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90年代の音楽を知らないアナタへ その72 I WANNA BE DOWN REMIX(94)/BRADY FEATURING QUEEN LATIFAH,MC LYTE,YO-YO 90年代一番メジャーなリミックスソング!

ブランディのデビュー盤「BRANDY」の爆発的な大ヒットを後押ししたファーストシングル「I WANNA BE DOWN」は、デビュー曲でありながらTOP3ヒットになり、一躍全米を代表するトップシンガーとして早くも注目される切っ掛けとなった曲である。

80年代後期から徐々に浸透しはじめていたことであるが、90年代当時シングルには必ずと言っていいほど「REMIX」が収録されていたものだ。リミックスはいわゆるメインシングル曲にどれだけ熱が入っているかといったモチベーションをはかるものであり、芸術的な面からその曲のもつポテンシャルを楽しむ貴重なチャレンジだったりしていた。出来上がった曲が地味でヒットが難しい場合には、シングル盤をポップよりのリミックス仕様に修正して、アルバムには地味なオリジナルを収録するという本末転倒なやり方もしばしばみられたほどである。

そういう傾向が一般的になりはじめると、当然リミックスのなかからも「名曲」が生まれるという事態が起き始める。その代表格がブランディのデビューシングル「I WANNA BE DOWN」のリックス盤であるこの「FEATURING QUEEN LATIFAH,YO-YO,MC LYTE」であろう。

ブランディが歌うのはサビと途中のアドリブ。それ以外は、MCライト、YO-YO、クイーンによる三者三様のフロウで構成されており、これはもう完全にヒップホップソングなのだ。原曲はポップチャートでTOP3ヒットになっている耳障りのいいキュートなポップソングであるが、一方でブランディ(というかマネジメント)はブラックコミュニティへの忖度も忘れてはいなかったのが偉い。原曲のベースラインにヒップなサビをちゃんといかしつつ、まったく別ものとしての曲を用意。新しい曲にもしっかり共感が集まり、リミックスながらヒップホップチャートでは大ヒットを記録しただけでなく、時代を代表する曲が生まれてしまったのだ。

ブラック系アーティストがこのブランディの成功以後、リミックスでもヒットを狙えるようにひとつのシングルに対して複数のリミックスを用意するようになったのは、正直この曲があったからに違いないと痛感する。

それぞれ短いリリックではあるが、ヒップホップ界きっての名手同士が一曲に登場するという贅沢さもまた極まっている。90年代は女性台頭の時代と当時からいわれていたが、そういう時代の波にのった戦略もあったのだろう。

90年代はこの曲に代表されるように、女性グループや女性歌手がわんさか生まれることになるのだが、そんな時代の現象を語るに外せない1曲となっていることはもっと知られても良いと感じている。


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