するフェイスエバンスはまだ本格的なデビュー前というのも興味深い。BAD BOY inc.のファーストレディとして売り出す矢先のまだまだ新人だったのを今気づくのも面白い。
そしてさらに面白いのが、フェイスという本妻がいながらこのアルバムではリルキムとファックしているインタールードが収録されていること。ただただ喘ぎ声とベッドの軋む音だけ!なんともえげつなく悪趣味ではあるが、一方で男としての欲望に忠実なビギーがかっこよく聞こえる。思春期の青年にとってはかなりエロティックな世界だったし、親の前では音を小さくするか、次の曲へ飛ばした記憶があるのも懐かしい。ちなみにフェイスエヴァンスとリルキムの関係性も面白いがここでは割愛させていただくことにする。
ビギーのフロウは美しいと先述したことについて。彼のフロウは意味そのままに流麗。それに加えて真似しようとしてもできない高いスキルがあるのが素晴らしいと思う。発音がクリアで聞きやすいのも洋楽初心者にとっては注目ポイントであろう。意味を掘り下げると大変なことになる歌詞も多いが、案外耳なじみが良いのだから、何度もリピしたくなるのが魅力といっていい。
だから若者よ。まずはビギーを聴こう!
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