見出し画像

自己紹介―「自由な生き方」を目指して

弁護士の宇賀神崇(うがじんたかし)と申します。最近Noteを始めました。いろんなことを発信していきたいと思っています。宇賀神の記事をお読みいただいた際に、宇賀神の人となりがわかったほうがいろいろと良いこともあるかと思い、長いですが自己紹介を投稿します。

キーワードは、「自由な生き方」です。

1. 学生時代

HEROという木村拓哉が検事を演じたドラマを見て、中学高校時代は検事になろうと思っていました。「キムタクにはなれないけど検事にはなれる!」というわけです。18歳で故郷の栃木県日光市を離れ、東京の大学に進学した際も、法律系のコースを迷わず選びました。

大学ではいろんな出会いがありましたが、なかでも私の人生で大きかったのは、中国語との出会いでした。

第二外国語として中国語を選択しました。深い理由はなく、高校時代英語が大嫌いで、もうアルファベットは見たくないと思ったからです。しかし、勉強し始めたら、めちゃくちゃハマってしまいました。中国語は、同じ音でもイントネーション(「声調」といいます)の違いで意味が違ってきます。小学校以来吹奏楽・オーケストラをやっていましたので、こうした中国語の音楽的側面がピタリとはまったのだと思います。

どのくらいハマったかというと、例えば以下のような感じです。
・キャンパスで出会う友達全員に中国語で話しかける。
・出会った人の名前は中国語で読み、読みがわからなければその場で調べる。
・電車に乗ると、次の停車駅を知らせるアナウンスをいちいち中国語に訳す。
・街中で漢字が書いてある看板を見たら、その場で中国語での読み方を調べる。
・寝言が中国語(同居人談)。
・吹奏楽サークルの練習中、休みの小節を中国語の数字でカウントする。

…どのくらい変態だったかお判りでしょうか。でもおかげで、今でも仕事で使えるくらいに上達しました。第二外国語で履修しただけでこのレベルに到達するのは、おそらく全大学生の数%程度がせいぜいでしょう。

こんなに中国語を勉強したので、中国語を使う法律家になる道がないか、と考えググったところ、なんと、弁護士業界には「中国法務」という分野があるというではありませんか!ここで検事の道をあっさり捨て、中国法務に取り組む弁護士を志すことになります。

2. 就活・司法修習時代

法科大学院在学中から司法試験の受験前後にかけて、大手弁護士事務所のリクルートが行なわれます。宇賀神も、中国法務ができる事務所はどこかという視点で、事務所回りをしていました。その中で宇賀神の人生に大きな影響を与えたのが、西村あさひ法律事務所の中山龍太郎弁護士でした。

中国法務がやりたいのだと言い募る宇賀神に対し、中山先生は「中国法務の何をやりたいの?」と問いかけました。中国法務に取り組む弁護士はこれから増えていく。それにつれて、中国法務の中でも専門化が進んでいくだろう。だから、中国という切り口以外にも専門性を身につけたほうがよい、というのです。心に響く助言でした。

中国法務以外の専門性として何を培っていくかという課題を持ちながら、司法試験合格後、沖縄で司法修習をしました。司法修習とは、弁護士などになるために受ける1年程度の研修のことです。ここで、指導担当の竹下勇夫弁護士に出会ったことが、私の人生のもう一つの大きな転機でした。

竹下先生は、「経営法曹会議」という使用者側の労働専門弁護士の団体に長年参加し、沖縄の最低賃金審議会の委員も務めるなど、労働事件に長年の経験と実績を有する弁護士です。宇賀神は、竹下先生の下で、沖縄の企業の「偽装請負」の法律相談に立ち会ったり、退職合意が錯誤無効であるとして賃金仮払仮処分が申し立てられた事件の答弁書を起案し、審尋期日に立ち会ったり、事務所内の固定残業代の勉強会で発表したりしました。従前の実務経験に安住することなく、常に最新の判例や議論をキャッチアップし、クライアントの最大の利益のために日々の研鑽を怠らない竹下先生の姿勢に、大変感銘を受けました。

弁護士になったら、尊敬する竹下先生と人事労務案件について同等以上の議論ができるようになりたい。そう思ったとき、中国法務以外の専門性として、人事労務を据えることにしたのです。

3. MHM時代

こうして、中国法務と人事労務を2本の柱に据える弁護士宇賀神崇が誕生しました。弁護士登録以来、日本の四大法律事務所の一つである森・濱田松本法律事務所(MHM)にご厄介になっています。

宇賀神のメンター的な存在が、MHMの人事労務チームのヘッドである高谷知佐子弁護士です。元々はインドに駐在経験があるなど、インドその他アジアプラクティスに造詣が深い弁護士ですので、人事労務の案件でもちょくちょく英語が出てきます。高谷先生の下で人事労務案件の研鑽を積む中で、英語対応の重要性は日に日に高まっていました。

他方、MHMで中国法務の案件に取り組む中で、香港という存在が無視できないことがわかってきました。現在でも、海外からの対中投資の6~7割は香港経由です。それゆえ、中国本土の仕事なのに、中国本土の親会社に香港法人が出てきたり、香港法準拠の英語の契約書が出てきたりするわけです。

結局、大嫌いで逃げ続けてきた英語と対峙しなければならなくなりました。米国ジョージタウン大学に留学し、引き続いて香港の法律事務所Gall Solicitorsに出向し、研鑽を積むことになります。

4. 海外時代

米国留学で1年強、香港出向で1年強生活する中で、いくつも学びを得ました。

まず、diversity(多様性)とかinclusion(包摂)といったワードの意味が肌身にしみて理解できました。私なりに表現するなら、肌の色も、国籍も、話す言葉やなまりも、またその他の側面も違う人間が周りにいることに、何らの違和感もないことです。米国でも香港でも、私は、肌の色でも、国籍でも、話す言葉でも、マイノリティーでした。でもそのことで嫌な思いをすることはただの1回もありませんでした。私が属したどのコミュニティも、私を温かく迎え、尊重してくれました。

次に、英語が上達したというより(もちろん多少は上達しましたが)、この程度の英語で通用するのだな、という変な自信がつきました。英語の話者は世界で20億人くらいいるそうですが、ネイティブスピーカーは4億人程度しかいません。驚くことに、8割はノンネイティブなのです。世界では、オランダ人がオランダ語なまりの、中国人が中国語なまりの、ブラジル人がポルトガル語なまりの英語を平気で話しているわけですから、日本人が日本語なまりのカタカナ英語を話すことは何ら恥ずかしいことではないのです。当然ながら相手の言うことが聞き取れないことも日常茶飯事ですが、こちらに非があるとは限りません。宇賀神の勝手な体感では、最初は1~3割くらい聞き取れればしめたものです。最初何をいっているかわからなくても、Right! だの Oh! だの Of course! だの Really? だのと適当に相槌を打ちながら、耳を慣らしつつ何の話題を話しているのかを推測していけば、だんだんと会話に乗れるようになります。

さらに、日本では言葉だけ独り歩きしがちな「ジョブ型」という働き方を肌身で知りました。香港にいたときに知り合った人々は、大体2、3年に一度は転職するイメージでした。求められる業務や役割はjob descriptionに明確に書いてあるので、キャリアアップを図ったり別の仕事をしたり給料を上げたかったりしたいなら、今の職場に大きな不満はなくても転職するわけです。ゆえに、転職は極めて一般的で、比較的若い知り合いでも既に2、3社はしごしている例は珍しくありません。むしろ、同じ企業に長く働くということ自体が珍しいわけで、宇賀神がもうMHMに6、7年いるという話をすると驚かれました。香港では、優秀な従業員にいかに入社してもらって、いかに長く働いてもらうかといった悩みの方が重要です。出来の悪い従業員にどう対処するかといった日本流の悩みとは対照的です。

最後に、理屈っぽい話ですが、法体系の違いが体感できました。世界の法体系は「大陸法系」(ドイツやフランス系)と「英米法系」(イギリスやアメリカ系)に大別できます 。日本と中国は大陸法系、アメリカと香港は英米法系に分類されます(イスラム法はどうなるのかとか、中国の昔の律令制はどうなるのかとかいう議論はひとまず措きます)。でも、ことはそんなに単純ではないことがわかりました。詳細は別稿に譲りますが、アメリカはドイツからの移民が多いこともあって、大陸法的な法文化が混ざっているのですが、そういった背景がない香港法は、ピュアーなコモンローです。日本法はどうかというと、基本は大陸法系でありながら、歴史的な背景等からアメリカ法に近く、英米法的なものの考え方も意外としっくりきます。中国法は比較的新しいので英米法的ルールも取り入れていますが、日本に比べれば総じてピュアーな大陸法に近いと思います。

5. そして今

中国語から中国法務へシフトし、人事労務を追加したけど結局英語に戻り、海外へ飛躍した宇賀神は、今は日本に戻ってきています。これまでの来し方から宇賀神が志向したいのは、「自由な生き方」です。

「言語の壁から」自由な生き方。日本語を母語としつつ、英語も中国語も使えます。この3か国語で世界の半分の人々とコミュニケーションができる計算になります。言語の壁なく自由に生きていけますし、言語の壁に阻まれている方をサポートすることもできます。

「国から」自由な生き方。日本で長らく住んでいますが、アメリカに留学し香港でも働いてきました(なお、短期間北京に駐在したこともあります)。ゆくゆくは、世界に複数の拠点を持ちながら、世界を自由に飛び回って生きていきたいですし、グローバルに活躍するビジネスパーソン・企業をサポートしたいです。

「日本の雇用慣行から」自由な生き方。日本の雇用慣行とはこうです。野心家か変り者かはみ出し者でもない限り、一つの会社で会社人生を全うする。解雇はされない。代わりに、子育てや介護は別の人に任せて、人生のかなり多くの時間を会社に捧げる。会社から一方的に転勤を命じられ、様々な業務に就く。何の学位を取得したかはどうでもよく、ただ出身大学名だけが重視される。こうした日本の雇用慣行が世界ではいかに珍しいかがよくわかりました。でも、例えば「フリーランス」という生き方が日本でもかまびすしく議論されているように、日本の雇用慣行から自由になりたいというニーズは確実に広がっています。人事労務が業務の柱ですので日本の人事労務法制はよく理解しているつもりですし、同時に海外の雇用慣行も体感してきましたから、こうしたニーズに応える資格も資質も問題意識も持ち合わせていると自負しています。

「jurisdictionから」自由な生き方。これも理屈っぽいですが、jurisdictionは「法域」と訳します。ある一つの法体系が適用される地域のことです。法体系は地域ごとにバラバラですが、経済活動はグローバルに展開しますので、それぞれの法体系の間を取り持って調整していかないと、経済活動がうまく進みません。宇賀神は日本法とニューヨーク州法の弁護士資格を持っていますが、香港法も勉強しましたし、中国法も業務で使っています。複数の法体系の間を自由に飛び交ってこうした調整をすることも、私の役割です。


ここまで長文を読んでいただき、ありがとうございました。今後は、例えば香港法の話、フリーランスの話など、よしなしごとを書き連ねてまいりたいと思います。

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?