30年近くコールドスリープ状態だった歌
その古いMDには、1993年頃に書かれたバラードが収録されていました。
当時私は会社を辞め、翻訳のアルバイトをしながら夜はユーミン夫妻の音楽学校に通っていました。シンガーソングライターコースを履修していましたが、なりたかったのはソングライターつまり裏方です。
私がクラスで発表したバラード曲『まぶしい六月に』は年間優秀賞を受賞しました。賞状と無縁の人生でしたからちょっと嬉しかった。その時の記念写真がこちら。向かって右奥の水色のシャツが私の先生。教え方が明快で男気のある人でした。(私は松任谷校長の右後ろ)
ドラマ『夏子の酒』の主題歌を歌った熊谷幸子さんも卒業生のひとり。生徒たちはみな個性的でクラスは毎回刺激的でした。そのまま音楽の道に進んだ人もいたと思います。
私はというと、卒業後もひとりで創作を続けていましたが幸運にもある音楽プロダクションが「一緒にやらないか」と声をかけてくれたんです。
当時の経緯はここに:
『まぶしい六月に』は、伸び伸びと晴れやかな歌声の男性歌手に歌ってもらいたかった。プロダクションの機材を使って一緒にデモテープを作り、レコード会社に営業しました。
オケを作ってくれたのは若手の編曲家ホリウチさん。原曲の素朴なピアノ演奏が、きらめくようなポップスに大変身。英語版『Into the Glare of June』も作ってフィル・コリンズに営業するぞ〜と皆で謎に盛り上がっていました。
そのデモ音源が数十年ぶりに見つかったんです。
引っ越しを繰り返すうちに失くしたと思ってた。
いま聴くと古くさい? それとも新鮮?
本当はもっとテンポを落として静かなレゲエ風のバラードにしたかった。いやいや、営業用ならこういうきらきらポップス路線がいいよ、と周りに説得されたのかもしれません。バブルが弾けたとはいえまだきらびやかな時代でしたから。
あれから30年。
タイムカプセルから目覚めた歌が手元にあります。
さてどうしましょう。誰か歌ってくれそうな人をまた探しましょうか。