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留学日記#02: 大学の授業が始まりました

こちらに来て1週間になります。昨日は、ついに大学の授業が始まりました。ヨーロッパの単位の制度を僕はよく理解していないのですが、確かなことを言えば、コマ数は日本にいた時よりもだいぶ少ないです。

アムステルダム大学では、このSpring Semester(2月~6月末まで)が大きく3つのブロックに分かれています。Block 4が2~3月、Block 5が4~5月、Block 6が6月。Block 6だけ短いです。この期間には開講されるコースそのものが少ないので、授業ゼロという人もいます。なるほど、そうやって旅行に行ったりするのか。

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今学期履修することになった科目は以下のとおりです。本当はもっと取りたいコースがたくさんあったのですが、留学生にも門戸を開いているものが以外に少ない(しかも、出願した時はそれを知らなかった!)ので、だいぶ選択肢も限られてきます。しかも、先着順で人気のコースはすぐに閉まってしまったので、僕の選択は必ずしも主流(?)ではないのかもしれません。

①から③がlecture方式で、④⑤が少人数形式のseminarです。僕が今受けている授業はたまたま人数が少なかったので対面(in-person)だったんですが、数百人規模の講義では、早い者勝ちで最大で75人までしか教室に入れないんだそうです。残りの人はオンラインになっちゃうんだとか。運がよかったです。

①Globalization and Islam, and democracy [Block 4]
19世紀から今日までの西欧とイスラムの関係の歴史について概観し、今日の問題を論じます。西欧的な価値を、イスラム圏の人々がどう受容し、どう抵抗しようとしたのかを学びます。
②Violence and Security: Paradigms and Debates [Block 5]
冷戦後の紛争と安全保障の問題について、理論と歴史の両面からアプローチする授業です。秋学期に田所先生の現代国際政治を履修した人は、それと同じ時代の安全保障を扱うと考えてくれれば分かりやすいかと。
③International Relations [Block 5]
これはいわゆるIR(国際関係論)というやつです。Introductionではなく専門科目と書いてありますが、そこまで難しい内容ではなさそうです。どちらかというと歴史より理論重視で、最初に国際政治理論を一通りおさらいした後に、EUとかヨーロッパの国際関係の問題について論じていきます。
④The Rise of China [Block 5-6]
名前の通り、中国の台頭、米中対立とその将来について学ぶセミナーです。これは日本でもしょっちゅう扱うテーマですが、ヨーロッパあるいは他の国(中国や香港からの留学生も多いんですよね)からどういうふうに見えているのか、結構興味があります。
⑤Reading the City: Amsterdam Literary Classics [Block 5]
アムステルダム発祥の名文学を読みほどきながら、実際に博物館や美術館を訪れて、歴史を学ぼうというセミナーです。ご存じアンネの日記と、ヤン・ヴォルカーズ(知らない!)の"Turkish Delight"という作品を扱うようです。これはせっかくなのでぜひ取りたいんですが、文学部設置なので後回しにされ、キャンセル待ち(あと1人!)です。なんとかなってくれ。

という感じで、見てわかる通りBlock 5(4~5月)がとんでもないことになりそうです。逆に今Block 4は①のlectureが2時間×週に2回あるだけで、だいぶ余裕があります。生活に慣れることと、のんびりすることを重視した計画です(笑)

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大学の正面玄関。

ヨーロッパの授業はどんな感じ?

ヨーロッパ(オランダ?)のコースの進め方は日本とはだいぶ違います。まず、うちの大学では1 semesterぶっ通しで続くコースはなくて、blockごとに分けられています。日本でいうところの半期集中みたいな感じですね。だから、授業は1回に2~3時間×週に2回、多いと3回あります。それが1 block分続くと、6単位もらえます。2 block続くと12単位。それで、上限が30単位、留学生は36単位。

そうすると、多くても4~5個くらいしか授業をとれないわけですね。それはなぜかというと、一つの授業に対して要求されるコミットメントが日本よりはるかに大きいからです。

日本の場合、普通の講義であれば、週に1回、90分の講義をただ聴いていればよくて、(今はオンライン授業の影響で多少違うかもしれませんが)成績は期末試験の1回勝負です。ある意味で、楽をしようと思えばいくらでも楽をできますよね。とりあえず教室にいればいい、いや、下手をすれば1回も授業を受けなくても、試験に受かれば単位をゲットできる。ヨーロッパはそうは甘くないです。

①リーディング課題が多い

まず、予習課題としてリーディングが課されます。そして、授業時間も途中休憩をはさみながら2~3時間続きます。それが終わると、リアクションペーパーみたいなものを書く時もあって、これを何周もします。やはり日本と海外の大きな違いは、リーディング課題があることだと思います。

僕が今学期とった授業は恐らく緩めだと思うんですが、毎回20頁程度のテキストが2~3つ、予習課題として出されます。英語なのでもちろん楽ではないですが、現地の学生からしたら、母国語で読める文章が高々4, 50ページですから、そこまできつすぎはしないだろうと思います。これが、例えばイギリスとかアメリカのtop universityにもなると、1回で1冊とか普通に出してくるのでとんでもないことになりそうです。

・・・なんて言ってますが、たぶん今の自分だからできそうなだけで、去年だったら悲鳴を上げています。「そこまで大変じゃないな」と思えるのは、恐らくゼミのおかげ。細谷ゼミでは毎週1冊の新書(200~300頁、多いと400頁近く)を読んで授業に参加することになっています。それを1年間なんとかこなしてきたから、数十ページ程度のリーディングなんてなんとも思わなくなりました。慣れって恐ろしい。お前、英語だってこと忘れてるだろってたまに思います。そして多分その通りです。

②発言を求められることが多い

とにかく学生の発言が求められます。こちらではセクション(レジュメの項目1つ分くらい)ごとに先生が質問を募集する。だいたい2人, 3人が手を上げます。そこからディスカッションが始まって、授業の内容を深めていく。だから、先生が用意したシナリオ通りには進みませんし、そうならないことが期待されているのだと思います。

日本の大学の講義では教員が一方的に話すのを学生が聴くのが主流で、質疑応答はあったとしても限られた時間です。それに、日本だと「質問はありますか?」って聞かれて手を挙げるのってかなり勇気がいりますし、かといって誰も質問がない時の気まずさといったらあれはものすごいですよね。

たとえlectureであっても、学生が主体になることが多いんだろうと思います。ですからこれがseminarになると、もう先生は何もせずにただ座っていて、学生たちが好き勝手に議論して授業を作っている、みたいな感じなのかもしれません。4月が楽しみですね。

せっかく大学に来ているんですから、先生の意見だけじゃなくて、他の学生の意見も聞いてみたい。自分と同じくらいの年齢の人たちが、同じ問題についてどう考えているのか。同じならそれでいいし、違ったらそれだけ面白いじゃないですか。特に文系の学問は歴史にしろ政治にしろ経済にしろ、答えのない問題を扱うことが多いわけですから、それだけいろんな意見に出会った方がよいでしょうし、「私は違うと思う」っていう言葉を何回聴けるか、それで議論の深まりがだいぶ違うように思います。同じ意見ばかりだと、別の見方を得られませんから。

今日もさっそくlectureの中で何回か、学生の側に振られたことがあったので、勇気を出して手を挙げてみました。ちょうど西洋の近代化の話をしていたところで、後で"Are you Japanese or Chinese?"と聞かれて"Japanese"と答えたところ、日本の近代化について聞かれました。あー、日本の近代化って明治維新とかあのあたりかあ、みたいなことを考えながら、慣れ親しんだ政治学の用語に日本の歴史を紐づけていきます。こっちで日本の話題が出ると嬉しいですね。

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授業の様子。

ヨーロッパと中東の国際関係

まあそんなこんなで、こちらでの大学生活は静かに始まりました。特にこの2か月間は、日本にいた時より少し楽になると思いますが、まあここでの生活に慣れるだけで結構なストレスなので、それはそれでいいかと思っています。ただでさえ、慶應にいたころは授業を詰め込みすぎてパンクしそうになっていたので、のんびり勉強するのもたまにはいいでしょう。それに今はKindleがあるので、読書に困ることはまずありませんし。

今学期学ぶのは、グローバリゼーションの中で、ヨーロッパと中東の関係はどう変化してきたか?という問題について。ヨーロッパの産業革命と近代化、それが19世紀の帝国主義時代にアジア世界へと拡大していきます。それに対して、中東の大帝国はどう反応したのか。西洋的な価値をどのように受容し、あるいは抵抗しようとしたのか。その文脈から、中東とヨーロッパの国際関係をとらえ直していきます。

中東とヨーロッパと言えば真っ先に思い浮かぶのが、ISILと移民難民問題、5,6年前のテロ事件です。ISの台頭に伴って中東からの難民が急増したのは記憶に新しいですよね。それに伴って、難民の社会統合や、難民に紛れ込んで流入してきたテロリストの問題が顕在化しています。オランダはかなりpermissiveな場所で、移民難民にも寛容と言われていますが、その一方でヨーロッパ全土を見ると排外的な主張も多くみられます。そうした問題を考えるうえでも、非常に重要な視点が得られるのかなと思います。

それにしても、来てから気づいたのですが、私はヨーロッパに留学すると言うのに、ヨーロッパ政治のことについて何も知らなかったんです。ヨーロッパ政治系の授業をほとんどとらず、アメリカの外交史とか中国研究の授業ばかり取ってました。何をやってんだ僕は。

そういうわけで、ゼミ同期の某博士にお願いして(笑われました笑)、いくつか文献リストを送ってもらいました。とりあえず今はまだ余裕があるので、最近の中東の動向とヨーロッパ政治の現状について、入門書を読んでいこうと思っています。この2冊のテキストは、どこかで目にしたことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に後段のテキストの著者である水島治郎先生は、わが栄光学園の卒業生で、私の先輩にあたります。いつかお目にかかる日が来るといいなあ。



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