2/27(月)~3/3(金)の見通し
※特段断らない限り、すべてのイベントに関する日時は日本時間基準でお話しています。
また、チャートでは単純移動平均線(Simple Moving Average、以下MA)を用いており、25MA(緑線)、91MA(赤線)、200MA(黄土色線)としています。
チャート内のオシレーターであるRSIの期間は14であり、MACDは短期12と長期26、シグナルは9としています(オシレーターはほとんどのチャートソフトでの初期値を用いています)
先週の振り返り
先週はPMI(Purchasing Managers' Index、製造業購買担当者指数)の発表が火曜、水曜にFOMC議事録発表、木曜にGDP(Gross Domestic Product、国内総生産)、金曜にPCE(Personal Consumption Expenditures、個人消費支出物価指数)がそれぞれ発表されました。
PMIでは前回よりも高い数値が出ていましたが、GDPは前回よりも低い数値が出ており、経済活動が全て一辺倒に強い訳ではないことが見て取れます。
PMIやGDP自体は、突飛な数字が出ない限り市場へのインパクトは限定的であり、特にPMIは速報値で改定もあるため判断材料としては不十分でした。
またGDPは四半期ごとの数値であり、今回の分は速報値であり来月が確定値であるため、こちらもすぐにインフレ再燃だ!と飛びつくことが出来ず、株価は週半ばまでグダグダの展開を迎えていました。
しかし金曜のPCEは一転、前回かつ予想よりも強い数字が発表されました。
これを受け、今まで高値圏で耐えていた株価が先物で急落し、市場を混乱させました。
通常、インフレがピークアウト(鎮静化)する際は急速に需要が萎み、その状態が種々の経済指標に反映されます(弱い数字が出る)。
今回、株価の下落要因としてFRBのハト的対応と経済指標の強さとのギャップに市場が戸惑いつつあり、とりわけ正しいとされる債券投資家にその傾向が顕著にみられます。
実際、国債入札が先週ありましたが、短期・中期国債ともに前回より利回りが高く入札され、昨年11月のCPIから続いたインフレ鎮静シナリオがおぼろげになりつつあることを認識しておきたいです。
また、先週金曜のPCEを受け、FOMCでの利上げ予測が公開されているFedWatch Toolと呼ばれるサイトでは今まで織り込まれていた年内の利下げが消滅し、年内は利下げせずに高い金利を維持する政策がメインシナリオになると見込まれています(Higher for Longerと言います)。
これにより、2022年末までは3月で利上げ停止だと市場は考えていたものが、たった2か月弱で6月までの利上げ(当初よりも高い政策金利である5.25%-5.50%)を見込み、さらには年内の利下げは無いと考え始めました。
また、あまり注目されていませんが個人支出及び個人所得が、主に支出側に偏り始めています。
すなわち、支出は多いのに収入は少ない現象が発生しており、不況までのカウントダウンが本格的に始まっているということです。
実際、FOMCメンバーの中でも一部では「不況無しにこのインフレを鎮静できない」という声も聞かれており、当初思い描いていたソフトランディングはなかなかに厳しいものがあります。
その他のファンダメンタルズ
ロシアによるウクライナ侵攻から丸1年が経ち、ロシアではプーチン大統領演説が開かれ、一方中国は停戦呼びかけを行いました。
2月21日に行われたプーチン大統領の演説に対し、ロシア国民の反応は冷めていました。
具体的には演説までにまとまった成果が出せず(本来であればばウクライナ東部のバフムトを攻略する予定が、それすら達成できなかった)、いつ戦争が終わるのか、勝つ見込みがあるのかに触れなかったことで国民の失望を買いました。
その間、国連総会が23日に行われ、ロシアに対して侵攻を非難する決議案が採択され、法的拘束力を持たずともロシアに対し国際政治圧力をかける形となりました。
また、中国は24日に外務省から声明を発表し、「国連安保理で承認されない一方的制裁を非難し、またいかなる国も生物及び化学兵器を用いてはならない」と表明しました。
今回の件で中国がロシアにそこまで味方しない理由に、ロシアが劣勢に立たされており助け舟を出してもリターンが得られないこと、また自国の問題である台湾侵攻に集中したい意図があるためだと考えられます。
(ただし、台湾侵攻はまだ先の話だと思っていただければと思います)
国内に目を向けると、24日午前、植田次期総裁が所信聴取を行いました。
インフレについて、
「輸入物価上昇のコストプッシュ型によるインフレであるため、現在は4%の物価上昇率だが来年度に2%を下回る水準に低下する」
「金融政策の効果が発現するにはある程度の時間がかかり、目標の2%を持続的に達成するには時間を要する」
「現在の金融政策は適切であり、金融緩和を継続し企業が賃上げできる環境を整備する必要がある」
「日銀の金融緩和は実質金利の押し下げに寄与し、デフレ脱却の一助となった」
などの内容を話しました。
また、質疑応答について「昨年のような急激な原燃料価格の上昇はいったん過ぎ、インフレ率は本日発表されたデータがとりあえずのピークとなる」と話しており、理論派とはいえ現在の世界経済環境、とりわけ米国の経済をかなり参考にしている印象でした。
2%のインフレ目標にも聞かれましたが、植田氏は2%を世界標準のインフレ目標と考えており、こちらもFRBの物価目標を踏襲しており、世界基準の経済目標をデフレマインドの根付いた日本に対し、持続的に適用したいという意思の表れがにじみ出ていました。
今週の見通し
今週はCPI、雇用統計ほどではありませんが、水曜に消費者信頼感指数、木曜0時にISM製造業指数、金曜及び土曜にサービス業購買部協会景気指数、ISM非製造業指数があります。
特に週後半の指標である非農業部門生産性、サービス業購買部協会景気指数、そしてISM非製造業雇用指数には要注目であり、米国のGDPの大方がサービス業であることから、更に来週の雇用統計の前哨戦ともなる指標になります。
ここでもしかなり強い数字が出れば、いよいよ3月シーズンにおけるインフレ再燃を想起させる雇用統計(失業率等)の指標結果、及びその後の消費者物価指数(CPI)の発表につながり、株価にはネガティブとなりやすいため、注意が必要です。
ナスダック100 ($NDQ)
ナスダック100は現在下落トレンドの途中にいると考えられます。
先週の木曜に一旦上への戻りが発生し、下落の角度としては急すぎずに良い調整を経たものとなっています。
この場合、通常は最低目標値である11750まで下落しやすい環境が整っています。
引き続き、限定的な下目線で見ていきたいです。
想定レンジは11600~12080と見ています。
S&P 500 ($SPX)
S&P 500は重要な下支え局面に突入しています。
こちらは最低下落目標到達+日足200MA+日足91MA+2022年から続く下落トレンドラインの支持線のクアドラプル(4つの)下支えが入っており、逆にここをしっかり下に割ればそのまま下落しやすい領域となっています。
ナスダック100も併せて下落するかを見ていきたいです。
下目線ですが、一度様子を見てから下に割ればショート、割らない場合は下落トレンドを上抜けしてからロング転換を待つ形となります。
想定レンジは3900~4070を見ています。
米国10年債利回り ($US10Y)
米国10年債利回りは引き続き上目線ですが、小休憩ゾーンに入っています。
こちらは1か月ほどの上昇を一度下に抜け、小さいレンジを築いてから再度上値を目指す展開と見ています。
下抜けたからと言って必ずしも下目線ではなく、押し目はあれど金利上昇トレンドは崩れていません。
・補足
上のチャートは期待インフレ率と実質金利を表したものです。
これを見るに、大きな下落が発生する目安である実質金利2%以上には現時点で及んでいないため、リーマンショックのような下落が起こる可能性は低いと言えるでしょう。
ただし、(10年債利回りが高いまま)これから何かしらの要因で期待インフレ率が下がり、将来デフレが予期される場合、実質金利は上を目指します。
また必ずしも実質金利上昇のショック下落が起こるとは限らないので(コロナショックは実質金利がマイナスであり、あくまでも参考程度)、そこも注意したいところです。
こんな指標がある、くらいの認識で問題ないと思います。
米国10年債利回りの想定レンジは3.815%~4.244%と見ています。
香港ハンセン指数 ($HSI)
香港ハンセン指数はセリングクライマックスの様相を呈しています。
現在、綺麗に下落トレンドラインに沿って下落しています。
しかし下は日足200MAが待っており、また強い上昇の水準であるフィボナッチ38%押し目安が近くにあり、ここはトレーダーが意識する水準だと思います。
逆張りロングは推奨できませんが、週明けスタートが19600であれば4時間足のRSI過熱も含めてショートを利確しても良いと思われます。
その後、一旦様子見をし、先週木曜の安値20323をしっかり上に超えるかを見た後、超えずに下に帰ってくれば追いショートを入れると良いでしょう(窓埋め後の反落)。
想定レンジは19100(低確率)~20540を見ています。
米ドル円 ($USDJPY)
米ドル円は円安が続いており、上目線ですが上値は以前ほど余地がないと見ています。
こちらは先週金曜の植田次期総裁の所信聴取で一旦揺れたものの、欧州時間からドルが再度評価され買われた模様です。
ただし限定的な円安と見て、上値は139.30付近を最大許容幅とし、そこから反落を確認すれば再度円高への回帰と見てよいでしょう。
順番としては円安→円高と見ています。
想定レンジは134.00~139.30と見ています。
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